旅のプラズマ

これまで歩いてきた各地の、思い出深き街、懐かしき人々、心に残る言葉を書き綴る。その地の酒と食と人情に触れながら…。

EUのノーベル平和賞受賞が意味するもの

2012-10-13 14:12:20 | 政治経済

 

 私は、かねてよりEUの成長発展に期待してきた。資本の論理と力の政策に頼るアメリカと距離を置き、多国間の広域経済統合を目指す方向に、資本主義の矛盾を克服する新しい道が見つけられないかと期待してきたからだ。
 もちろんそううまくはいかない。リーマンショックによるアイスランドの例や、ギリシャをはじめとした財政危機など、EUは揺れに揺れている。その状態にたまりかねたように、ノーベル賞委員会は平和賞の授与を決めた。

 20世紀の二つの世界大戦の悲惨さがEUを生み出したと言っていいだろう。欧州紛争の種であったアルザス・ロレーヌ地方の共同管理を決めた1952年の「欧州石炭鉄鋼共同体(CSC)」を発端とし、それが、58年の「欧州経済共同体(EEC)」を経て、67年の「欧州共同体(EC)」に発展。93年のマースリヒト条約で「る欧州連合(EU)」が発足、現在27か国が加盟、5億人を抱える政治・経済連合体として世界の一翼を担っている。

  アルザス・ロレーヌを巡っては、ドイツとフランスは70年間に3度の戦火を交えている。その2国が今、EUの中心になっている。基本方針に一貫して平和を掲げ、軍事独裁体制が続いたギリシャ、スペイン、ポルトガルの新たな加盟にあたっては、「民主主義の導入」を条件とした。
 ノーベル賞委員会は授賞理由の中で次のように述べている。
「欧州の平和と調和、民主義と人権の向上に60年以上にわたって貢献した」
「ドイツとフランスの戦争など、今日では考えられない。歴史的な敵が親密な仲間になった」
                                        (本日付日経新聞一面より)

 しかし同時に、EU内部の問題は前述したとおり厳しい。何とか崩壊しないようにと私などはハラハラして見ているのであるが、ノーベル委員会もその点は同じようで、「EUは現在、経済面での困難と社会不安に直面している」(同前)とあえて指摘して結束を促した。つまり、その結束の励みになるようにと平和賞を与えたというのが真意であろう。

 そもそも、経済的基盤(下部構造)が十分固まりきれないうちに、理念が先行して政治(上部構造)的統合を行ったという感はぬぐえないが、なんとかノーベル賞委員会の期待に応えてもらいたいと願っている。

                                


歌いつがれた日本の心・美しい言葉⑬ ・・・ 『秋の子』 

2012-10-12 15:12:56 | 文化(音楽、絵画、映画)

 

 長い暑い夏がようやく過ぎると急速に秋が深まる。10月に入っても夏日が続いたが、さすがにもう秋である。その深まり行くテンポも早い。この時節にふさわしい歌は『秋の子』であろう。

    すすきの中の子 一、二、の三人
    はぜつりしてる子 三、四、の五人
    どこかで やきぐり やいている
    つばきを のむ子は 何人だろな

    かきの実みてる子 一、二、の三人
    さよならしてる子 三、四、の五人
    ごはんに なるまで おもりする
    おんぶを する子は 何人だろな

    ひぐれに走る子 一、二、の三人
    ふろたきしてる子 三、四、の五人
    こおろぎ あちこち なきだした
    さみしく 聞く子は 何人だろな

 作詞者サトウハチローが、やさしい心を持って子供たちのしぐさを何一つ見逃すことなく書き綴った、という気がする。残念ながらこのような子どもの情景は、今の日本にはほとんどない。ただよってくる焼き栗の匂いにつばきを飲み込む。夕食準備の母を手伝って、小さい子ををおんぶする……。
 今、はじけた実をつけた栗の木を近くに見ることのできる子はどのくらい居るだろう。少子化も加わって、大きい子が小さい子をおんぶしている姿もあまり見かけない。そもそも、入学前の小さい子から高学年までの子までが一緒に遊ぶ姿も少なくなった。
 風呂焚きに至っては皆無といえよう。あれは子供の役で、煙にむせびながら聞くコオロギの鳴き声に、子供心もさみしさを感じるのが秋であった。

