旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

ゲーテ(1)ーーゆかりの地ヴェツラーを訪ねる

2007-10-14 18:53:03 | 

 

 9月20日のブログに書いたように、今度のヨーロッパの旅はゲーテに始まった。
 フランクフルトに着いた翌朝、まず50キロ北に位置する「恋人ロッテの住む町」ヴェツラーを訪ね、フランクフルトに帰って、その足でゲーテハウスを訪ねた。町の中心レーマー広場を見るより前に・・・。

 ゲーテはフランクフルトに生まれ育ったが、23歳となった1772年、父の希望でヴェツラーの裁判所で裁判事務の見習いをすることになった。そしてそこでシャルロッテ・ブフ(愛称ロッテ)に出会い、一目で恋に落ちる。19歳のロッテは既に婚約者のいる身で、その結末は当然悲劇に終わるが、反面、それが世界的ベストセラー『若きウェルテルの悩み』を生み出したのである。
 ゲーテはヴェツラーという町をあまり好きではなかったらしい。というよりロッテの美しさに全てを奪われ、街の美しさは殆ど目に入らなかったのかもしれない。
 しかし、この街は美しかった。
 ラーン川に架かる古い石の橋、旧市街の石畳の道と木組みの家並み、大聖堂とドーム広場のたたずまい・・・、何か中世がそのまま残っているような感じであった。
 大聖堂から少し坂を上ったところに、かつてのロッテの住処が「ロッテハウス」として残されている。見学者も少なく、それほどきれいに整理されているわけでもなかったが、岩波文庫の『若きウェルテルの悩み』の解説の中に出てくる「ロッテと弟妹たちの挿絵」やロッテやゲーテの「影絵」の原画などが並んでおり、『ウェルテル』を偲ぶには十分なものがあった。

 私は幸か不幸かシャルロッテ・ブフのような女性に出会うこともなかったので、この街の景観とロッテハウスを心置きなく楽しんだ。しかし若きゲーテは、ロッテの魅力をいやというほど描写しつくしている。(続きは次回)
                     

                  


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