なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

AIH・PBC?

2018年01月21日 | Weblog

 昨年11月から86歳女性が入院している。ひとり暮らしで、受診するたびに様々な愁訴を訴えていた。無難な抗うつ薬も処方していたが、食欲が低下していた。両下肢のチアノーゼ様の色調を呈していた。両下肢は血管外科でも診てもらったが、拳上すると正常な色になる。静脈がうっ血するようだ。娘さんと相談して、入院して経過みてから施設入所にもっていくことになった。

 8年前に発熱が続いて、クリニックからの紹介で入院した。胸部X線・CTで肺炎像があり、急性肺炎として治療をした。非定型肺炎などを疑って、抗菌薬をいろいろ変更したが、まったく反応しない。

 そのうちに肺の陰影は陳旧性のもので、経過中まったく変化していないことに気付いた。それと入院時から頭痛を訴えていた。身体中のいたるところの調子が悪いと訴えるので、肺炎ということもあり、あまり気にしていなかった。

 食べるときに噛むのが疲れると訴えた。これは顎跛行ではないがと思った。少し噛んで、休んでまた噛むのを繰り返していた。慎重に何度も診察すると、側頭動脈の圧痛があるようだ。プレドニン30mg/日を開始すると、解熱して症状・検査値が改善した。(側頭動脈の生検はしてない)退院後は、2年間かけてプレドニンを漸減中止した。その後再発はなかったが、クリニックに戻しにくく、当院通院の患者さんとして現在に至っている。

 今回は入院すると安心したのか、案外食事摂取もできていた。一般病棟から地域包括ケア病棟に移って、施設待ちになっていた。年明けからまた発熱があり、尿路感染症として抗菌薬を使用した。発熱は平熱~微熱で推移して、炎症反応が改善しなかった。それと肝機能障害が出現してきた。腹部エコーでは異常がなかったので、抗菌薬(セフトリアキソン)の副作用も考えた。

 さらに前回の入院が側頭動脈炎(臨床診断だが)だったので、また側頭動脈炎が再燃したり、リウマチ性多発筋痛症が発症した可能性も考えた。前回よりも認知力が低下していることもあり、症状の判定が難しい。レドニン15mg/日を短期間投与して反応をみることにした。解熱して炎症反応は改善したが、原因の有無にかかわらず見かけ上良くなるので、まだなんとも言えなかった。

 肝機能障害ということで、念のため提出していた外注の結果が返ってきた。抗核抗体320倍陽性で抗ミトコンドリア抗体も陽性だった。そのまま信じれば、自己免疫性肝炎(AIH)+原発性胆汁性胆管炎(PBC)?。本当ならプレドニン15mg/日は初期量として少ない。ウルソを追加して経過をみることにしたが、なんだか応用問題の患者さんなのだった。

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

咽頭炎ではある

2018年01月20日 | Weblog

 金曜日の内科新患を受診した、1週間高熱が続く57歳男性。前週の土曜日に高熱が出た。高熱が続いて、月曜日に内科クリニックを受診している。咽頭痛もあったが、咳はなかった。インフルエンザ迅速試験は陰性だった。

 症状が続いて、水曜日に同クリニックを再受診した。咽頭痛があるので咽頭炎でしょう、ということで抗菌薬(ジェニナック)とNSAID(ロキソニン)が処方された。水様・木曜と点滴もしたというが、症状が続くので金曜日には当院に来た(紹介ではない)。

 内科新患担当の先生(大学病院からのバイト)が診察して、扁桃は軽度の発赤のみで、右側の奥側に薄い白苔が付着していた。前頸部リンパ節腫脹もあった。溶連菌とアデノイルスの迅速試験は陰性。その日は耳鼻咽喉科(こちらもバイト)の外来もあったので紹介した。舌根部の扁桃にも膿栓があり、梨状窩のところに白い点が散在しているという。通常の咽頭炎・扁桃炎にしては変だが、という意見だった。少なくとも気道は保たれていて、Killer sore throatではない。直接耳鼻科医に訊いてみたが、何でしょうね、という。

