内科医院から腹痛の75歳男性が紹介されてきた。今日は上部消化管内視鏡検査を行う予定だったが、食事摂取できなくてふらつきもあるため、医院からの救急搬入となった。
3日前の月曜日の朝にパンを食べていて急に嘔吐したのが始まりだった。嘔吐後に右下腹部痛が出現して持続していた。そこから食事摂取ができなくなった。
2年前にその医院から食欲低下・体重減少で当院消化器科に紹介された。内視鏡検査で胃潰瘍と診断されて、悪性ではなかった。昨年処方継続のため医院へ逆紹介となっていた。内服の処方はタケキャブ20mgから10mgになったが、中断はしていない。
潰瘍穿孔による腹膜炎を考えていたが、内服中断がないというので、違うかもしれないと思い直した。搬入時の診察では右下腹部に圧痛と筋性防御を認めた。胃潰瘍穿孔としては合わない。頑張って立位になってもらったが、胸腹部単純部X線で遊離ガスはなかった。
血液検査の結果が出るまでの間に腹部エコーを行った。胆道系には問題はなかった。あとはpoor studyで良くわからない。白血球数24700・CRP16.8と上昇していた。腎機能に問題がないのを確認して造影CTを行った。
CTでも遊離ガスはなかった。上行結腸近位と回腸末端で壁肥厚を認めた。憩室炎ではないようだ。虫垂炎かどうかになる。虫垂炎のように見えるが、確定もしにくい。放射線科医に診てもらうと、虫垂が拡張して、一部壁がなくなっているようでもあるが、言い切れないといわれた。
外科医に診てもらったが、虫垂炎で間違いなしともいえないので、手術するかどうか迷っていた。腹部所見・検査値などを考慮すると、抗菌薬で経過をみるのも危険と判断されて、手術することになった。診断のために腹腔鏡で入って、腹腔内の病状を見て、そのまま腹腔鏡手術か開腹手術に切り替えるか決定するという。
痛い痛いと騒いでもおかしくないが、患者さんはじっと横臥していた。3日経過をみたのも我慢強いためなのだろう。外科医が麻酔科医に手術の連絡をする時に「自発痛はそれほどありませんが」と言っていたが、それは我慢強いだけだ。
確か穿孔するような虫垂炎では、心窩部痛からしだいに右下腹部痛になるという経過をとらないで、いきなり右下腹部痛ということだった。この症例ではまだわからないけど。