なんでも内科診療日誌

とりあえず何でも診ている内科の診療記録

AST活動

2021年11月20日 | Weblog

 膀胱癌の82歳男性が腸閉塞で入院していた。腹膜播種・肺転移があった。大腸の腸管拡張があり、播種の影響が疑われた。外来で診た内科の若い先生が担当していたが、外科医と相談した方がいいと思っていた。

 幸いに点滴で経過をみているうちに排便があり、食事が開始された。先週末から発熱があり、血液培養2セットを提出していた。

 週明けの検査で炎症反応は上昇していたが、肺炎・尿路感染症は否定的だった。血液培養からグラム陽性球菌が検出された。火曜日に行っている院内のAST(抗菌薬適正使用チーム)で取り上げられた。

 点滴は末梢静脈から行っていて、中心静脈カテーテルは挿入されていない。グラム陽性球菌はどこの感染巣から出ているのかが不明だった。

 抗菌薬はピペラシリン/タゾバクタム(ゾシン)が投与されていて、まだ発熱があった。ASTとしては、「菌名がわかるまでバンコマイシン併用も考慮して下さい」コメントを入れた。(グラム陽性球菌は連鎖球菌・MSSA・MRSA・腸球菌で、全部をカバーするにはバンコマイシンを要する)

 最近は血液培養提出数も減って、あまりAST活動の実績を残せていない。ASTとしてはありがたい症例だった。

 主治医はそれを見たのか、バンコマイシンを併用していた。開始後に解熱して、木曜に血液培養2セットからMRSAが検出された。

 

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乳腺炎

2021年11月19日 | Weblog

 水曜日は当直だった。当直医用の夕食を食べ終わったころに、内科クリニックから連絡が来た。

 発熱(39℃の高熱)で受診した20歳女性が、両下肢の脱力で動けなくなっているという。発熱以外の症状は左胸痛だが、乳房痛だった。出産後・授乳中でもないんですが、乳腺炎のようですと言われた。

 発熱はその日の朝からで、前日までは何ともなかったそうだ。朝から倦怠感があり、午後まで自宅で休んでいたが、午後に発熱に気づいて内科クリニックを受診した。歩いて受診したが、その後に脱力で倒れ込んだ。

 救急搬送されて、型通り新型コロナ(抗原定性)とインフルエンザ迅速検査を提出した(陰性)。当直の看護師さんが婦人科の助産師さんだったので、いっしょに診察してもらった。

 確かに左乳房は硬結・熱感・圧痛があり、症状のない右乳房とは違う。呼吸性の痛みではないようだ。血液検査では白血球17000・CRPと炎症反応上昇を認めた。

 肺炎・胸膜炎や胸壁の炎症との鑑別もあり、胸部CTで確認した。肺炎・胸膜炎の所見はなく、胸壁にも問題はなかった。乳腺はCT画像上は左右差がなかった。

 ストレッチャー上で両下肢の膝立てはできる。手を貸すと、車いすに自分で移乗して、尿検査のためトイレまで行けた。脱力は高熱と朝から食事をとっていないことによる症状のようだ。

 精神科病院に通院しているというが、現在は処方はなかった。左前腕にリストカットの痕が目立つ。救急隊の既往歴欄にはうつ病となっていたが、神経症レベルの問題だろうか。現在は仕事をしていない。

 付き添ってきた母親は落ち着いていた。といって関心がなさそうというのでもない。言い方は変だが、普通の母親だった。他の疾患は否定的で乳腺炎として入院で診ます、他科の先生とも相談します、と説明した。

 点滴と抗菌薬はセファゾリンで開始した。出産後・授乳中の乳腺炎ではないので、扱いとしては外科になる。外科は確かに乳癌を担当するが、通常は乳腺の結節・腫瘤を診て、乳癌との鑑別が専門だろう。乳腺炎はどうなのかと思った。

 翌日に相談すると、エコー検査で乳房の炎症を確認して、外科で診ますと言ってくれた。

 

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まだ治療継続中

2021年11月18日 | Weblog

 先月急性腎盂腎炎で入院していた93歳女性が腹痛を訴えた。腹部CTで右鼠経ヘルニア嵌頓を認めて、地域の基幹病院外科に搬送した。

 手術はしてもらったが、消化管穿孔からの腹腔内膿瘍があり、抗菌薬を投与していた。家族の話では、急性期病院なので長くは入院できないと言われたそうだ。

 当院に転院の依頼が来て、術後のADL低下のためというような話だった。転院を予定したが、その後に酸素吸入をしているという情報が入っていた。

 

