6月に入り夏の酒に思いを馳せて、前回のブログで蒸留酒に触れた。かつて6月にアメリカを訪ね、バーボンウィスキーやラム酒を飲みまくったことを思い出したからだ。併せて、日本の6月は鬱陶しく、清酒(醸造酒)よりもカラッとした焼酎(蒸留酒)を連想したことにもよる。 しかし思い起こせば、アメリカで一番多く飲んだ酒はビールであったと思う。乾いた空気とのどの渇きを潤すにはビールに勝るものはない。しかもアメリカのビールは、バドワイザーにせよクアーズにせよ、軽くてのど越しによいビールだ。
森下賢一の『美酒佳肴の歳時記』を開くと、「夏の章」はやはりビールに始まっている。かなりのページを割いてビールの起源から各国事情に触れたあと、たくさんの「ビールを題材にした句」が並んでいる。酒の種類名を特定した俳句では、ビールの句が一番多いらしい。なんといっても世界で消費される酒量の内ビールは70%を占めると聞いているので、さもありなんと思う。 この書の「夏の章」はビールに始まり、「焼酎」、「泡盛」、「冷酒(ひやし酒)」と続いている。その中からビールと焼酎の句を、一句ずつ孫引きさせていただく。
夕空に雲の真白きビールかな 日野草城
汗垂れて彼の飲む焼酎豚の肝臓(きも) 石田波郷
「真白き雲」も「汗垂れて」も夏である。酒も、当然のことながら、季節とともにあるのである。