goo blog サービス終了のお知らせ 

スピノザの『エチカ』と趣味のブログ

スピノザの『エチカ』について僕が考えていることと,趣味である将棋・競馬・競輪などについて綴るブログです。

秋華賞&契機

2024-10-13 19:00:36 | 中央競馬
 第29回秋華賞。丹内騎手が昨日の新潟の3レースで落馬し腹部を負傷したためコガネノソラは坂井瑠星騎手に変更。
 クイーンズウォークは発馬で躓き2馬身の不利。外の方からセキトバイーストが前に出ての逃げ。向正面に入るあたりでリードは4馬身。2番手にクリスマスパレード。2馬身差でタガノエルピーダ。4番手にラヴァンダ。5番手にコガネノソラ。6番手にアドマイヤベルとランスオブクイーン。8番手にチェルヴィニア。9番手にホーエリートとステレンボッシュ。11番手にミアネーロ。12番手にチルカーノとボンドガールとクイーンズウォーク。5馬身差の最後尾にラビットアイ。前半の1000mは57秒1の超ハイペース。
 超ハイペースになったのは逃げたセキトバイーストが飛ばしたためで,3コーナーでは8馬身のリード。2番手のクリスマスパレードと3番手のタガノエルピーダとの間も4馬身。直線の入口ではセキトバイーストのリードは3馬身くらいに。直線でもみるみる詰まっていき,前を行くクリスマスパレードとラヴァンダの間に進路をとったチェルヴィニアが先頭に。そのまま抜け出した優勝。大外から追い込んだボンドガールが1馬身4分の3差で2着。馬群の内目を縫うように捌いてきたステレンボッシュが半馬身差で3着。
 優勝したチェルヴィニアはここがオークス以来の実戦。大レース連勝で2勝目。このレースは桜花賞馬のステレンボッシュとオークス馬のチェルヴィニアの争い。それぞれに不安材料があり,チェルヴィニアは唯一の遠征競馬だった桜花賞が大敗だったことで,ステレンボッシュは不利な外枠に入ってしまったこと。ステレンボッシュはかなり厳しいレースになったので影響があったかもしれません。チェルヴィニアは桜花賞のときは久々の実戦で,態勢が整っていなかったための大敗だったのでしょう。遠征競馬にも不安がないことを証明し,3歳牝馬のトップに立ったとみていいと思います。母の父はキングカメハメハ。4代母がロイコンで祖母が2003年の京都牝馬ステークスを勝ったハッピーパス。母は2016年のフローラステークスを勝ったチェッキーノでひとつ上の半兄が昨年の新潟記念を勝ったノッキングポイント。Cerviniaはマッターホルン山麓の集落名。
                            
 騎乗したクリストフ・ルメール騎手はオークス以来の大レース制覇。第22回23回に続く6年ぶりの秋華賞3勝目。管理している木村哲也調教師はオークス以来の大レース11勝目。秋華賞は初勝利。

 さらに次のことにも留意しておかなければなりません。
 著者がだれであっても,この本は『レンブラントの生涯と時代The life and times of Rembrandt』という題名から分かるように,レンブラントRembrandt Harmenszoon van Rijnが主題となっています。その中にスピノザが出てくるのは,ファン・ローンJoanis van Loonがそれを書く契機になったのがスピノザであったからだとされています。ローンとレンブラントは仲が良かったので,レンブラントが死んでしまったときにローンはひどく落ち込んでしまいました。鬱状態になったと解するのがよいでしょう。その頃のローンが仕えていたのがコンスタンティンConstantijin Huygensで,そのコンスタンティンがローンの状態を見かねて,スピノザにアドバイスしてもらうように諭しました。ローンは逡巡したのですが結局はスピノザと会うことにしました。そこでスピノザはローンに対し,自身に起こったことやそのときの気持ちを書いてみるようにという助言をしたのです。その助言によってローンは実際にそれを書いてみることにしました。ここから分かる設定は,ローンはそれを発売するつもりがあったわけではなく,自身の癒しのために書いたということです。なのでスピノザがこの中に登場してくることになり,同時にスピノザの知り合いで,ローンと面識があった人たちのことも書かれることになりました。
 この部分が創作であることを僕は否定しませんが,史実であったとしてもおかしくはありません。スピノザがホイヘンスChristiaan Huygensと親しかったことは史実から明らかですし,『ある哲学者の人生Spinoza, A Life』ではホイヘンスの弟とはもっと仲が良かったかもしれないとされています。コンスタンティンはその兄弟の父親ですから,スピノザと面識があったとしてもおかしくありません。とくにコンスタンティンの別荘はフォールブルフVoorburgの近郊にありましたから,スピノザがフォールブルフに住んでいた頃,コンスタンティンの一家が別荘に滞在しているときはスピノザがその別荘を訪れるという機会があったとしてもおかしくありません。つまりコンスタンティンとスピノザの間に面識があったという想定は不自然なものではありませんから,コンスタンティンがローンとスピノザを仲介して会わせたとしてもおかしくはないのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

スプリンターズステークス&蔵書

2024-09-29 19:14:29 | 中央競馬
 香港から2頭が遠征してきた第58回スプリンターズステークス
 オオバンブルマイは加速が鈍く1馬身の不利。4頭が前にいき,ピューロマジック,ウイングレイテスト,ルガル,ビクターザウィナーの順に。前がそのまま飛ばしていったのでピューロマジックのリードは3馬身くらい。ウイングレイテストとルガルの間も3馬身くらいになり,ルガルとビクターザウィナーの間にも2馬身くらいの差。2馬身差でママコチャとマッドクールの併走。7番手にトウシンマカオ。8番手はウインマーベルとサトノレーヴとヴェントヴォーチェ。11番手はエイシンスポッターとナムラクレア。2馬身差でモズメイメイとムゲン。2馬身差でオオバンブルマイとダノンスコーピオンが最後尾を追走。前半の600mは32秒1の超ハイペース。とくに200mから400mが9秒9という猛ラップでした。
 直線の入口でもピューロマジックは5馬身ほどのリード。先にウイングレイテストがついていかれなくなり,ルガルが自然と2番手に上がるとピューロマジックとの差を一気に詰め,そのまま抜け出して優勝。最内から進出してきたトウシンマカオがクビ差で2着。大外を猛然と追い込んだナムラクレアがクビ差で3着。
 優勝したルガルはシルクロードステークス以来の勝利。重賞2勝目で大レースは初制覇。シルクロードステークスを勝ったことで高松宮記念は1番人気で臨みましたがレース中に骨折があって10着。ここはそれ以来のレース。シルクロードステークスは大きな差をつけての優勝でしたから,能力を発揮できれば勝てるというメンバー構成で,結果的に能力発揮に影響しない程度まで仕上がっていたということでしょう。着差は大きくありませんでしたが,現時点ではトップの馬だとみていいと思います。父はドゥラメンテ。4代母がラヴズオンリーミーの祖母にあたる同一牝系。Lugalは古代メソポタミアで使われていたシュメール語で王。
 騎乗した西村淳也騎手はデビューから6年半強で大レース初制覇。管理している杉山晴紀調教師は昨年の天皇賞(春)以来の大レース6勝目。スプリンターズステークスは初勝利。

 スピノザの遺品の競売は11月4日に行われました。この売上からスペイクは葬儀費用も含めた,自身が負担したスピノザのための費用のすべてを賄うことができたとフロイデンタールJacob Freudenthalはいっています。この部分ではコレルスJohannes Colerusがかなり詳しい報告をしていて,たとえば事務処理のために働いた弁護士のためにいくらの支払いがあったかということも明らかになっています。フロイデンタールの計算ではそうしたすべての支払いを終えて,売上金からは僅かのものが残ったとなっていますので,スピノザが本来であれば支払わなければならなかった費用は,これですべて賄うことができて,僅かとはいえ剰余金が発生したということになります。コレルスの伝記Levens-beschrijving van Benedictus de Spinozaによれば,この売上金をレベッカRebecca de Spinozaが差し押さえたのだけれども,残金が僅かだったから遺産の相続を放棄したとなっています。したがって剰余金はたぶんスペイクの収入になったのではないでしょうか。
                            