 白血球数13900、CRP9.8と中等度の炎症反応だった、ウイルスよりは細菌性のように思われる。軽度の肝機能障害もあった。今回の疾患の一症状とすると、ウイルス性?。抗菌薬の副作用?。そもそもこの年齢で細菌性咽頭炎は頻度的にどうなのかとも思うが、そうだとしてジェニナック内服2日なので、まだ効果が出ていない?。CTでみて頸部~胸部に膿瘍はなさそうだ。血液培養2セットを提出して(前日にジェニナック内服)、セフトリアキソン投与を開始した。

 患者さんには、形は咽頭炎だが、診断的にすっきりはっきりしないこと、入院しても高熱が続いて、場合によってはリンパ節生検をするかもしれないと伝えた。EBV・CMV・HIVやsIL-2受容体抗体も提出してしまったが、あと何か出すべき検査はあるのか。セフトリアキソンが効いて、あっさり治らないものだろうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

傍乳頭憩室と膵炎

2018年01月19日 | Weblog

 昨夜の当直帯に心窩部痛の70歳男性が受診していた。急性膵炎と診断されて、当直の外科医が主治医で入院した。既往をみると、3年以上前にやはり急性膵炎で入院していて、その時は当方が主治医だった。5日で退院しているのが、それだけ回復が速かったのか、ある程度良くなったところで希望で退院したのだろう(そのへんの事情は退院サマリーに記載していない)。

 この患者さんはアルコールは機会飲酒で(たまたま飲酒した後でもないかった)、胆石もなかった。ただ大きな(巨大な)傍乳頭憩室があり、憩室内に食物が貯留していた。それによって膵管が圧排されて膵炎をきたした可能性が考えられた。膵体尾部は正常に描出されているが、膵頭部は腫大して、周囲に浸出液が貯留している。肝機能障害・黄疸はなかった。

 今日血液検査が再検されて、肝機能・血清アミラーゼは軽減していたが、腹痛で鎮痛薬(アセリオ・ソセゴン)が繰り返し使用されている。今回は、消化器病センターのある専門病院に転送になった。おそらく保存的に経過をみるしかないとは思うが。(CTは今回、MRCPは前回入院)

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

非代償性肝硬変の手術

2018年01月18日 | Weblog

 整形外科に83歳女性が左大腿骨近位部骨折で入院した。手術をするところだが、この患者さんはC型肝硬変・肝性脳症がある。脾腫が目立ち、汎血球減少症(白血球数1900、Hb9.1g/dl、血小板数5.1万)がある。白血球数は上昇してこの値で、ふだんは1000未満になることもある。

 病棟にいると、麻酔科の先生がやってきて、手術できるかと訊かれた。名前を聞いてもピンとこなかった。

 7年前に右大腿骨近位部骨折で手術をしている。その時は肝性脳症はなかった(気づかれなかった?)。術後に手術部に血腫形成があったが、保存的に治まっていた。4年前に肺炎で内科に入院しているが、その時には肝性脳症の治療も合わせて行った。普段は近くの内科医院に通院しているので、自分が直接診たのはその時だけだった。

 今回と前回の違いは年齢が進んでいること(76歳から83歳)と腎機能障害が加わったことだった。それでもChild-Pugh分類だと8点になる(時系列でみて最悪値を組み合わせればもっと上になるが)。できなくはないのか。

 整形外科医と麻酔科医の気持ちを忖度(?)してみると、どうもやめた方がいいと思っているようだ。内科から、肝硬変の程度から見てむずかしい、という意見を聞きがっている。意見を述べよと言われれば、「術後に一気に肝不全が進行する可能性が高いが、患者さんと家族がどうしても希望すれば、危険を承知した上で手術することもあるでしょう」、になる。

 手術しないで保存的にみると、ADLはだいぶ悪くなってしまう。それでも勝負をかけてそのまま増悪・死亡するよりはいいのかもしれない。

 昨年肝硬変の患者さんが大腿骨近位部骨折で入院した。今回の患者さんよりは問題ないと判断されて(内科にコンサルトもなかった)手術したが、術後に肝不全・消化管出血をきたして、もともも通院していた肝臓専門医のいる基幹病院へ搬送したいる(予後は確認していない)。

 

