昨日は内科日直だった。内科入院は4名。地域の基幹病院が満床ということで、ふだんあまり来ない地域からの救急要請もあった。
76歳男性は認知症・寝たきりで施設(当地から3つ目の町)に入所していた。高熱・血圧低下で救急搬入された。酸素飽和度低下と痰のからみから誤嚥性肺炎かと思ったが、肺気腫はあるが肺炎像はなかった。
膀胱襞が厚く、両側尿管が拡張して両側水腎症を呈している。前立腺肥大もあるが、膀胱機能が低下しているようだ。尿路結石はなかった。尿が混濁というか、膿そのものだった。血圧は80mmHg台で心拍数120/分とショックバイタルだった。尿路感染症からの敗血症性ショックだ。
尿培養・血液培養2セットを提出して、抗菌薬を開始した。急速補駅に反応しないので、ノルアドレナリン点滴静注も開始した。今朝は開眼してこちらを見るようにはなった。血圧は90mmHg台でまだ低い。
72歳男性が70mmHg台の血圧低下で救急搬入された。地域の基幹病院神経内科に脳梗塞後遺症で通院している。消化管出血による貧血も考えたが、貧血はまったくなかった(搬入時、結膜は貧血?だった)。
胸痛はないが、心電図がV2-6で陰性T波が目立つ。Ⅱ・Ⅲ・aVFでST上昇様の形をしている。昨年腎癌の手術を大学病院で受けた。その際循環器内科で術前の精査がされたそうだが、心臓カテーテル検査まではしてないようだ。2年前に当院で心電図検査が行われていて、その時からある変化ではあったが、ちょっと目立つ。
降圧薬が2剤処方されていて、普段の血圧は120くらいだそうだ。トロポニンが若干上昇しているが、決め手に欠ける印象だった。搬入後に点滴をしても血圧が90~100くらいでなかなか上がってくない(臥位)。エコーを当ててみたが、心筋が厚く左室腔が狭いような印象があったが、動きは均一に思える。よくわからない。
基幹病院に診てもらえるか訊いたところ、満床ですと言われた。救急搬入は全部断っていますという。そのまま当院で経過をみるのもためらわれて、心臓血管センターのある専門病院に連絡してみた。幸い引き受けてもらえて、救急搬送した(結果はずれの症例でもまず紹介して下さいとい方針の病院で、助かる)。
搬送中の救急隊から連絡が入って、点滴速度を速めても血圧が90弱くらいだという。当院からの点滴がなくなったので、救急車内の点滴(ラクテック)をつないでもらった。
今朝循環器科医が日直で来ていたので、訊いてみた。肥大型心筋症でしょうという。閉塞性かどうかはわからない。冠動脈の評価も必要だから、搬送でよかったのではということだった。
今日も内科当番だが、内科入院があれば明日までの指示は出しておきますと言ってくれた。
(後日記)
搬送した心臓血管センターのある専門病院から返事が来ていた。緊急で心臓カテーテル検査を行って、右冠動脈遠位部に高度狭窄病変を認めて、同部位に薬剤溶出性ステントを留意したそうだ。経過は順調で、退院後は通院している当地域の基幹病院循環器内科の外来に回されていた。結果的に「はずれ症例」ではなかったので、搬送してよかった。