郡山さんから、富岡の12月例解の報告です。
参加者は、4名でした。
1.特集2学術会議任命拒否問題
ことの本質はパージであり、異端狩りの始まりだ(保阪正康)。菅政権の狙いは、「学術会議つぶし」(上野千鶴子、前川喜平)である。なぜ学術会議をつぶしたいのか?
学術会議のこれまでの活動、とりわけ軍事研究や核のゴミ問題についての政権への批判的提言が背景にある(上野、杉田敦、大沢真理)。
科学技術・イノベーション基本法(2020/6改正)との関連も注目される。これまで除外されていた人文科学系を対象とすることで、人文科学系が「「役に立たない」から廃止というより、是非ともお上の役に立つよう総動員される領域」となる、と見立てている(大沢、神保太郎)。今後、「学問の自由」や「大学の自治」への、人事・予算等を通した干渉・支配が懸念される(杉田、前川、古川隆久)。
以上のような論点を整理しながら、参加者から「会員たちは一様に不気味な感覚を持った」「穏健な人々をもランダムの拘束することによって、人々を疑心暗鬼にさせる」(平田オリザ)という指摘への暗い共感が、出されました。
片山善博の「(首相は)こんな展開になるとは予想しなかった・・・お粗末な経過」という見解に対して、「すこし甘いのではないか」との批判がありましたが、一方で「菅内閣の深刻な欠陥面」である、という感想もありました。
しかし、メディアの報道は必ずしも十分ではなく、政府の「学術会議改革」プロパガンダが一定の世論の支持を得ていることに、一様に危機感を持ちました。
また、松浦さんは、図書館におけるコロナ感染対策として入館者名簿(氏名・住所)作成が問題となっているが、これについてメディアが全く報道していない、と指摘しました。
身近に迫る「暗い罠」のようなもの、マルティン・ニーメラーの「そして彼らが私を攻撃したとき、私のために声をあげる人は一人もいなかった」という言葉を、あらためて噛みしめました。
2.坂上香『プリズム・サークル』
TC(回復共同体)は、コミュニティーの力を借りてエモーショナル・リテラシーを発達させ、個人の回復を手助けする。
エモーショナル・リテラシーとは、感情の読み書き能力のことで、自分の心の動きや感情を感じ取り、それを認識し、表現する力。TCは、この力を共同体の中でともに鍛えていくことで、自らの最も深い傷に直面することを求めている。
こうした手法を講じて、刑務所の被収容者たちが、自らの被害経験を言語化し、その上に加害経験と被害者に向き合っていく様子が、丁寧かつ執拗に描かれている。
しかし、日本の現在の刑務所は「沈黙の矯正文化」といわれるように、外部との「面会」「交流」は限定され被収容者間の世間話も禁止、リテラシーそのものが禁止されている。そうしたなかでのTCの試行錯誤に、驚きと期待を持った。
「刑務所化する社会」(フーコー)を地で行くような、日本の学校教育の中で行われている「黙食」「黙働掃除」の指摘には、全員、深くうなずきました。コロナ禍の学校が、「静かに」の呼びかけが「黙れ」(命令)になっていることを、懸念します。
3.海の変調・海水温の気温上昇
森さやか『いま、この惑星で起きていること』:記事の最後に、やや肯定的に紹介されている「気候工学」(宇宙に遮蔽板を浮かべて太陽光を遮る構想)について、ナオミ・クラインの厳しい批判が紹介されました。「地球工学そのものは詐欺的な提案である」「地球の基本的な生命維持システムをいじくりはじめるより前に、自分たちの行動を変えて、化石燃料の使用を減らすほうがよくないだろうか?」(『地球が燃えている』)。森さやかが無批判的・肯定的に紹介した地球工学(気候工学)について、ナオミ・クラインはきっぱりと、「詐欺的である」と切って捨てている。日・加間の気候変動についての認識の差の反映といえるかもしれません。
少数参加での例会でしたが、だいたい以上のようなことが話題になりました。
◎ 富岡の雑誌『世界』を読む会、1月例会 の予定
●日 時 1月13日(水)
●場 所 吉井町西部コミュニティセンター
吉井町長根174-6
●時 間 午前9時半
●持ち物 雑誌『世界』1月号
○共通テーマ
Ⅰ 特集2 ポスト・トランプの課題
・「ドナルド・トランプの危険な嘘」 村松太郎
・「犬笛政治の果てに」 兼子 歩
・「バイデンは安全な選択ではない」 ナオミ・クライン
Ⅱ 小特集 ツーリズム激変
・「新たなツーリズムの構築へ」 富川盛武
・「観光のパラドクスと地域コミュニティ」 堀川三郎
・「観光の根源とは何か」 山本理顕
です。

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