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

分水嶺梗塞

2018年01月17日 | Weblog

 81歳男性が右不全片麻痺で整形外科医院から紹介されてきた。もともと頸椎症もあって、判定しがたいが、頭部MRIの拡散強調画像で新規の脳梗塞巣が散在していた。左内頚動脈起始部に狭窄があり、左中大脳動脈末梢(M2以降)の描出不良があった。

 脳動脈支配領域に一致した分水嶺梗塞で、中大脳動脈と前大脳動脈・後大脳動脈との境界に沿って分布していた。ここまではっきりした分布は始めて見た。心臓のPCI後で抗血小板薬はふだんから内服している。2~3日食事摂取(水分も)が少なかったそうだ。腎機能障害もあり、治療薬があまりないが、点滴による循環改善が一番効くのかもしれない。

 入院後は、病室内のごみ箱に排尿したりして、看護師さんが困っていた。食事摂取は良好で今のところ嚥下障害はない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

NOMI?

2018年01月16日 | Weblog

 先週の水曜日に地域の基幹病院消化器内科から、ベット満床のためということで、急性腹症の75歳男性当院に搬送された。その2日前の夜に発症している。夜間は家族の車で、翌日とその翌日は救急要請していた。

 当院に搬送されてからも検査を行って、外科にコンサルトした。泥状~水様便が排出されると腹部所見が軽減したこともあり、すぐに開腹するとは決められず、慎重に経過観察となった。心房細動はなく、腸間膜動脈の明らかな閉塞はなかった。腸間膜動脈血栓塞栓とすれば、もっと短時間(発症から1~2日)で症状が増悪したはずだ。

 入院して経過をみていたが、症状が再度増悪して、2日後に開腹手術が行われた。小腸の壊死していた部分が切除された。腸管壊死が進行する可能性があり、さらに2日後に再度手術が行われたが、幸いに腸管壊死の進行はなく、閉腹したそうだ。

 これは非閉塞性腸間膜虚血症non-occlusive mesenteric ischemia(NOMI)なのだろうか。壊死した腸管を切除して(最小限の侵襲)、腸管壊死の進行を再手術をして確認するという、慎重なそして確実な対応をしている。外科医は常に難しい判断をしていると感心する。術後経過は順調のようだ。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

どこの熱?

2018年01月15日 | Weblog

 昨日の日直の時に、76歳男性が高熱と悪寒戦慄で救急搬入された。ふだんADLには問題がないが、あまり会話はないそうで、認知症があるらしい。

 上気道症状の訴えはなく、インフルエンザ迅速試験は陰性だった。白血球増加とCRP上昇があり、何らかの細菌感染による菌血症が疑われた。血圧が80前後になっていたが、点滴で100くらいになった(降圧剤2剤を内服)。

 胸部X線・CTで粒状影が散在しているようにも見えたが、なにしろ気道症状がない。尿混濁はなかった。胆嚢摘出術後で胆道系の拡張はなかったが、肝機能障害があり、今回の高熱と関連している可能性(胆管炎)はある。関節炎・蜂窩織炎はない。大学病院で胸部大動脈にステント挿入を受けた既往がある。心雑音があるが、新規かどうかわからない(当院初診)。

 前立腺肥大があり、直腸指診で縦に盛り上がった印象を受けるが、圧痛は訊いてもないという(特に熱感が強いとはいえなかった)。前立腺炎も疑われるが、確定できない。PSAが7.2と軽度に上昇しているが、炎症の反映かどうかも決めにくい。

 血液培養2セットと尿培養を提出して、セフトリアキソンで治療を開始した。今日もまだ高熱がある。血圧低下はなかったので、ちょっと安心しているが、原因が不明なので気持ちが悪い。忙しくて心エコー検査を入れるのを忘れてしまい、明日に予定した。

 

 当直帯では、COPDで当院の呼吸器科外来(外部の先生担当)に通院している88歳男性が呼吸困難で救急搬入された。胸部X線・CTでは明らかな肺炎像はなかった。1週間前から上気道症状があったそうだ。搬入時は酸素吸入10L/分だったが、搬入時から少しずつ下げて、入院後は2L/分になった。高炭酸ガス血症はない。診察ではrhonchiが軽度に聴取される。20歳~65歳までの喫煙歴がある。RSウイルスとメタニューモウイルスの検査もした方がいいのだろうか。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

