二日目の尾瀬本番、燧裏林道のことは既に書いた(20日付本稿)。私は予定を越えて(というより、私の行程表の読み違いより)、2時間のところを3時間歩いて「段吉新道分岐点(尾瀬ヶ原と三条の滝への分岐点)」まで歩き、そこで一休みしてその3時間を引き返した。
その片道行程は約6キロらしいので、「2キロを1時間かけて歩く」、つまり平地の二倍の時間を要することになる。もっと言えば、尾瀬というのは決して平地ではないのである。
田代と呼ばれる湿原は確かに平地であるが、それはほんの一部で、次々と現れる田代をつなぐ道は、私にとってはかなりの山道であった。もっと言えば、尾瀬に行くにはひと山越えなければ入れないのだ。よく写真に見る「平坦な湿原を走る木道」は、ひと山越えたり下ったりしなければ現れない。バスを降りたら木道が続いているのではない。そして、だからこそ尾瀬は俗世界から守られてきたのだ、ということを初めて実感した。
吊り橋から見る紅黄葉の織りなす景観は素晴らしかった
私は一行が目指した三条の滝と平滑の滝を見ることはできなかったが、初めて見る尾瀬の紅葉を満喫した。曇りで時折小雨のぱらつく天候であったので、実は景色についてはあきらめていたが、とんでもない! 紅より黄の多い葉々はしっぽりと小雨に濡れて、息をのむ美しさを湛えていた。苦労して「ひと山越えた者」が初めて見ることのできるものだと思った。
11時半、疲れた足を引きずりながら御池ロッジに帰着。12,3キロ、6時間の行程は予定を越えるものであったが、何とか歩き終えたことに自分としては満足した。特に義兄には迷惑をかけたが、「行ってみなければ絶対にわからない」旅の醍醐味を、また一つ味わった。
「草紅葉(くさもみじ)」も初めて見た。姫田代にて