なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

薬剤熱

2019年09月21日 | Weblog

 水曜日に内科の若い先生(地域医療研修の内科専攻医)に相談された。先週の土曜日に85歳女性が肺炎で入院していたが、入院後も熱が続いているという。

 両側肺の背側胸膜直下に間質性肺炎の像があるが、間質性肺炎の増悪ではなく、細菌性肺炎の併発として治療していた。喀痰培養で有意な菌は出なかった。抗酸菌塗抹は陰性。尿中の肺炎球菌とレジオネラの抗原は陰性だった。市中肺炎として、セフトリアキソンを開始していた。

 

 入院後も38~39℃の発熱が続いていた。肺炎特異的なマーカーとしての酸素飽和度や食事摂取状況なども同程度で変化はなかった。入院時と治療後の白血球数とCRPも横ばいだった。やはり痰は出ないそうだ。

 まずもう一度画像を評価することにした。胸部X線、さらにCTも撮り直してみた。悪化はしていないようだ。条件の違いはあるが、何だか少し軽減しているようにも見える。ここからどうするか。

 間質性肺炎としての悪化でもない。細菌性肺炎で、セフトリアキソンが効かない起炎菌の可能性はどうか。施設入所者でもないし、直近の入院歴もないが、細菌性肺炎として治療を強化するとすれば、ゾシンかカルバペネムになる。

 非定型肺炎でないとは言えないが、この年齢でマイコプラズマもない。クラミドフィラは単独での肺炎はないのではと言われているので、細菌性併発していて、その部分が治らないという可能性はある。尿中抗原で引っかかる血清型1型以外のレジオネラ肺炎の可能性もあるが、もっと重症だろう。呼吸器外症状・所見もない。

 木曜日に呼吸器外来に来てもらっている先生(大学病院からバイト)に相談した。すると、肺陰影として間質性陰影は変わりなく、浸潤影自体はむしろ軽減している診断された。

 高熱時の脈拍数の増加がみられないこと(比較的徐脈、まあ数は徐脈ではないが)、高熱の割に比較的患者さんが元気であること(比較的元気)、CRPが高熱にもかかわらず上昇しないこと(比較的低いCRP)、などからセフトリアキソンの薬剤熱では、と言われた。

 言われた瞬間、「あ~、なるほど」と納得した。それですべて説明できる。セフトリアキソンを中止して、βラクラム以外ということで、クラビット(レボフロキサシン)への変更を勧められた。

 次の日からあっさり解熱して、確かに薬剤熱だった。

 

 

 

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