旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

映画「赤い靴」--数十年ぶりに見た名作!

2007-08-26 12:23:09 | 文化(音楽、絵画、映画)

 

 猛暑を逃れ、冷房の部屋でゴロゴロしながらテレビを追っていると、偶然にも「赤い靴」を見ることが出来た。最初に見たのは戦後の昭和20年代であったと思う。断片的に印象的なシーンが脳裏に残っていたが、10代の子供には、その意味する深奥はわからなかった。
 今度見て、「これほどまでの名作であったのか・・・」と今更ながら驚嘆した。アンデルセンの童話に題材をとるこの映画は、原作、脚本、監督、出演者、すべての力が結集されて類まれな芸術作品となったのだ。

 アンデルセンの原作の少女は、赤い靴の魅力に取り付かれるが、同時にその魔力に支配され踊り続けなければならなくなる。ついに疲れ果て、脱げない靴ともども両足を切断することによって「踊り続ける」ことから開放される。
 映画の主人公、若き天才バレリーナも、バレー界にあってプリマドンナを求める限りすべてを捨てて「踊り続け」なければならない。恋と芸術の狭間にたって、彼女が踊り続けることを止めるには死を選ぶしかなかった。
 舞台の開幕直前、意を翻した彼女は劇場の階段を走り降り、折りしも疾風してきた列車に投身する・・・。

 駆け寄った恋人ピアニストに抱きかかえられた彼女は、瀕死の状態の中で自分の足先を指しながら
 「・・・この赤い靴を脱がして・・・」
と頼む。
 このシーンには胸が詰まった。
 彼女は、靴を脱いで踊り続けることを止めたのであるが、同時に命を捨てて、恋を実らせることもなかったのである。それとも、童話の少女が最後に至福につつまれ天国に行ったように、彼女も恋人の腕の中で「恋を成就させた」(芸を捨て愛に生きた)と解すべきか・・・?
                     


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