 なお,フロイデンタールは,これ以外に蔵書の売上があった筈だといっています。スピノザにどのような蔵書があったのかということは記録が残っていて,全部で161冊に上ります。競売の中にも何冊かの本が含まれてはいますが,それにはまったく届いていません。したがって残りの蔵書は密かに売却されたのだとフロイデンタールはみているわけです。ただしフロイデンタールの記述は,この蔵書のいわば密売が,遺稿集Opera Posthumaの出版費用を捻出するために行われたと読むことができるようになっています。なので売上はスペイクのものになったわけではなく,遺稿集の編集者たちの手に入ったと解することもできます。遺稿集の編集者たちが先に売却できそうな蔵書を選別して,その残りが11月4日の競売に出されたということは,可能性としてはあるのかもしれません。
 遺稿集の編集者たちは,遺稿集を出版するだけの費用が捻出できなかったから,スピノザの遺稿そのものを売却しようとしたとフロイデンタールはいっています。この論証の軸になっているのは,シュラーGeorg Hermann SchullerがライプニッツGottfried Wilhelm Leibnizに対して売却を打診しているという史実です。ただしこれは本当に遺稿集の編集者たちの総意であったか,僕は疑わしく思います。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

宝塚記念&自然法

2024-06-23 19:11:25 | 中央競馬
 第65回宝塚記念
 好発はベラジオオペラで一旦は先頭に。しかし外からカラテが上がってくると控え,発馬後の正面のうちにカラテが先頭に。さらに外からルージュエヴァイユも上がってきて,1コーナーから2コーナーに掛けてカラテの前に出て,ここからはルージュエヴァイユの逃げに。こちらも外を進出してきたプラダリアが2番手となり,カラテ,ベラジオオペラの順に。2馬身差でヒートオンビートとディープボンド。1馬身半差でシュトルーヴェとジャスティンパレスとソールオリエンス。ローシャムパークを挟んでヤマニンサンバとドウデュースとブローザホーンが最後尾を併走。3コーナーでは先頭から最後尾までが7馬身くらいに凝縮するレースになりました。最初の1000mは61秒0の超スローペース。
 3コーナーからルージュエヴァイユから離れた外をプラダリア,向正面で掛かり気味に上昇していったローシャムパーク,外に出したベラジオオペラの3頭が併走。直線の入口ではルージュエヴァイユとプラダリアとベラジオオペラの3頭の雁行になり,ローシャムパークは4番手に。その外からブローザホーン。前の3頭の競り合いからはベラジオオペラが抜けて一旦先頭。大外からブローザホーンがそれを差して優勝。ベラジオオペラとブラダリアの競り合いの外から伸びたソールオリエンスが2馬身差で2着。一旦先頭のベラジオオペラがクビ差の3着でプラダリアがクビ差で4着。
 優勝したブローザホーンは日経新春杯以来の勝利で大レース初制覇。未勝利を勝つのに苦労した馬なのですが,1勝してからはきわめて安定した成績を残していて,日経新春杯を勝った後も阪神大賞典が3着,天皇賞(春)が2着と,大レースにも手が届きそうなところまで来ていました。どちらかといえば距離が長いところで活躍してきた馬ですから,各馬が外を回るような馬場状態になったことはプラスに作用したでしょう。ただ,スローペースで上りが早い競馬を突き抜けていますので,むしろこのくらいの距離の方が適性が高かったという可能性もありそうです。父はエピファネイア。母の父はデュランダル。6代母がパテントリークリアの4代母にあたる同一牝系。
 騎乗した菅原明良騎手はデビューから5年3ヶ月で大レース初勝利。管理している吉岡辰弥調教師は開業から4年3ヶ月で大レース初制覇。

 先走って僕のこれまでの考察に合わせて探求しましたが,國分はこのことについても詳しく説明しています。それもみていきます。
                                        
 スピノザはホッブズThomas Hobbesと自身の違いを,自然権jus naturaeに対する考え方として説明しています。この説明から分かるように,自然権という概念notioをホッブズも有していました。というか,自然権を権利の概念として最初に発見したのはホッブズであったといっていいでしょう。それをホッブズは端的に,どんなことでも行う自由libertasと規定しています。つまり現実的に存在するある人間が自然権を行使するというのは,その人間に自然Naturaが与えた力potentiaをその人間の思うがままに発揮する権利のことです。よってこの権利は社会societasの法lex制度の枠内に収まるものではありません。むしろそれを超過するでしょう。このためにホッブズは,法という概念と権利という概念を分けて考えなければならないと主張したのです。
 前もっていっておいたように,スピノザはこのホッブズの規定についてはそのまま引き継いでいるといって差し支えありません。差異が出てくるのはその先です。
 ホッブズは自然権が何らの規制も受けずに発揮される状態のことを自然状態status naturalisといいます。このような状態が人類の歴史の中で実際に存在したとは僕は考えませんし,ホッブズがそれをどう考えていたかも分かりませんが,とりあえず理念型としてそのような状態を拵えて,それを自然状態と規定したとここではいっておきます。ホッブズにとっての自然状態は,戦争状態と同じことを意味します。いわゆる万人の万人に対する闘争状態のことです。しかしこの状態は大きな矛盾を抱えています。というのも,第三部定理六のようなコナトゥスconatusをホッブズが現実的に存在する人間に対して認めるかどうかはともかく,現実的に存在する人間は自身の身の上の安全を第一に考えなければならないのに,自然状態はそれと大きく矛盾する状態,要するにだれもが自身を危険に晒している状態であるからです。このことから,現実的に存在する人間は,自身の安全のためにむしろ自然権を放棄しなければならないという考え方が出てくることになります。それをホッブズは自然権に対して自然法lex naturalisというのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

安田記念&比較

2024-06-02 19:18:45 | 中央競馬
 香港から2頭が遠征してきた第74回安田記念
 逃げたのはドーブネで2番手にウインカーネリアン。3番手以下は2頭ずつの併走でまずジオグリフとフィアスプライド。ロマンチックウォリアーとステラヴェローチェ。ガイアフォースとヴォイッジバブル。パラレルヴィジョンとソウルラッシュ。エルトンバローズとダノンスコーピオン。カテドラルとナミュール。2馬身差でエアロロノア。1馬身差でセリフォス。3馬身差でコレペティトール。2馬身差の最後尾にレッドモンレーヴ。前半の800mは46秒4のスローペース。
 直線の入口でもドーブネが先頭でしたが,2番手で追っていたウインカーネリアンが残り400m付近で前に。3番手にいたフィアスプライドも食い下がりましたが,その外に出されたロマンチックウォリアーが2頭を差して先頭に。さらに外からソウルラッシュとナミュールが並んで追い上げてきましたが届かず,ロマンチックウォリアーが優勝。ナミュールが半馬身差の2着でソウルラッシュがハナ差で3着。
 優勝した香港のロマンチックウォリアーはこれが日本での初出走での大レース制覇。香港では2000m路線での最強馬。2000mは世界でも日本の馬が最も得意とするカテゴリーで,その日本馬を相手に大レースを勝っていましたから,能力は断然。距離が1600mになることはやや不安でしたが,能力の差で克服しました。接戦を演じた2頭は日本の1600m路線のトップクラスですから,これは能力通りの結果といっていいでしょう。
 騎乗した香港のジェームズ・マクドナルド騎手は2015年のジョージライダーステークスを日本馬に騎乗して勝っていますが,日本での大レースは初勝利。管理している香港のダニー・シャム調教師は日本の大レース初制覇。

 なぜ現実的に存在する人間は,自身の無能力impotentiaを観想するcontemplariのではなく表象するimaginariのかということについて,國分は,自身の無能力は他との比較によってしか見出されるほかないからだといっています。これは確かにその通りであるといえるでしょう。僕たちは僕たち自身の能力potentiaに関しては,自分自身を見つめるだけで認識するcognoscereことができるでしょうが,自分自身の無能力に関しては自分自身を見つめるだけでは認識することができず,自分自身を他者と比較しなければ認識することができないであろうからです。もし他者との比較という前提がないとすれば,僕たちは,他者と比較した場合は自身の無能力として認識するであろうことも,自身の能力として判断することになるのではないでしょうか。他者がなし得ることを自身はなし得ないから,あるいは他者が容易になし得ることを自身は苦労しなければなし得ないから,僕たちはそのことを僕たちの無能力と表象するのであって,そうでなければたとえ苦労してでもなし得ることは自身の能力と認識されるでしょうし,なし得ないことについてはそれを能力と認識することはないでしょうが,無能力とも認識しないでしょう。たとえば人間は空を飛ぶことはできませんが,そのことを他者と比較して自身の無能力だと感じることはないのであって,鳥と比較した場合は無能力と感じる場合もあり得るだろうということから,ここでいっていることが正しいということは理解できるのではないかと思います。
                                        
