焼きが回る、という言葉がある。広辞苑を引くと次のように出る。
①刀の刃などを焼くとき、火が行きわたりすぎてかえって切れ味が悪くなる
②年をとったりして能力が落ちる
なぜこのような言葉を調べることになったかと言えば、その意味を痛切に感じる事態が発生したことによる。実は、年甲斐もなく未だ弟の会社の顧問などを務め、週1回、数時間ではあるがご出勤遊ばしておるが、去る9日の火曜日、折しも開かれた役員会に臨んでいると急に気分が悪くなり、失神してひっくり返ったのである。
あわてた弟が、5年前の再来(軽い脳梗塞)と救急車で赤羽橋の済生会中央病院に担ぎ込んでくれた。5年前は会議を終えて昼食中の事であったが、右手足のまひなど自覚症状があり、その通り左の脳に血溜の痕跡も発見された。ところが今回はその様な症状はなく、20~30秒間の記憶喪失はあったが脳梗塞症状とは明らかに違う。以降、心臓を中心にいろいろと検査をしたが確たる原因が分からないままに昨日退院した。
唯一医師が引っ掛かったのが、脈拍数が1分間に50から60と遅く(一般の人は60以上とのこと)、脳梗塞防止のために飲んでいるシベノール(不整脈を調整するため)に原因するのではないかという点だ。しばらくこの服用をやめて経過を診ることとなった。
再び救急入院ということで急遽駆けつけてくれた妻と子供たちに、力なく吐いた言葉が、「ついに焼きが回ったよ」という言葉だったのである。従来もこの言葉を使ったことは何度もあったが、今回は我ながら真実味があったので、広辞苑まで開いて真意を確かめることにしたのだ。
それにしても広辞苑の通りだ。これまで80年におよび、少しでも成長したいなどと野望を抱いて能書きを重ねながら生きてきたが、ついにその無能な能書きが「行きわたり過ぎて切れ味が悪くなる」どころか、「加齢によりすべての能力が落ちてきた」のだ。
広辞苑の続く行には「焼きを入れる」という言葉の説明があり、「刺激を与えてたるんでいるのをしゃんとさせる」という説明があるが、今更焼きを入れても間に合わないであろう。つまり年貢の納め時が近づいてきたのでああろう。
ところで、人生の年貢って、何処の誰にどのように収めるのだろうか? この勉強に少し時間がかかるかもしれない。
いよいよ「焼きが回る」のと違いますかねえ?
Jご本人はもちろんのこと、ご家族もどんなにかご心配されたことでしょう。
具合が悪くなられたのが会社の皆さんのいる場であったことは不幸中の幸い。Jはかなりついていらっしゃったのだと思います。
確たる原因がわからぬままの退院は気掛かりもお有りでしょうが、しばらくは経過観察とのこと、まずはお家へ帰れたこと。日常生活ができることを喜ぶことといたしましょう。
どうぞお大事になさってください。さらなるご回復をお祈りしております。
暖かい春本番を迎えたころには、年末に延期となった同窓会でお会いできることを楽しみにしております。