今日は内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)が不在だったので、代わりにバセドウ病の治療が始まったばかりの23歳女性を診察した。
8月14日に発熱(38.4℃)と咽頭痛で内科外来を受診(初診)していた。鼻汁・咳はなく、扁桃は発赤・白苔付着を認めていた。前頸部リンパ節腫脹もあった。姪が溶連菌に感染していたという。溶連菌迅速試験陽性で、白血球20200・CRP6.0と結構な上昇を認めた。抗菌薬内服で治療開始していた(AMPCを10日間)。
診察時に、びまん性甲状腺腫を認めて、合わせて検査した甲状腺機能が著明に亢進していた。TSH <0.01μIU/ml・FT3 10.42pg/ml・FT4 4.16ng/dl。バセドウ病・橋本病の外注検査を提出した。
5日後に、TSH受容体抗体(TRAb)は陰性で、Thyroid stimulating antibody(TSAb)は陽性と出た。
TRAbの測定法には、TSH binding inhibitory immunoglobulin(TBII)とThyroid stimulating antibody(TSAb)の2種類があり、一般にTRAbというのはTBIIを指しているそうだ。つまり、TRAbにはTBII(TRAbと表示される)とTSAbがあるということだが、紛らわしい。
鑑別に上がる無痛性甲状腺炎でもまれに、TRAb陽性となることがあるが、甲状腺機能亢進症状が半年前からある、またはバセドウ眼症が認められれば、バセドウ病になる。
この患者さんは動悸・体重減少が数か月前から(1年以上?)あり、眼が大きいというよりは眼球突出といいたくなる顔貌をしている。バセドウ病で間違いないだろう。甲状腺エコーはびまん性甲状腺腫大を認めて、甲状腺内部エコーはやや低エコーで血流が豊富だった。
若い先生は、甲状腺外来を担当している外科医に相談して、治療はメルカゾール(MMI)15mg/日とヨウ化カリウム丸1錠で開始した。今日は、TSH <0.01μIU/ml(0.35~4.94)・FT3 5.15pg/ml・FT4 2.80ng/dl(0.70~1.48)だった。自覚症状は軽減しているそうだ。今のところ治療の副作用はない。
FT4 5.0ng/dl以下ではメルカゾール15mg/日で開始してもいいようだ。メルカゾール15mg/日+ヨウ化カリウム丸1錠はメルカゾール30mg/日に匹敵する。
FT4が基準値内になれば、メルカゾールを1錠ずつ減量して、TSHが基準値内で1.0μIU/ml以上になるよう調整していく。今日は同じ処方を出して、2週間後に再度受診・再検査とした。
事情があって若い先生(今年は2名いて、そのうちの1名)は今月いないので、その間は当方の外来で診ていくことにした。バセドウ病を診断して最初から治療するのは案外少ない。今外来通院している患者さんで診断から診ているのは1名しかいない(維持量を継続している患者さんは少しいる)。