 今日転院してきたが、酸素吸入をして、左上腕からPICCが挿入されていた。昨日まで抗菌薬(セフメタゾール)が投与されていた。炎症反応は当初のCRP30よりは軽減しているが、直近でCRP10だった。(利尿薬も投与あり)

 胸腹部CTで腹水があり、腹腔内の脂肪織に炎症像を認める。両側胸水貯留があり、胸水に接した肺は無気肺になっているか、浸潤影を呈しているようだ。

 食事が出ていて、嚥下調整食2-1を1割くらい摂取していたと記載されている(看護師さんの記録)。転院後に食事介助をしてみたが、数口食べたが、口腔内の残っていた。実際は経口摂取が難しいようだ。

 高カロリー輸液と抗菌薬投与で治療を継続するしかなかった。家族に腹腔内膿瘍と肺炎の治療(と心不全の治療)を継続しますと伝えると、はっきり言ってもらってわかりやすいと言われた。

 先方の病院では危ないと言われて、病状を説明されたが、何だかわからなかったという。たぶん詳しく病状を説明されたのだろうが、当方の単純な説明の方が確かにわかりやすいかもしれない。

 経口摂取は難しくても、抗菌薬を中止できて、高カロリー輸液で経過をみられるところまで持っていけるだろうか。93歳を手術してもらったのはありがたかった。PICCを挿入してくれていたのも、とてもありがたい。

 

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低蛋白血症

2021年11月17日 | Weblog

 火曜日に地域の基幹病院泌尿器科から84歳女性が転院してきた。今回は脱水症・急性腎盂腎炎で入院していた。点滴・抗菌薬投与で軽快したが、経口摂取ができない状態が続いていた。

 夫と二人暮らしで、7月から経口摂取は難しくなり、寝たきり状態になっていた。夫は自分が食べさせると(少し)食べるが、施設にデイサービスに行くと食べなかったとして帰ってきたという。

 転院直前が酸素飽和度が低下して、酸素吸入を開始したという情報が来ていた。泌尿器科なので、尿路感染が治ったので終了とことなのだろう。病棟看護師さんと、来てみないとどんな状態なのかわからないと話していた。

 来て見ると、確かに寝たきり状態で呼びかけると開眼するが、あとは閉眼している。全身に浮腫があり、下肢(足関節近くの静脈)に点滴ラインがあった。そこが漏れると血管確保は大変そうだ。

 その日のうちに血液検査をすると、血清アルビミンが1.4g/dlと著明な低蛋白血症(低アルブミン血症)だった。胸腹部CTで両側の著明な胸水貯留があった。心不全というよりは低蛋白血症によるようだ。頭部CTでは脳委縮・脳室拡大があるが、脳浮腫もあるのかもしれない。

 

 診療情報提供書には脱水症・急性腎盂腎炎で入院して軽快したこと、食事摂取ができないことだけが記載されていた。夫に訊くと、老衰であることが伝えられて、病状悪化時はDNARの方針と言われていたそうだ。

 血管確保の問題もあり、中心静脈カテーテルを挿入して高カロリー輸液にして、利尿薬を投与するしかない。うまく治療できて病状が安定すれば、療養型病床のある病院へ継続治療を依頼する(当院は一応DPC病院)。

 

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脳梗塞の血糖管理

2021年11月16日 | Weblog

 昨日、内科再来に神経内科から院内紹介が来ていた。その日脳梗塞の67歳男性が、地域の基幹病院脳神経内科から当院の回復期リハビリ病棟に転院してきていた。担当の神経内科医からの紹介だった。

 心房粗動・慢性心不全・高血圧症・糖尿病などで内科クリニックに通院していた(抗凝固薬はなかった)。心房粗動となっているが、心電図をみると、RR間隔は一定ではない。4:1、2:1でもなく不規則なので、正確には心房粗細動というのだろう。

 1か月前に左中大脳動脈の閉塞による脳梗塞が発症した。患者さんは一人暮らしで、たまたま訪問した弟さんが倒れているのを発見して救急要請したという経緯だった。

 診断は心原性脳塞栓症とされていた。症状は右半身麻痺・運動失語・構語障害。言葉は出ないが、言われたことは(ある程度?)理解されているようだ。利き手交換(左手)で嚥下調整食を食べている。