 この部分は,観想するということがどういうことかを示そうとしているわけではありませんから國分はそれについては何もいっていませんが,観想するということは,他との比較なしに成立する思惟作用であると國分がみていることは,この文脈から明らかだと思います。すなわち僕たちが僕たち自身の能力を観想することができるのは,それが他との比較なしにも成立する思惟作用だからなのです。もちろん僕たちが僕たち自身の能力を観想するのが,単に自分自身を対象とした表象imaginatioにすぎない場合があると僕は思います。しかしそうでない場合もあるのであって,だから自分の能力については,観想するといわれているのでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

東京優駿&慣性の法則

2024-05-26 19:20:31 | 中央競馬
 日本ダービーの第91回東京優駿。メイショウタバルは左後ろ脚の蹄の底の内出血で出走取消となり17頭。
 エコロヴァルツが逃げました。2番手にシュガークン。3番手はダノンデサイルとジャスティンミラノ。5番手にシックスペンス。6番手はジューンテイクとゴンバデカーブース。8番手はシンエンペラー。9番手はダノンエアズロック。10番手はサンライズジパング。11番手はレガレイラ。12番手はショウナンラプンタ。13番手はコスモキュランダ。14番手にビザンチンドリームとアーバンシック。16番手にミスタージーティー。最後尾にサンライズアース。最初の1000mは62秒2の超スローペース。
 向正面で最後尾のサンライズアースが外を上昇。3コーナーからはエコロヴァルツ,シュガークン,サンライズアースの3頭が雁行となり,そのまま直線に。この3頭の後ろはダノンデサイルとジャスティンミラノの併走。直線に入るとサンライズアースが一旦は脱落し,エコロヴァルツとシュガークンの競り合いとなったところ,エコロヴァルツの内に進路を取ったダノンデサイルと,シュガークンの外に進路を取ったジャスティンミラノが競り合う2頭の前に。そこからは内のダノンデサイルの伸び脚が優り,ジャスティンミラノを突き離して優勝。ジャスティンミラノが2馬身差で2着。ジャスティンミラノの外から追い込んだシンエンペラーが1馬身4分の1差で3着。
 優勝したダノンデサイルは京成杯以来の勝利。皐月賞は競走除外だったので,実質的には重賞連勝での大レース制覇。このレースは皐月賞の上位6頭はいずれもチャンスがあるとみていました。ダノンデサイルは皐月賞には出走できなかったのですが,未勝利を勝った直後に出走したラジオNIKKEI杯2歳ステークスは皐月賞で5着だったシンエンペラーから僅差の4着で,勝った京成杯の2着は皐月賞で4着だったアーバンシックですから,皐月賞の上位6頭と同等の力量があったということでしょう。差をつけて勝ちましたが,枠順や展開の利があってのものなので,そこまで明瞭な能力差があるというわけではないのではないかと思います。上位馬は能力が拮抗していて,勝ったり負けたりを繰り返していくことになるのではないでしょうか。父はエピファネイア。Decileは㎗のdの部分の完全形。
 騎乗した横山典弘騎手は2018年のJBCレディスクラシック以来の大レース制覇。第76回,81回に続き10年ぶりの日本ダービー3勝目。管理している安田翔伍調教師は2021年の東京大賞典以来の大レース6勝目。日本ダービーは初勝利。

 第三部定理七の論証Demonstratioは成功していると僕は考えますが,ただそれは,コナトゥスconatusが現実的本性actualis essentiaであることを証明しているだけです。もちろんこの定理Propositioはそのことをいっているので,それでいいのですが,現実的本性としてのコナトゥスがなぜ各々の個物res singularisにあるかは何も説明していません。実際にこの定理は,もしコナトゥスが現実的に存在する各々の個物にあるのであれば,それは各々の個物の現実的本性を構成するであろうというようにも読めるのであって,実際にそのような現実的本性が各々の個物にあるということを説明しているとはいえないでしょう。
                                         
 そこで國分は,現実的に存在する個物に,実際には國分は現実的に存在する人間にと限っていますが,これは同じことなので相違を気にする必要はないのでそのまま進めますが,なぜコナトゥスがあるのかということを,別の観点から説明することを試みています。別の観点というのは,実際にコナトゥスに触れている第三部定理六および第三部定理七とは無関係といえる観点です。
 『デカルトの哲学原理Renati des Cartes principiorum philosophiae pars Ⅰ,et Ⅱ, more geometrico demonstratae』の第三部定義三は,運動への傾向を説明しています。これは思惟Cogitatioのことではなく,物質部分が運動へ傾く位置にあって,何らかの原因causaによって妨げられなければ,ある方向へ赴いているであろうという意味だとされています。これは物理学の用語でいえば,慣性の法則といわれるものであって,運動している物体は,その運動を妨げる原因がない限り運動し続けるということを,ここでは運動への傾向という語で表しているのです。
 この運動の傾向というのは,新潮文庫版で畠中が訳注を入れているように,ラテン語ではconatus ad motumです。つまりここでコナトゥスという語が使用されているのです。つまりスピノザは,慣性の法則を説明するときに,コナトゥスという語を用いているのです。國分はこの点に着目しています。スピノザが,これを思惟のことではないといっているのは,運動への傾向というのが,その運動をしようとしているということではないということをいいたかったためで,単に運動に傾く位置にあり,それを妨げる原因がないということにすぎないといいたいのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

優駿牝馬&残余の部分

2024-05-19 19:10:50 | 中央競馬
 オークスの第85回優駿牝馬
 ショウナンマヌエラが前に出たのですが,その外に持ち出したヴィントシュティレが競りかけていき,向正面に入るあたりで3番手との差が6馬身くらいに。向正面に入ってからヴィントシュティレの方が前に出て,そのままショウナンマヌエラとの差を広げていきました。3番手はタガノエルピーダとランスオブクイーン。4馬身差でクイーンズウォーク。6番手にラヴァンダ。7番手はミアネーロとアドマイヤベル。9番手にステレンボッシュ。10番手にチェルヴィニアとサフィラ。12番手にパレハ。13番手にコガネノソラ。14番手にライトバック。15番手にエセルフリーダ。16番手にサンセットビューとホーエリートで,最後尾にスウィープフィート。最初の1000mは57秒7の超ハイペース。
 3コーナーでヴィントシュティレのリードは5馬身。ショウナンマヌエラを挟んで5馬身差でランスオブクイーンが単独の3番手に。ここから前が止まったこともあり,相対的にランスオブクイーンが勢いよく追い上げていくことになり,直線の入口では単独の先頭に。ランスオブクイーンは前をいく馬たちの外だったので,この馬の内外から後方に控えた馬たちが追い上げてきました。抜け出たのはランスオブクイーンの内のステレンボッシュとランスオブクイーンより外を回ったチェルヴィニア。この2頭が後ろを離しての優勝争いとなり,外のチェルヴィニアが制して優勝。ステレンボッシュが半馬身差で2着。ランスオブクイーンを含めた3頭の3着争いは大接戦。ランスオブクイーンのすぐ外のライトバックが1馬身4分の3差で3着。その外のクイーンズウォークがクビ差で4着。ランスオブクイーンがハナ差で5着。
 優勝したチェルヴィニアはアルテミスステークス以来の勝利。重賞2勝目で大レース初制覇。アルテミスステークスはかなりの能力を示しての優勝で,そこからぶっつけとなった桜花賞でも期待していました。結果的に桜花賞は大敗に終わってしまったのですが,それは状態が万全ではなかったということなのでしょう。これが本来の実力であると思われますので,今年の3歳牝馬はこの上位2頭と,NHKマイルカップに回ったアスコリピチェーノの3頭が,他に対して上位であるということでいいと思います。母の父はキングカメハメハ。母は2013年にフローラステークスを勝ったチェッキーノで祖母は2003年に京都牝馬ステークスを勝ったハッピーパス。ひとつ上の半兄は昨年の新潟記念を勝っている現役のノッキングポイント。Cerviniaはマッターホルンの山麓にある集落の名称。
                                        
 騎乗したクリストフ・ルメール騎手はホープフルステークス以来の大レース制覇。第78回,79回,83回に続く2年ぶり4度目の優勝牝馬制覇。管理している木村哲也調教師はホープフルステークス以来の大レース10勝目。優駿牝馬は初勝利。

