なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

矛盾した患者さん

2019年09月05日 | Weblog

 今日は地域の基幹病院循環器内科から77歳男性が転院してきた。気管切開と経管栄養の経鼻胃管が挿入されていたが、歩行はできるのだった。当然発声はできないが、こちらの言うことはわかるので(?)、さかんに両手のジェスチャーで伝えようとしている。

 診療情報提供書が送られてきた時に、病棟の看護師さんから、「矛盾した患者さんですね」と言われた。通常高齢者で気管切開・経鼻胃管で経管栄養となると、患者さんのADLはベット上安静状態(寝たきり)か、それに準じた状態で、せいぜいベット上で座位保持くらいだ。歩行できる気管切開・経管栄養というのは、確かに矛盾しているといえる。

 

 診療情報提供書に病名はうっ血性心不全・CO2ナルコーシス・誤嚥性肺炎、と記載されていた。画像の添付がなかったので、文章だけで判断するしかない。

 うっ血性心不全で入院して、気管挿管・人工呼吸管理が行われた。軽快して嚥下訓練を開始したところ、誤嚥性肺炎(重症)を来して、再度気管挿管・人工呼吸管理が行われた。短期間で抜管できなかったため、気管切開が行われていた。

 脳神経内科での検査では、嚥下障害をきたす病名は付かなかったそうだ。耳鼻咽喉科で嚥下評価を行って、経口摂取はまだ難しいという判断がされていた。

 心不全の原因は高血圧性とされていたが、ビソプロロール2.5mgが処方されていて、血圧は90mmHg台になっている(先方でも血圧は90台だったらしく明日から休止とした)。一過性心房細動があって、抗凝固薬(DOAC)が処方されていた。

 奥さんの話では、病気で通院はしていなかったが、内科医院で健診は受けていた。その医院を受診した際に、突然よだれを流して、呼吸停止(?)になったという。すぐに救急要請されて、病院に搬入された。

 ということは、まったく健康だった77歳男性が突然、心不全になった?。心不全は利尿薬の継続が必要ないほどに改善したというが、本当だろうか。それまで問題なかった人が、急に嚥下障害、誤嚥性肺炎をきたすものだろうか。20歳ごろに短期間だけ喫煙していて、それ以後はしていないが、CO2ナルコーシスになったのはなぜ?。

 

 画像がなかったので、心電図・頭部CT・胸腹部CTをさっそく行った。心電図では心房細動になっていて、心拍数は正常域にある。βブロッカーを休止すると、頻拍性になってベラパミル(ワソラン)などが必要になるかもしれない。利尿薬なしで継続は厳しいのではないか。

 頭部CTでは脳室拡張が目立ち、前頭葉~側頭葉の萎縮がある。MRIだと複数のラクナ梗塞は描出されそうだ。まったく認知症がない人ではたぶんない。

 胸腹部CTで左下葉に腫瘤があり、肺癌が疑われた。喀痰吸引を頻回に行うので、畜痰細胞診を提出することにした。肺気腫像はなかった。胃は少し横行結腸がかぶさるが、拡張させれば充分内視鏡的胃瘻造設術(PEG)は可能だろう。

 老年期認知症(軽度くらいか)・嚥下障害、心房細動・心不全、左下葉肺癌疑いとなる。CO2ナルコーシスはよくわからないが、なんとなく全体像はわかった。

 当方の実力を考えると、難しい患者さんだ。できれば下請けは、誤嚥性肺炎治癒後の廃用症候群でリハビリ目的くらいの簡単な患者さんがいい。

 

  

 

  

 

 

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