 さて糖尿病の治療はと確認した。内科クリニックではSGLT2阻害薬が処方されていた。先方の病院の検査結果を見ると、HbA1c7.1%とあるので悪くはない。

 治療はインスリン強化療法になっていて、毎食前に速効型インスリン(ヒューリンR)皮下注と就寝前の持効型インスリン(インスリングラルギンBS)を使用していた。

 おそらく急性期にヒューマリンRを血糖測定によるスケールで使用して、空腹時血糖が高いのでそれに持効型インスリンを追加したのだろう。

 普段の治療でHbA1c7.1%ならば、経口血糖降下薬で血糖コントロールできる見込みだ。まずは先方のメニューで継続して、血糖を見てインスリンの減量を行う。

 慢性腎臓病(糖尿病腎症+腎硬化症?)があり、メトホルミンは使えない。DPP4阻害薬(トラゼンタ5mg)で開始することにした。

 一人暮らしでの脳梗塞発症で、退院後は施設入所になる。インスリンは簡単な使い方(BOT)なら継続できるが、可能ならば経口血糖降下薬だけにしたい。

 

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話し合いはできているが

2021年11月15日 | Weblog

 日曜日の日勤帯に、神経内科外来に通院している78歳男性が救急搬入された。両側肺炎があり、嚥下障害が進行していたころからは誤嚥性肺炎と判断される。

 4年前に意欲の低下・幻視・パーキンソニズムで発症していた。パーキンソン病というよりはレビー小体型認知症になるか。幻視・REM睡眠行動異常・認知症があり、精神科病院でも相談していた。

 神経内科の外来カルテにはこれまでの経緯が記載されていた。カルテにこれまで経緯をコピーして、さらに新規の記事を追加するという形式になっている。

 経口摂取ができなくなった時、肺炎を来した時の対応が書かれていて、胃瘻造設はしない、気管挿管・人工呼吸はしない(心臓マッサージ=胸骨圧迫もしない)とあった。

 先月に神経内科の外来受診時には、経口摂取が難しくなっていて、仙骨部に褥瘡ができている。できるだけ自宅で過ごすと言うことなのだろう。

 日直は外科医だった。肺炎の治療は酸素吸入・抗菌薬・点滴を行い、治療に反応せず病状が悪化した際にはDNARの方針で家族の合意があった。内科の当番は別の内科医だったが、連絡はせず、外科医が主治医となって入院治療を開始していた。

 ゾシン(PIPC/TAZ)で開始して、酸素吸入3L/分で酸素飽和度は良好に保たれている。肺炎自体は軽快治癒になりそうだ。

 そうなると、嚥下訓練をして経口摂取は無理となった場合、対応としては、1)末梢静脈からの点滴をしながら少量でも経口摂取を続ける、2)高カロリー輸液を行う、の2つのどちらかになる。(通常は3)胃瘻造設・経管栄養もあるが、この患者さんでは選択されない) 

 家族はどちらを選ぶのだろうか。

 

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骨髄穿刺

2021年11月14日 | Weblog

 先月久しぶりに骨髄穿刺を行ったが、金曜日にも96歳男性に骨髄穿刺を行った。

 大腸憩室出血を繰り返して、地域の基幹病院消化器内科から転院してきた患者さんだった。介護タクシーでの移動中に嘔吐して、当院に来た時には誤嚥性肺炎を来していた。

 肺炎がよくなったら、大腸憩室出血が起きて輸血を要した。末梢静脈からの点滴困難で中心静脈カテーテルを挿入して、高カロリー輸液にした。

 いったん血便が治まったので、食事を開始した。便は明らかな血便ではないが、oozingがある?と疑うようなものだった。なかなか手のかかる患者さんなのだった。

 白血球が3万あり、白血球分画では異常な芽球はないが、後骨髄球・骨髄球も見られる。貧血は憩室出血が断続的にあるので、評価しにくい。血小板は正常域だった。

 先方の病院では血液内科医(大学病院から週1回血液内科外来にきている)に相談していた。骨髄異形成症候群か骨髄増殖性腫瘍だと思われるが、精査自体の対象にならないとされた。

 確かに治療は難しいが、診断はつけておきたいので(検査は5分もかからない)、当院ですることにした。骨髄像は読めないので、結果(血液内科医の診断)は外注になる。

 

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HbA1c15.5%

2021年11月13日 | Weblog

 木曜日に糖尿病外来担当の先生(大学病院からのバイト)から、65歳女性の入院を依頼された。身長160cm・体重55.5kgだが、ここ3~4か月で15kg体重が減少していた。口渇・多飲・多尿がある。

 眼科医院で白内障の手術を予定していて、内科クリニックに術前検査を依頼したそうだ。血液検査で血糖386mg/dl・HbA1c15.5%と出た。内服薬で治療開始という状態ではないので、当院の糖尿病外来に紹介された、という経緯だった。

