旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

小蔵ながらも多彩な酒を造る「而今」

2009-03-24 17:28:21 | 

 春分の酒として図らずも「而今」を飲むこととなったが、この小さい蔵は、まさに百花咲きにおう春たけなわにふさわしい多彩な酒を造っている。前回書いたように6升の酒を飲んだのであるが、それは純米吟醸と特別純米の無濾過生原酒が主体であったが、使用米がそれぞれ違う。山田錦、雄町、八反錦、五百万石、それに千本錦と多岐にわたる。普通は、特に小さい蔵は山田錦とせいぜい地元の酒米一種類くらいを使用している蔵が多いが、これだけの米を使い、それぞれの味を出しているところが魅力的だ。

 千本錦という米は聞いてはいたが、意識して飲んだことがなく、初めて味わった。広島県が開発した米で、広島県酒造組合の「千本錦のご案内」によれば、父を山田錦、母を「広島県の気候風土に適し、酒米としても評価の高い」“中生新千本”として平成12年に本格生産された酒米ということだ。
 私は、最初に本物の酒に触れたのが広島県であったので(1979年から)、八反、雄町に慣れ親しんできた。広島の水は軟水で、八反や雄町を軟水で醸す柔らかく米の味のする酒が好きであった。千本錦は父を山田錦とするが「広島県の気候風土に適し」というように、八反などに近いと思った。
 「而今」の蔵も水は軟水であるので、広島系の雄町、八反錦や千本錦を使ったのだろう。赤目温泉の「隠れ湯 対泉閣」の、山菜なども豊富な多彩な料理にそれぞれがマッチして美味しかった。

 ところで、10人で6升飲んだ背景には、若干の裏話がある。われらツアーのリーダーであるF社のN社長は、前述する赤目温泉対泉閣での宴会用の酒の手当てを、而今の大西専務に依頼した。それを受けて大西専務から、「承知した。量は一人あたり4合ぐらいででいいか」という返事がきたが、それに対してN社長の答がすごい。
 「馬鹿野郎、4合なんかで足りるか! 俺たちをなんと思っている!」
というものであった。大西専務とN社長は何十年の知己である。それにしても、その言い草はあんまりではないか、・・・というのが同行9名の心情であった。ところが結果は、見事にN社長の言うとおりで、翌朝、空いた一升瓶の列を前に改めてN社長の慧眼に対し、頭を下げたのであった。

 それにしても、少々やりすぎではなかったか?
 翌朝の散歩で、赤目四十八瀧の冷気に触れながら、反省だけはしたのであるが・・・。
                             

  「而今」を造る木屋正酒造



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