 部分的に同意するというのは,欲望cupiditasから衝動appetitusを差し引いた残余の部分が意識conscientiaであるという点は,僕は理論上はそうであるとしかいいようがないと考えるからです。実際には衝動は意識されるということをスピノザは前提としているというように第三部定理九は読解することができるわけですから,欲望から衝動を差し引いた部分が人間の精神mens humanaのうちに残余の部分として残るというようには,スピノザは考えていないと僕は考えるのです。だから第三部定理九備考にあるように,スピノザは衝動もまた人間の現実的本性actualis essentiaと認めているのではないでしょうか。ただし,僕は意識を観念の観念idea ideae一般と解し,観念を無意識と解しているのですから,実際に現実的に存在する人間が,自身の衝動のすべてを意識するというようには考えません。つまりスピノザがいっていることの解釈を離れ,僕の見解opinioに寄せていうなら,確かに國分がいっている通りになると思います。一方,人間の特徴が自身を突き動かす力potentiaを意識しているという点であるという点には,僕は同意します。スピノザはまさにそのようにいっていると考えるからです。ただし僕は,現実的に存在する人間が,自身を突き動かす力すなわち衝動のすべてを意識していると考えているわけではありません。
 次に國分は,第三部定理九備考で欲望についていわれていること,すなわち意識された限りでの衝動であるということが,第三部諸感情の定義一では異なって定義されていることの理由を検証しています。すでにいったように,第三部諸感情の定義一の欲望は,第三部定理九備考で欲望についていわれていることよりも衝動についていわれていることに近似した内容になっています。そしてなぜそのようになっているのかということは,僕は平行論の同一個体という観点から説明しましたが,ここからはそれを國分がどう説明しているのかということを検討していくことにします。
 まず最初に踏まえておかなければならないのは,第三部諸感情の定義というのは,第三部の最後に記述されたものです。したがってこれは,第三部の全体を通して論じられてきた諸々の感情affectusについて,それらをリスト化したものであることになります。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

ヴィクトリアマイル&第三部定理九備考

2024-05-12 19:24:56 | 中央競馬
 第19回ヴィクトリアマイル
 ナミュールとルージュリナージュは発馬が悪く1馬身の不利。コンクシェルが逃げて2番手にフィールシンパシーで3番手にスタニングローズ。2馬身差でフィアスプライド。5番手にサウンドビバーチェ。6番手はウンブライルとマスクトディーヴァ。8番手にライラックとドゥアイズ。2馬身差でキタウイングとハーパーとテンハッピーローズ。3馬身差でモリアーナ。14番手がナミュールで2馬身差の最後尾にルージュリナージュ。前半の800mは45秒4のハイペース。
 直線の入口ではフィアスプライドがスタニングローズの内まで追い上げて3番手が併走。4番手以下は3馬身くらいの差がつきました。直線に入るとフィアスプライドが前の3頭の外に持ち出して先頭に。その外からテンハッピーローズが追い込んできて,フィアスプライドを差して優勝。フィアスプライドが1馬身4分の1差で2着。直線で前が詰まったものの内へもっていって伸びたマスクトディーヴァがクビ差の3着。勝ち馬のさらに外から追い込んだドゥアイズがクビ差の4着。
 優勝したテンハッピーローズは重賞初制覇での大レース優勝。オープンは勝っていますが重賞では入着もなかった馬で,伏兵でした。このレースは直線の攻防で力を出し切れなかった馬もいたところ,それとは関係ない外に進路を取ったことがよかったということになるのですが,これまでの成績からはそれでも勝つまでは難しいと思える馬ですので,よく分からないというのが正直なところです。着順は悪くてもそれほど差のないところまできていたのは確かですので,実際にここで示したような力があるということを,これからも示してく可能性はあるでしょう。父はエピファネイア。母の父はタニノギムレット。母の従妹に2020年のマーメイドステークスを勝ったサマーセント
 騎乗した津村明秀騎手はデビューから20年2ヶ月で大レース初制覇。管理している高柳大輔調教師は一昨年のJBCクラシック以来の大レース4勝目。ヴィクトリアマイルは初勝利。

 第四部定理八では,喜びlaetitiaと悲しみtristitiaが意識conscientiaと関連付けられ,それが善bonumでありまた悪malumであるといわれていました。喜びと悲しみは,スピノザの哲学における基本感情affectus primariiです。それでは残る基本感情である欲望cupiditasは,『エチカ』ではどのように意識と関連付けられているのでしょうか。
                                   
 第三部定理九備考では次のようにいわれています。
 「衝動と欲望との相違はといえば,欲望は自らの衝動を意識している限りにおいてもっぱら人間について言われるというだけのことである。このゆえに欲望とは意識を伴った衝動であると定義することができる(Cupiditas est appentitus cum ejusdem conscientia)」。
 僕は意識は観念の観念idea ideaeであり,観念ideaは無意識であると規定しています。したがってここでは,衝動appentitusというのが無意識であるとすれば,欲望はその無意識が意識化されたものであるといわれていることになります。欲望は感情であって観念とは異なるかもしれませんが,それが思惟の様態cogitandi modiとしてみられる限りでは,第二部公理三にあるように,観念自体が思惟の様態としては第一のものなのですから,衝動を観念,欲望を観念の観念とみることに問題は発生しません。ただ,第三部定義三にあるように,感情というのは現実的に存在する人間の精神mens humanaの状態だけを表すだけでなく,人間の身体humanum corpusの状態も同時に意味することができることになっていて,欲望は感情のひとつなのですから当然ながらこのことが欲望にも適用されます。ですから,欲望をあるいは衝動を,人間の身体の状態として考える場合には,このことは妥当しません。人間の身体に関連づけられる限り,欲望と衝動は同一のものであると解しておくのがよいかと思います。
 またこの備考Scholiumは,このようにいわれた後で,善とは何かということに続いています。そして善というのは,意識される限りでの喜びのことをいうのですから,この備考は全体としていえば,すべての感情を意識と関連付けているということもできるでしょう。悪についての言及はないので,悲しみについては言及されていないということもできるでしょうが,ここで善の判断についていわれていることは,悪の判断についても妥当する筈だからです。僕たちは悲しみを忌避しますが,忌避も欲望といえます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

NHKマイルカップ&意識

2024-05-06 19:05:13 | 中央競馬
 昨日の第29回NHKマイルカップ
 アルセナールは伸び上がるような発馬で1馬身の不利。4頭ほど前にいこうとしましたが,ボンドガール,キャプテンシー,マスクオールウィン,イフェイオンの順になり,さらにキャプテンシーが前に出ての逃げになりました。アスコリピチェーノとジャンタルマンタルは並んでその後ろを追走。ロジリオンとエンヤラヴフェイスも併走で続き,ノーブルロジャーがその後ろ。チャンネルトンネルとゴンバデカーブースは併走。ダノンマッキンリーを挟んでディスペランツァとウォーターリヒト。アレンジャーとユキノロイヤルも併走で続き発馬で不利があったアルセナール。シュトラウスは3馬身ほど離れた最後尾を追走。前半の800mは46秒3のミドルペース。
 直線の入口ではキャプテンシーとマスクオールウィンは併走となり,ボンドガールはこの2頭の内へ。しかし前の4頭の後ろにいたジャンタルマンタルがこれらの外から楽に先頭に立つと,てそのまま抜け出して快勝。ジャンタルマンタルをマークするようなレースになったロジリオンが2番手に上がりましたが,ジャンタルマンタルの内にいたため進路がなかったアスコリピチェーノが,やや強引に最内に進路を取り,フィニッシュ前にロジリオンを差して2馬身半差の2着。ロジリオンがクビ差の3着で外から追い上げてきたゴンバデカーブースがクビ差で4着。
 優勝したジャンタルマンタル朝日杯フューチュリティステークス以来の勝利で大レース2勝目。このレースは昨年の牡牝の2歳チャンピオンで,皐月賞3着のジャンタルマンタルと桜花賞2着のアスコリピチェーノの争い。アスコリピチェーノは今年の2戦目で,レース間隔はアスコリピチェーノの方が長く,アスコリピチェーノの桜花賞よりジャンタルマンタルの皐月賞の方が厳しい内容であったため,総合的にはアスコリピチェーノの方が有利かと思っていたのですが,アスコリピチェーノが直線で前が詰まってしまったこともあり,思ったより差がついてジャンタルマンタルの勝利となりました。2000mでも対応できることは皐月賞でも示しましたが,この距離の方がよいということなのでしょう。この路線ではかなりの活躍が見込める馬なのではないかと思います。Jantar Mantarはインドの天体観測施設。
                                        
 騎乗した川田将雅騎手羽田盃以来のの大レース44勝目。第27回以来となる2年ぶりのNHKマイルカップ2勝目。管理している高野友和調教師は朝日杯フューチュリティステークス以来の大レース7勝目。NHKマイルカップは初勝利。