DV

2018年01月14日 | Weblog

 金曜日に87歳女性が救急搬入された。息子が顔面を殴ったという。救急担当の外科医が対応した。検査の結果、新旧の硬膜下血腫・多発性肋骨骨折(肺炎も)があった。

 当院には脳外科がないので、基幹病院脳外科に転送された。硬膜下血腫は左右に慢性硬膜下血腫があり、1週間前の殴打による亜急性血腫も加わったと判断された。今の時点では硬膜下血腫は保存的に経過をみていいのと(五苓散で頑張れと)、多発性肋骨骨折と肺炎もあるので、当院で経過を診てくださいと戻された。脳外科がないところで経過を見るのは気持ちが悪いが、一度診てもらっているので、経過中悪化すればまた診てはもらえるだろう。

 診療科が分かれている病院では、どこが責任科として扱うかという問題が出てくる。頭部だけではないので、脳外科で扱うのは難しい。この場合は、脳外科と相談しながら救急科で診てもらうように転送すれば、入院で診てもらえたかもしれない(ベット満床だとそれも難しいか)。

 加害者の息子さんは警察で取り調べているそうだ。自宅退院はないので、順調に治ったとしても施設入所に持っていくしかない。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大腿静脈からの挿入

2018年01月13日 | Weblog

 木曜日に誤嚥性肺炎の87歳男性にCVカテーテルを挿入した。エコーで内頚静脈は見やすく、穿刺もできそうだったが。両手がかなり動くことと、透視室まで降ろさずに病室で行いたかったので、結局大腿静脈からの挿入になった。

 大腿静脈からだと感染をきたしやすいという話と、案外どの部位からの挿入でも変わらないという話がある。印象としては感染しやすいような気がしている(個人の印象)。エコーで確認するので挿入は簡単にできる。

 若い先生は病室でも内頸静脈からも挿入しているが、認知症の高齢者は動いてしまうので、看護師さんが最低2名は付かないと危なくてできない。

 絶食にしていても唾液のmiroaspirationで誤嚥性肺炎をきたすので、普通に治療していったんは軽快しても、またすぐに発熱してくる。結果的に長期に使用しないので、大腿静脈から挿入して介護服で覆ってしまう(足の方からラインを出す)のはライン自体の安全確保になる。

高カロリー輸液の適応があるかという問題もあるが、末梢からのラインがとれなくなったり、何度も抜かれたりするので、看護師さんは助かる。

 部位としては好ましくはないが、今後も使用していくことになる。

 

コメント (1)
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

脳幹梗塞

2018年01月12日 | Weblog

 木曜日に基幹病院神経内科から88歳女性が転院してきた。向こうの先生からの話(電話で依頼)では、末梢からの点滴でお看取りですということだった。

 複数回のラクナ梗塞の既往があり、当院の神経内科に通院していた。2か月前に意識障害をきたして、基幹病院に救急搬入された。たぶん当院にも搬入依頼があったのだろうが、受け入れできなかったらしい。

 意識障害と右片麻痺があり、MRIの拡散強調画像で左内包に淡く陰影があるようにも見え、その部位の脳梗塞が疑われたらしい。入院後に症状が軽快したり、増悪したりを何度か繰り返して、MRIで梗塞巣がはっきり出なかったので、てんかん発作も考えられたとある。結局1か月後のMRI拡散強調画像(他の画像でもすてに出ていたが)で左脳幹梗塞を認めて、症状も固定した。

 嚥下障害で経口摂取は難しいということになった。家族は経管栄養は希望せず(本人が以前から言っていたそうだ)、経口摂取できない状態での高カロリー輸液継続も希望しなかった。末梢からの点滴を継続して、できる範囲で経口摂取を試みるという方針になった。

 転院してきたが、その2日前から少し言葉が出る様になったそうだ。経口摂取はやはり難しそうだが、改めて当院でも嚥下評価をすることにした。

 それにしても約1か月の間、軽快増悪を繰り返したという経過に驚く。

コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする