旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

セルジュ家のディナー

2007-12-07 14:05:09 | 

 

 一般の海外ツアーで、どうしても味わえないのが地元家庭の生活に触れることだ。手づくり旅行の一番うれしいことは相手の生活の一部に踏み込ませてもらえることである。
 リヨンの友セルジュ君は、「二泊とも我が家の泊まれ」とまで言ってくれた。さすがにそこまでは甘えるこはしなかったが、『フランス家庭のディナー』は楽しませてもらった。彼は事前に、ハム、ソーセージ、肉類で駄目なものは無いかなど、こちらの嗜好までメールで問い合わせてきて気を配ってくれた。それだけに大変楽しいディナーであった。
 先ずセルジュ君が取り出したのは、一メートルはあろうかと思われる太くて長いフランスパン! これを彼が、みんなが見つめる中をスライスして配ってくれる。それをナンシー夫人が心を込めて作ってくれた様々な料理で食べた。中でもソーセージが美味しく、ワイフはその銘柄を記憶した上、翌日観光した旧市街の街角で見つけ、一本購入して日本にまで持ち帰った。
 私にとってうれしかったことは、セルジュ君が思いを込めて選んでくれた白ワインが、ことのほか美味しかったことだ。『SAVOIE MARIGNAN』という2002年ものシャトーワインで、肉類にも負けないしっかりしたボディーを持ちながら、スッキリしたのみ口で、実に美味しかった。
 私が酒好きであることを知っているセルジュ君は、「これは簡単には手に入らないワインだ。もう一本用意してあるので持って帰れ」と奨めてくれたが、軽装バッグしか持っていなかったので割れることを恐れ、手荷物では空港チェックで必ず没収されるのでついに辞退した。
 あのワイだけは、持ち帰らなかったことが未だ悔やまれ、彼が丁寧にはがしてくれたラベルを、今も時々開いて眺めている。

 酒は、その時の料理と係わる人との思い出の中で、いつまでも生き続けるのだ。
                     


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