 『エチカ』の草稿の発見に関する事柄はここまでとします。次に以下のことを探求します。
 『スピノザー読む人の肖像』の第4章2節の終わりから3節にかけて,スピノザの哲学における意識conscientiaと欲望cupiditasの関係が詳しく説明されています。僕は意識と欲望を関連させて考えたことはありませんでしたので,ここでの國分の議論に沿って,なぜそのふたつが関連づけられるのかということを考察していきます。
 スピノザの哲学でいわれる意識というのは,観念の観念idea ideaeを意味します。これは僕もこのブログの中で何度かいったことがあるかと思います。國分はこのような見解opinioは,ドゥルーズGille Deleuzeが示した見解の影響が強いといっています。ドゥルーズは確かに意識というのは観念の観念であるという意味のことをいっています。ただしドゥルーズは,観念の観念のすべてが意識といわれるわけではないとしています。ドゥルーズがいっているのは,身体の変状の観念ideae affectionum corporis,すなわち現実的に存在する人間の身体humanum corpusが外部の物体corpusによって刺激されるafficiことの観念の観念を意識とみなすということであって,それとは別種の観念の観念もありますから,そうしたものについては必ずしも意識とは規定しないのです。ただしこのことの妥当性についてはここでは検討しません。僕もドゥルーズの影響を受けているということについては否定しきれませんが,僕は観念の観念を意識とみなすことについては,別の観点から理解しているからです。
 観念の観念を意識とみなすのであれば,観念はどのようにみられるべきなのかということが問題として残ります。そしてこの問題については,僕はそれを無意識とみなします。スピノザの哲学では,現実的に存在する人間の精神mens humanaのうちにXの観念があれば,その人間の精神のうちにXの観念の観念もあることができる,というか必然的にnecessarioあるということになっています。これを無意識と意識に分けていえば,現実的に存在する人間の無意識は,すべて意識化することが可能であるという意味になります。ただしこれは理論上はそれが可能であるということであって,現実的に存在する人間が,自身の無意識をすべて意識化するということを意味するわけではありません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

天皇賞(春)&紹介状

2024-04-28 19:21:14 | 中央競馬
 第169回天皇賞(春)。ヒンドゥタイムズが左前脚の歩行のバランスを欠いたために出走取消となって17頭。
 マテンロウオリオンが先頭に。2番手にドゥレッツァで3番手にディープボンド。その後ろにサヴォーナとテーオーロイヤル。2馬身差でサリエラ。7番手にゴールドプリンセスとチャックネイト。9番手にプリュムドール。2馬身差でタスティエーラとシルヴァーソニック。2馬身差でワープスピードとブローザホーン。2馬身差でスマートファントムとスカーフェイス。3馬身差でハピ。最後尾にメイショウブレゲという隊列。1周目の正面にかけて逃げたマテンロウレオがリードを広げていって6馬身くらいに。ディープボンドが単独の2番手となりドゥレッツァは3番手。その後ろがサヴォーナとテーオーロイヤルで併走という隊列に変化。ハピは大きく外に逸走して競走中止。最初の1000mは59秒7のミドルペース。
 3コーナーではマテンロウレオのリードは4馬身くらい。ここからディープボンドが差を詰めていき,その後ろはサヴォーナとドゥレッツァ。さらにテーオーロイヤルがいて,プリュムドールとサリエラ。直線の入口にかけてマテンロウレオ,ディープボンド,テーオーロイヤルで雁行。逃げたマテンロウレオは一杯になり,一旦はディープボンドが先頭に立ちましたが,すぐに外からテーオーロイヤルが前に。そのまま抜け出したテーオーロイヤルが後続を寄せ付けずに快勝。大外から追い込んできたブローザホーンが2馬身差の2着でディープボンドが半馬身差の3着。ディープボンドの内からよく伸びたスマートファントムが半馬身差で4着。
 優勝したテーオーロイヤルは大レース初制覇。一昨年のダイヤモンドステークスが重賞初制覇で天皇賞(春)は3着。秋も走ったのですが昨年は故障があり1年ほど休養。今年のダイヤモンドステークスで重賞2勝目をあげると阪神大賞典も制してここに向かっていました。このレースは菊花賞馬が強いレースなので,ドゥレッツァの方が有力と見ていましたが,ドゥレッツァの菊花賞は異常なレースぶりであったため,自滅というケースも大いに考えられました。その場合は長距離で大きな実績を残しているテーオーロイヤルということになり,安定性から考えても大きく崩れることはないと思われました。つけている着差が,ドゥレッツァ以外の各馬との現状の能力の差そのものであると考えてよいのではないでしょうか。父はリオンディーズ。母の父は第125回を制したマンハッタンカフェ。4代母がバラダの母にあたる同一牝系。ひとつ上の半兄は2021年のみやこステークス,2022年のマーチステークスと帝王賞,2023年のかしわ記念帝王賞を勝っている現役のメイショウハリオ
 騎乗した菱田裕二騎手はデビューから12年1ヶ月で大レース初制覇。管理している岡田稲男調教師は帝王賞以来の大レース4勝目。天皇賞は初勝利。

 ライプニッツGottfried Wilhelm Leibnizがスピノザに論文を2冊送り,フッデJohann Huddeの講評を求めたのは,光学に関してフッデが有識者であることを知っていたからです。ところがライプニッツとシュラーGeorg Hermann Schullerの間にはそういった関係はありません。光学に限らずどのような学識に関してもライプニッツはシュラーを有識者と認めていたわけではありません。ライプニッツにとってシュラーと親交を結ぶことが有益であったのは,自身の何らかの学識にとって有益だったからというわけではありません。シュラーがライプニッツにとって有益な情報,とくにスピノザに関する情報を教えてくれる人物であったからです。
                                        
 『宮廷人と異端者The Courtier and the Heretuc : Leibniz,Spinoza,and the Fate of God in the Modern World』ではかなり戯画化されているといえますが,基本的にシュラーの役回りというのはライプニッツの情報屋という位置づけになっています。この位置づけというのは正しいといえると思います。ライプニッツにとってスピノザやフッデは学識に関して対等な話し相手,こういってよければ自身にとって教師ともなれる存在であったのに対し,シュラーはそうではなく,秘書とか小間使いといったような存在に近かったのだと僕は思います。
 ですから,少なくともシュラーと頻繁に書簡でやり取りをして,かつスピノザとも親しい間柄であったチルンハウスEhrenfried Walther von Tschirnhausがパリにいたときは,ライプニッツは積極的にシュラーとやり取りしなければならない理由はなかったのだと僕は思いますし,事実としてそうであったろうと推測します。ライプニッツはアムステルダムAmsterdamでシュラーおよびフッデと面会したとナドラーSteven Nadlerは断定していて,ライプニッツとフッデもライプニッツとシュラーもこのときが初対面であったと思われますが,ライプニッツとフッデは互いに相手の人となりをそれなりに理解していたのに対し,ライプニッツとシュラーはそうしたことも知らずに対面したと考えておいた方がいいでしょう。『ある哲学者の人生Spinoza, A Life』ではチルンハウスが事前にシュラーに対してライプニッツの紹介状を渡していたと思われるという記述がありますが,そうした紹介状がなければ,この時点でシュラーとライプニッツが面会するというのは不自然であったということは,確かな事実であったと思われます。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

皐月賞&心の隙

2024-04-14 18:56:49 | 中央競馬
 第84回皐月賞。ダノンデサイルが馬場入場後に右前脚の歩行のバランスを欠いたために競走除外となって17頭。
 ビザンチンドリームは立ち上がってしまい3馬身の不利。メイショウタバル,シリウスコルト,ジャンタルマンタルの3頭が前に。アレグロブリランテ,ジャスティンミラノと続いてサンライズジパングとミスタージーティーとシンエンペラーが併走。ルカランフィーストとホウオウプロザンゲ,アーバンシックとコスモキュランダとサンライズアース,エコロヴァルツとウォーターリヒト。レガレイラが馬群の最後尾。ビザンチンドリームは離されてしまいました。1コーナーではメイショウタバルが単独の先頭に立ち,2番手にシリウスコルト。3番手がアレグロブリランテとジャンタルマンタルの併走に。メイショウタバルはここから後ろを引き離していき,向正面では8馬身くらいのリードをつける大逃げに。前半の1000mは57秒5の超ハイペース。
 メイショウタバルのリードは3コーナーでは6馬身。シリウスコルトが差を詰めていくとその外からジャンタルマンタルも追い上げてきて,直線の入口ではメイショウタバルに並び掛けて直線に入るとすぐに抜け出しました。追ってきたのはジャスティンミラノとコスモキュランダ。この2頭が競り合いながら内のジャンタルマンタルを差して優勝争い。先んじていたジャスティンミラノが凌ぎ,レコードタイムで優勝。コスモキュランダがクビ差で2着。内容はかなり強かったジャンタルマンタルは半馬身差で3着。
 優勝したジャスティンミラノはデビューから3連勝。共同通信杯に続く重賞2勝目での大レース制覇。前走と同じくらいの差をジャンタルマンタルにつけていますので,2頭とも力を発揮しての結果ということになるでしょう。ですからコスモキュランダはジャスティンミラノに遜色がない力量をもっていることになり,コスモキュランダとシンエンペラーの差も弥生賞と同じくらい。ホープフルステークスでシンエンペラーに勝ったレガレイラもそれと差がないところまできていますから,概ね各馬が力量を出した好レースだったといえそうです。レコードタイムはペースの関係もありますから何ともいえないかもしれませんが,この世代のレベルの高さの証という可能性もありそうです。キャリアを考えると将来性は上位馬の中で最も高いのではないでしょうか。父はキズナ
 騎乗した戸崎圭太騎手は昨年の安田記念以来の大レース21勝目。第78回以来となる6年ぶりの皐月賞2勝目。管理している友道康夫調教師は有馬記念以来の大レース21勝目。第69回以来となる15年ぶりの皐月賞2勝目。