 父親と姉妹2人が糖尿病だった。最大体重は40歳ごろの110Kgで、その後はダイエットをして70kg台で推移していた。

 2型糖尿病だろうが、そのまま放置すれば、高血糖高浸透圧症候群に陥る可能性がある。早急にインスリン強化療法を開始して、比較的短期間に糖毒性解除を図りたい(問題になる網膜症はない)。

 

 昨日記載した患者さんを入院させるところだったので、内科の若い先生に入院治療をお願いした。その後入院になっていないので確認すると、患者さんからがその日は入院できないというので、翌日入院予定になっていた。

 金曜日に入院して、インスリン強化療法が開始された。ヒューマログ毎食直前3単位+トレシーバ就寝前4単位で、型通りの0.2単位/kgの開始寮になる。

 無糖ではない缶コーヒーを1日1~3缶飲んでいて、菓子パン・チョコレート・和菓子が大好きだった。生活習慣の改善が必要だが、どこまで受けれるだろうか。

 

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どこの感染?

2021年11月12日 | Weblog

 昨日、高血圧症で内科外来に通院している72歳男性が前夜からの発熱で受診した。発熱外来扱いなので、新型コロナウイルス抗原検査・インフルエンザ迅速試験からスタートする(両者陰性)。

 発熱以外の症状はなく、尿路感染症が疑われた。この患者さんは膀胱全摘・回腸導管造設術の既往がある。

 白血球12600・CRP17.0と炎症反応が上昇している。胸腹部CTで予想通り肺炎はなかった。

 尿はパッチにたまっているが、それほど混濁はしていない。尿沈査で白血球20-29/HPF・細菌(3+)とむしろ通常よりもきれいだった。ふだんは白血球50~99/HPFか>100/HPF・細菌(3+)になる。

 さらにこの患者さんは昨年化膿性脊椎炎(椎間板炎・腸腰筋膿瘍)で入院した既往がある。その時はひどい腰痛があり、今回はそれはないので、再発再燃は否定的だった。それでも気になるので胸腰椎MRIも検査したが、昨年のような異常はなかった。

 関節痛・筋肉痛はなく、関節炎や蜂窩織炎もない。心雑音はないが、念のため心エコーで疣贅を確認することにした(敗血症性血栓はない)。

 尿培養を提出したが、パッチ内の尿を出すしかなかった。あてにならない培養検査になる。血液培養2セットは提出した。抗菌薬を開始して培養待ちとなるが、血液培養で検出されなければ不明になる。

 

 前日から食欲がないという。それでも昼食は食べなかったが、夕食からは食べられるようになった。糖尿病があるが、血糖はDPP4阻害薬のみで良好だった。今日は解熱している。

 

 

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抗精神薬の使い方

2021年11月11日 | Weblog

 内科の病棟で叫び声が廊下に鳴り響いていた。70歳女性が脱水症で入院していた。内科の若い先生が担当している。

 精神障害者のグループホームに入所していて、そこは主に精神遅滞の方たちが住んでいる。ふだんは精神科病院に通院していた。

 処方は、セロクエル25mg錠を6錠分3、デパケン1000mg/日などで、ヒルナミン25mgは屯用で出ているらしい。精神科らしい処方ではある。

 食事をとろうとしないので、精神科病院でも困っていたと言う話もあった(看護師さん情報)。脱水症(高張性)で入院して、点滴をしていたが、何しろ大声で叫んで動くので抑制されていた。内服で薬の投与ができないので、経鼻胃管を挿入して注入していた。

 あまり好ましくない対応だが、それではどうするかというと、対応は難しい。精神薬を増量しないと、難しそうだ。精神科の方が得意だと思うが、精神科単科病院だと食べない患者さんには対応できない。

 それでも看護師さんの話では、液体は摂取するという。むしろ勢いよく飲むので危ないくらいだという。両手が活発に動くので、介助での経口摂取に苦労している。

 液体は摂取できるのならば、嚥下障害という問題ではない(液体の摂取の方が難しいから)。経口で栄養剤を飲んでもらったらどうか。小柄で痩せているので、1日3缶も飲めれば栄養的には問題ない。気が向けば、通常の食事も食べるかもしれない。

 別の抗精神薬を少しずつ追加して、就寝前にはデジレルを追加でどうだろうか。

 最初話を聞いた時は、水ばかり飲んでいたということだった。ありがちな水中毒で低ナトリウム血症かと思ったら、逆に高ナトリウム血症だった。

 

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