 遺稿集Opera Posthumaが出版されれば手稿は捨てるものだから,それを廃棄したらステノNicola Stenoの手に渡ってしまったとか,捨てるのではなくチルンハウスEhrenfried Walther von Tschirnhausが自らステノに渡してしまったというのは,推測としては短絡的だといえそうです。ただ,遺稿集が出版されれば,そこに『エチカ』は掲載されるのですから,チルンハウスにとって手稿が不要になるのは間違いありません。出版されればそれはシュラーGeorg Hermann Schullerからチルンハウスに贈られるでしょうから,もしも自身が『エチカ』を研究しようと思えば遺稿集に掲載されたものを利用すればよいのですし,もしかしたらチルンハウスは,スピノザの死によって,スピノザの哲学に対する関心を失ったり薄めたりしたかもしれず,その場合も手稿は不要になることになります。だから少なくともチルンハウスは,それまでは手稿を他人に見つからないような仕方で慎重に扱っていたと思われますが,こうした事情によって,失ってしまっても構わないというような気持ちが心の片隅に芽生えてしまったとしてもおかしくはありません。僕はステノが何らかの画策をして,『エチカ』の手稿をチルンハウスから略奪するなり騙し取るなりした可能性が最も高いと思いますが,チルンハウスの側にもそうなってしまう心の隙あるいは油断のようなものが,その時点ではあったのではないかと思います。
                                        
 ステノは『エチカ』の手稿を入手したのですが,そこにはひとつの欠点がありました。実はチルンハウスが所持していた手稿は,ピーター・ファン・ヘントが書いたものですが,それは後の筆跡鑑定で明らかになったということから理解できるように,ヘントが書いたということが手稿そのものに記載されていたというわけではありません。それと同様に,手稿の原稿がだれの手によるものなのかということ,つまりそれがスピノザの著作物であるということは,手稿には書かれていませんでした。つまりチルンハウスが所有していた手稿というのは,文字通りに『エチカ』の本文なのであって,スピノザの手によるものだということは書かれていませんでした。これはもちろん,その手稿が他人の手に渡ったときの危険性を低下させるのが最大の目的だったでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

農林水産省賞典中山グランドジャンプ&チルンハウスの事情

2024-04-13 20:16:41 | 中央競馬
 第26回中山グランドジャンプ
 ワンダークローバーは2馬身,マイネルグロンは1馬身の不利が発馬でありました。まず先頭に立ったのはビレッジイーグル。2番手にジューンベロシティとギガバッケン。4番手にニシノデイジー。5番手にエコロデュエルとタマモワカムシャ。2馬身差でイロゴトシとフロールシュタット。マイネルグロンが9番手まで巻き返し10番手にダイシンクローバー。2馬身差でポルタフォリオ。2馬身差の最後尾にワンダークローバー。1周目の正面でタマモワカムシャは落馬。その後のコーナーでポルタフォリオとワンダークローバーの2頭はほかの9頭から大きく離されていきました。最初の大竹柵でニシノデイジーが先頭に立ち,4馬身ほどでビレッジイーグル,さらに4馬身ほどでフロールシュタットと,前がばらけました。ニシノデイジーはさらに差を広げていき,2度目の大障害コースでリードは7馬身くらいに。
 向正面に戻ってニシノデイジーのリードは詰まり4馬身くらい。2番手にビレッジイーグルで3番手にイロゴトシ。3馬身差でジューンベロシティが続き5番手にエコロデュエル。マイネルグロンはその後ろ。向正面の半ばでニシノデイジーとビレッジイーグルとイロゴトシが併走に。その後ろは8馬身ほどの差があってジューンベロシティとエコロデュエル。3コーナーではビレッジイーグルとイロゴトシが前に出てニシノデイジーは3番手に後退。外のイロゴトシがビレッジイーグルを振り切り,単独の先頭に立って直線に。一杯でしたがそのままリードを保って優勝。また盛り返してきたニシノデイジーがビレッジイーグルと競り合うところ,外へ外へと切れ込みながらジューンベロシティが追い込んで3馬身差で2着。ビレッジイーグルを競り落としたニシノデイジーが2馬身半差で3着。
 優勝したイロゴトシは昨年の中山グランドジャンプ以来の勝利で大レース2勝目。連覇を達成しました。その後は昨年の10月に東京ハイジャンプを走って6着。今年は平場の特別戦を使ってここに臨みました。断然の人気に推されていたマイネルグロンには東京ハイジャンプで敗れていましたが,中山の長距離戦では初対戦。負かせる可能性が最も高そうなのはこの馬だと思っていました。ただマイネルグロンは道中の進みが悪く,今日は本調子になかったのではないかと思われますので,真の決着がつくのはこれからということになりそうです。父は2015年に東京新聞杯を勝ったヴァンセンヌでその父がディープインパクトで母がフラワーパーク。母の父はクロフネ
 騎乗した黒岩悠騎手は昨年の中山グランドジャンプ以来の大レース2勝目。管理している牧田和弥調教師は昨年の中山グランドジャンプ以来の大レース2勝目。

 ここではチルンハウスEhrenfried Walther von Tschirnhausの事情というのも推測してみます。
 チルンハウスはシュラーGeorg Hermann Schullerを介してスピノザのことを知りました。だからスピノザとチルンハウスの間で交わされた書簡のいくつかはシュラーを介して交わされています。したがって,チルンハウスはスピノザが死んだということを,シュラーから伝えられたと思われます。スピノザが死んだからチルンハウスとシュラーの関係が途絶えたとは考えにくいので,おそらくその後の状況についてもチルンハウスはシュラーから伝えられていたのではないかと思われます。
                                        
 このことは,『スピノザ往復書簡集Epistolae』の成立事情からそうだったのではないかと僕は推測します。遺稿集Opera Posthumaの編集者たちは,スピノザとの間での書簡を遺稿集に掲載するにあたって,可能であれば当事者にその可否を確認したと思われます。だからライプニッツGottfried Wilhelm Leibnizとスピノザとの間に交わされた書簡の多くは掲載を見送られたのだし,フッデJohann Huddeからスピノザに宛てられた書簡の全ても掲載を見送られ,スピノザからフッデに宛てられた書簡には宛先が掲載されなかったのです。書簡集の編集が進められていたアムステルダムAmsterdamにはチルンハウスはそのときにはいなかったのですが,事情は同じであったライプニッツの意向がある程度は尊重されたということは,チルンハウスにも何らかの確認があったと思われます。書簡を通して容易に連絡が取れたという点では,ライプニッツもチルンハウスも同じであったと思われるからです。逆にいえば,チルンハウスの書簡はそのすべて,あるいはほとんどが遺稿集に掲載されたのは,チルンハウスが掲載されても構わないと考えていたからだろうと僕は推測しています。
 おそらくチルンハウスに連絡を取ったのはシュラーですが,そのシュラーは遺稿集の編集者のひとりでした。ですから,遺稿集の出版の準備が進んでいるということもシュラーからチルンハウスに伝えられていたのだろうと僕は推測します。國分の指摘では,遺稿集が出版されれば元の原稿が破棄されるのはこの当時の原則になっていました。ただし,チルンハウスが所有していたのは手稿で,國分が指摘していることがそのまま妥当するとは限りません。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

桜花賞&手稿

2024-04-07 19:45:39 | 中央競馬
 第84回桜花賞。藤岡康太騎手が6日の3レースで落馬して頭部と胸部を負傷したためエトヴプレは鮫島克駿騎手に変更。
 外の方からショウナンマヌエラがハナへ。2番手にキャットファイトとコラソンビート。その後ろにクイーンズウォークとアスコリピチェーノとエトヴプレ。その直後のシカゴスティングまでは一団。イフェイオンとセキトバイースト。ステレンボッシュとセシリエプラージュ。チェルヴィニア。ワイドラトゥールとテウメッサ。マスクオールウィン,ハワイアンティアレ。2馬身差でライトバック。最後尾にスウィープフィート。概ね馬群の外を回っていた馬が徐々に位置を上げていく形になったので,3コーナーに掛けてもそこから4コーナーに掛けても位置取りにはかなり変化が生じました。前半の800mは46秒3のスローペース。
 直線の入口で逃げたショウナンマヌエラのリードはまだ2馬身ほどありましたが,2番手追走になっていたエトヴプレがすぐに先頭に。ただ外の各馬の脚がよく,ステレンボッシュが差し切って優勝。その外から追ってきたアスコリピチェーノが4分の3馬身差で2着。さらに外から追い込んだライトバックがクビ差で3着。
 優勝したステレンボッシュは重賞初制覇での大レース制覇。阪神ジュベナイルフィリーズはアスコリピチェーノが勝ってクビ差の2着でしたが,そのときはアスコリピチェーノの後ろから内を通って追い上げたもの。今日は直線入口での位置取りが逆になって逆転したという内容。2頭とも阪神ジュベナイルフィリーズ以来のレースで,その2頭が上位人気に推された上で,離れた後方から追い込んできた2頭を凌いでワンツーフィニッシュを決めましたので,この2頭はほかに対して力量上位であるとみてよいと思います。父はエピファネイア。母の父はルーラーシップ。祖母の父はダンスインザダーク。3代母がウインドインハーヘアで従妹に昨年のホープフルステークスを勝っている現役のレガレイラ。Stellenboschは南アフリカの都市の名称。
                                        
 騎乗したブラジルのジョアン・モレイラ騎手はJBCクラシック以来の日本馬に騎乗しての大レース9勝目。桜花賞は初勝利。管理している国枝栄調教師は2021年の阪神ジュベナイルフィリーズ以来の大レース23勝目。第70回,78回に続き6年ぶりの桜花賞3勝目。

 僕たちにとっては認識するcognoscereことが不可能な属性attributumについても,第二部自然学②補助定理七備考でいわれていることは成立します。なのでこの備考Scholiumを論拠として神Deusをひとつの個体と仮定する國分の方法は成立すると僕は結論します。つまり,神が内在的原因causa immanensであることの意味は,神をひとつの個体と規定するなら,神という個体の中で生じる各々の様態modiの生成も推移も消滅も神自身の行為にほかならないのであって,各々の様態のその行為は神の力potentiaの表現であるのですが,そうしたことは神の本性essentiaを構成する無限に多くのinfinita属性のどの属性を抽出したとしても成立すると僕は結論付けるということです。
 この部分の考察は以上です。次の論題に移りますが,これは何かを考察するというよりは,史実の確認といった方が正確です。
 『スピノザーナ11号』に関連する事項として,工藤喜作について考察したときに,工藤が知り得なかった事実について触れました。工藤は2010年1月に死んでしまったのですが,同年になって,『エチカ』の手稿が発見されたということです。このことについて,『スピノザー読む人の肖像』の第4章で詳しく説明されています。これはこのブログの今後の考察についても有益だと思いますので,ここでその事情というのを,國分の説明を追いながら詳しく説明しておきましょう。
 『エチカ』の遺稿集Opera Posthumaは1677年に出版されました。この当時,手稿すなわち生の原稿のことですが,それは出版後に廃棄するというのが当時の出版業界の常識でした。ですからスピノザの手による『エチカ』の原稿というのは,そのときに破棄されてしまったと考えるのが妥当です。ただ,『エチカ』の出版はスピノザの死後のことであって,スピノザは生前にその原稿の写しを何人かには渡していました。2010年になって発見された手稿というのは,スピノザが存命中に書写された手稿のひとつです。
 これを書写したのは,ピーター・ファン・ヘントという人物であると特定されています。僕にとっては初見の人物でしたが,この人はスピノザの友人のひとりで,ラテン語に堪能な人物であったと國分は説明しています。きちんとした証拠で特定されています。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

大阪杯&検証

2024-04-01 19:14:35 | 中央競馬
 昨日の第68回大阪杯
 エピファニーは発馬直後に挟まれる不利。逃げたのはスタニングローズで2番手にベラジオオペラ。3番手がタスティエーラとリカンカブールの併走になり,その後ろにジオグリフ。プラダリアとハーパーが併走で続き,ステラヴェローチェとキラーアビリティも並んで追走。ミッキーゴージャスとルージュエヴァイユがその後ろで,エピファニー,カテドラル,ハヤヤッコの順。向正面で外から追い上げていったのがローシャムパークでソールオリエンスもそれを追うように上がっていきました。前半の1000mは60秒2の超スローペース。
 3コーナーからスタニングローズとベラジオオペラの間隔が半馬身ほどになり,向正面で動いたローシャムパークも差のない3番手に。その後ろはタスティエーラ,ジオグリフ,ソールオリエンスで併走。直線に入るとベラジオオペラが先頭に立ち,外からローシャムパーク,内を捌いてきたルージュエヴァイユの追い上げで3頭の優勝争い。先んじて前に出ていた真中のベラジオオペラがそのまま先頭を譲らずに優勝。外のローシャムパークがクビ差で2着。内のルージュエヴァイユがハナ差で3着。
 優勝したベラジオオペラは大レース初制覇。昨年は3連勝でスプリングステークスを制し,ダービーは4着。休養が長引き復帰戦となったチャレンジカップで重賞2勝目をあげて今年は京都記念で2着。4歳馬の中ではタスティエーラやソールオリエンスほどの実績に欠け,かつ4歳馬は年長の馬に対してこのレベルのレースでは苦戦していましたので,厳しいのではないかとみていました。超スローペースの先行策がうまくいったということもあるのでしょうが,ドバイに遠征した馬も多く,この程度のメンバー構成であれば,4歳馬も互角に戦えるということなのかもしれません。父はロードカナロア。母のひとつ上の半兄に2018年に函館記念を勝ったエアアンセム。3代母が1998年にクイーンステークスを勝ったエアデジャヴー
 騎乗した横山和生騎手は昨年の川崎記念以来の大レース5勝目。大阪杯は初勝利。管理している上村洋行調教師は開業から5年で大レース初制覇。

 スピノザが内在的原因causa immanensを『エチカ』の中で定義していないのは,たぶんそれがスピノザにとって特別な意味を有するような概念notioではなくて,ヘーレボールドAdrianus Heereboordの分節に倣っただけだからだと思います。そこで國分は,内在的原因というのがどのような原因であるのかということを,『エチカ』のほかの部分から検証することを試みています。このような試みは,スピノザの哲学が内在の哲学であるということを強調する際には,大いに有益であるといえるでしょう。いい換えれば,ここで國分がなしている試みは,近藤のような学者の説を補完するものになるでしょう。
                                   
 國分が最初に注目しているのは,第一部定理三六です。といってもこの定理Propositioそのものであるというよりは,この定理をスピノザがどのように証明しているのかということと関係します。スピノザはこの定理を論証するために,第一部定理二五系を援用して,存在するすべてのものは神の属性Dei attributaを一定の仕方で表現するexprimunturといっています。なので実際に國分が着目しているのは,第一部定理二五系だといってもいいかもしれません。この,表現するというところが重要です。というのは,内在的原因において解される因果性とは,原因は結果effectusを引き起こすというよりは,原因は原因自身の力potentiaを結果によって表現するからです。このことを國分は次のように説明しています。
 第二部自然学②補助定理七備考から,神をひとつの個体とみなせると國分はいいます。実際にこの備考Scholiumによって神をひとつの個体とみなせるかどうかは僕には微妙なところだと思えます。そこでは神の延長の属性Extensionis attributumしかも延長の属性の間接無限様態についてひとつの個体とみなすことができるということは僕は認めますが,そのことと神をひとつの個体とみなすということは別のことだと思うからです。ただし國分はそういうことをここで主張しようとしているわけではありませんから,この点について突き詰めて考えることはしません。単に神をひとつの個体として考えるという仮定であると解します。このような仮定をすること自体は何も不条理ではありませんから,問題視しなければならないようなことは何も含まれてはいないといっていいでしょう。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

高松宮記念&しるしの無限遡行

2024-03-24 19:18:02 | 中央競馬
 香港から1頭が遠征してきた第54回高松宮記念
 少し押したビクターザウィナーが前に出て,その後で内からマッドクールが出てきたのでやや牽制し合いましたが,そのままビクターザウィナーの逃げとなってマッドクールが2番手。3番手にはルガルが上がり,その後ろはウインカーネリアンとママコチャ。さらにビッグシーザーとトウシンマカオが並んで続き,8番手にテイエムスパーダ。以下はメイケイエール,ソーダズリング,ナムラクレア,シュバルツカイザーの順で続き,ロータスランドとウインマーベルが併走。2馬身ほど開いてシャンパンカラーとディヴィーナ。マテンロウオリオンが続いて最後尾にモズメイメイ。前半の600mは34秒9の超スローペース。
 ビクターザウィナーが先頭のまま直線に入りましたが,少し外に持ち出しました。その外に並んできたのはウインカーネリアン。マッドクールはそのまま内を進出。内を回ったマッドクールの方が外の2頭よりも前に。マッドクールを追うように内を回ってきたのがナムラクレア。1頭分だけ外に出し,マッドクールを追い詰めてフィニッシュ。しかし届かず,優勝はマッドクール。ナムラクレアがアタマ差で2着。逃げたビクターザウィナーが3馬身差で3着。
 優勝したマッドクールは重賞初制覇での大レース勝利。ただこの馬は一昨年の5月から12月にかけて4連勝してオープン入りし,CBC賞の3着を挟んでオープンを勝利。昨秋のスプリンターズステークスも2着でしたから,十分に通用する能力をもっているということは明らかでした。直線で逃げた馬が外を回ったのに対し,そのまま内を突いたという騎手の判断がよかったということになるでしょう。着差を考慮すると,ペースには恵まれたといえそうです。
 騎乗した坂井瑠星騎手は全日本2歳優駿以来の大レース8勝目。高松宮記念は初制覇。管理している池添学調教師は一昨年のホープフルステークス以来の大レース2勝目。

 スピノザはDeusが存在するということを証明するよりも,現実的に存在する人間の知性intellectusが,神を十全に認識するcognoscereということの方を重視していました。この姿勢は『知性改善論Tractatus de Intellectus Emendatione』の時代にも同様です。ですから人間がいかにして神の十全な観念idea adaequataを有するのかということの方法論は『知性改善論』の主要なテーマになっています。スピノザはこのことについてかなり試行錯誤していて,『知性改善論』は未完のまま中断されています。ですからそこの部分でのトートロジーが『知性改善論』では目立っています。とはいえ,知性の道具instrumentumとしての真理veritasに関する無限遡行も,『知性改善論』の中では解決されているわけではないので,僕たちがそれを読む限り,スピノザは道具の無限遡行を解消するために,新たな課題としての真理の標識signumに移行したというように解せるようになっています。
                                        
 しかし一方で,國分自身が指摘している通り,道具の無限遡行についてはスピノザは軽視していたようにみえますので,もしかしたらスピノザはそれは解決済みであるとか,まだ済ませてはいないけれども簡単にけりがつけられることであると思っていた可能性がないわけではありません。もしその場合には,スピノザが真理のしるしsignumという課題を探求し始めたのは,道具に関する無限遡行を解消するためだったというわけでは必ずしもなく,単に道具とは別の課題であるしるしについて考察し始めただけであったかもしれません。そこのところにはっきりとした関係があったのかなかったのかということについては,スピノザの意図としては不明であると僕はしておきます。
 國分が指摘しているのは,実は真理のしるしを追い求めたとしても,道具と同様の無限遡行に至る筈だということです。これは次のように考えるとよいでしょう。もしもある何らかの事柄が真理のしるしになると仮定します。しかしその場合,それが確かに真理のしるしであるということを確証するためには,それが確かに真理のしるしであるというしるしが必要であり,それもまた真理のしるしのしるしであるということを確証するような別のしるしを必要とするといった具合に,この関係が無限に連鎖してくことになるのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする

フェブラリーステークス&観念の力

2024-02-19 19:07:33 | 中央競馬
 浦和から1頭,大井から1頭,兵庫から1頭が遠征してきた昨日の第41回フェブラリーステークス
 シャンパンカラーは立ち上がってしまい1馬身の不利。発馬後の加速が群を抜いていたドンフランキーが単独の逃げ。2番手はイグナイター,ドゥラエレーデ,ペプチドナイル,ウィルソンテソーロの4頭の集団。2馬身差で巻き返してきたシャンパンカラーとオメガギネス。2馬身差でガイアフォース。2馬身差でミックファイアとスピーディキック。1馬身差でカラテ。1馬身差でタガノビューティーとキングズソード。6馬身差でセキフウ。2馬身差でアルファマム。2馬身差の最後尾にレッドルゼル。前半の800mは45秒6の超ハイペース。
 直線に入るところでもドンフランキーが先頭でしたが,内を少し開けたのでずっと内を回っていたイグナイターが先頭に。その後からドンフランキーの外を回ったペプチドナイルが追い上げてきて先頭に。これをめがけて追い掛けてきたのはタガノビューティー。さらにタガノビューティーの外からガイアフォースとセキフウが並んで追い込み,タガノビューティーの内からはキングズソード。しかし先に先頭に立っていたペプチドナイルがフィニッシュまで粘って優勝。ガイアフォースが1馬身4分の1差で2着。セキフウがクビ差の3着でタガノビューティーがハナ差で4着。キングズソードが半馬身差で5着。
 優勝したペプチドナイルはこれまでオープンを3勝していましたが,重賞は初制覇での大レース優勝。このレースはチャンピオンズカップから直行してきた実績馬か,前哨戦の根岸ステークスおよび東海ステークスの勝ち馬が勝つという傾向。ところが今年は該当馬がいませんでした。つまり例年ほどのレベルにはなかったといえるメンバー構成なので,勝ったからといって過去の優勝馬ほどの評価はできないかもしれません。ただ超ハイペースで後ろの方にいた馬が有利になったレースを,先行策から抜け出して粘ったという内容は強かったと思います。父はキングカメハメハ。母の父はマンハッタンカフェ
                                     
 騎乗した藤岡佑介騎手は2018年のNHKマイルカップ以来となる大レース4勝目。フェブラリーステークスは初勝利。管理している武英智調教師は開業から6年弱で大レース初勝利。

 十全な観念idea adaequataと混乱した観念idea inadaequataの関係は,第一義的には前者が真理veritasで後者が虚偽falsitasであるということです。したがって,十全な観念は十全な観念と混乱した観念の相違を知性intellectusに教えるけれど,混乱した観念はその相違を知性に教えることがないということは,真理と虚偽の相違を僕たちに教えるのは十全な観念であって,混乱した観念はそのためには何も役に立たないことを意味します。スピノザは第二部定理四二で,真なるものと偽なるものとの相違を教えるのは第二種の認識cognitio secundi generisと第三種の認識cognitio tertii generisであって,第一種の認識cognitio primi generisではないといっていますが,第二種の認識と第三種の認識が十全な観念であるのに対し,第一種の認識は混乱した観念ですから,この定理Propositioはまさにこのことをいっていることになります。
 このことは,十全な観念と混乱した観念の関係が,第一義的には真理と虚偽の相違を示すとしても,スピノザの哲学では前者が有esseであって後者が無であるという関係を同時に意味するということから容易に理解できるのではないかと思います。スピノザの哲学では,事物が存在し得るということはその事物に実在性realitasがあるということを意味し,実在性というのは力potentiaという観点からみたときの本性essentiaを意味することになり,逆に存在し得ないということは,その事物には実在性が伴っていないということを意味することになりますから,力と反対の意味において無力impotentiaであることになります。つまり,十全な観念には知性に真理と虚偽の相違を教えるだけの力があるにしても,混乱した観念はそれ自体が無力なので,そのような力をもつことができないのです。
 ここまでの考察から,スピノザがどういう観点から方法論的懐疑doute méthodiqueを批判しようとしているかということも明らかになったといえます。デカルトRené Descartesは,スピノザが中心的な課題として据えた確実性certitudoを,デカルト自身が疑い得ないことと等置しています。しかしスピノザからすれば,ある事柄についてそれを疑い得ないということは,むしろその事柄について確実であるということから帰結するような特質proprietasにすぎないのです。他面からいえば,デカルトにとっての確実性が消極的なものだとすれば,スピノザにとっては積極的なものなのです。
コメント
  • X
  • Facebookでシェアする
  • はてなブックマークに追加する
  • LINEでシェアする