 この素敵な詩に曲をつけたのが、あの魚博士で有名な末広恭雄。末広は東大農学部水産科を卒業して農林省技官、東大農学部教授などを経て、水族館油壺マリンパークの館長を勤めた魚博士。昭和天皇にも生物学を講義したという。
 そのような人が、どうしてこんなきれいな曲を作ることができたのか、失礼にも不思議であったが、末広は単に水産学者というだけでなく、弘田龍太郎や山田耕筰に作曲を学んでおり、このほかにもたくさんの曲を残している。また随筆家としても著名で、さすがに一芸に秀でる人は違うのであろう。私はこの曲を残してくれただけでも感謝している。

  
  家の近く、上北沢の栗林にて(8日撮影)


身近なテーマでノーベル賞を受賞した山中教授の快挙

2012-10-10 17:11:20 | 時局雑感

 

 山中伸弥京大教授が「iPS細胞の製作」でノーベル生理学・医学賞を獲得した。題目に「身近なテーマで」と書いたが、もちろん私は iPS細胞の何たるかをこれまで知らなかった。今回の受賞を機にテレビや新聞で報道されたので初めて中身を知った(といってもおぼろげであるが)のであるが、もしこれが実用化されれば難病に苦しむ多くの人に光明を与えるようだ。
 何よりもその実用化を待ち望んでいる人がたくさんいて、テレビでもその声が多方面から寄せられている。私の職場のWさんのご主人も、筋萎縮症的なご病気で先だって亡くなったが、Wさんが昨日職場で、「主人が生きていたら、この受賞をどんなに喜んだかわからない」と話すのを聞いて、 「これこそ世の人々のためのノーベル賞だ」という思いを強くしたのであった。

 テレビに映る山中教授は、イケメン顔の秀才面ではあるが、話す言葉使いからして極めて普通の人で、年も50歳と一般の受賞者に比して若く身近な人に感じる。細胞の名前のIPSのIを i と小文字にしたのも iPADからとった、つまり多くの人に親しまれ使われることを望んだとのことであるが、そこがまた庶民に密着していて素晴らしい。

 日本人で最初に受賞した湯川博士の中間子理論以来、物事を極めていく上で重要な研究ということはわかっても、我々の日常生活にどう関係するのかということになると、どうもピンとこないテーマが多かった。もちろん、それらの研究成果に立って、我々の生活が現段階まで高められてきたのであろうが、凡人には分かりにくいことが多かった。
 それからするとこの iPS細胞は分かり易い。国はつまらないことに金を使わず、可能な限りの資金を投入してこの細胞の実用化に全力を挙げよ、と言いたくなる。
 幸い山中教授は50歳と若い。生きているうちに十分な実用化を実現してくれるのではないか。

        



 


純米酒フェスティバル2012秋

2012-10-08 16:28:40 | 

 

 今年で13年目、東京開催26回目に当たる純米酒フェスティバルを無事終えた。昨日の日曜日は、3連休の中日に当たり、行楽シーズンと重なるうえに他の酒行事とも重なり、午後の部に若干の空席が出たが、2部合わせて約1200名のお客様にはいつも通り大変喜んでもらった。
 私の関係者も、S君をはじめとした三井銀行グループ、義兄を中心にした調布「頂会」の面々、A嬢グループやH夫妻グループ、それに今回はK先輩のお嬢さんが職場の先輩を連れて参加してくれるなどなど、実ににぎやかで席に座っている暇はなかった。

      
    第26回純米酒フェスティバル

 何と言っても出店蔵の酒質が毎年向上するのがうれしい。純米酒を中心にした本物の酒を追求してきて13年、26回、その成果は着実に表れてきていると信じる。情報によれば、国税庁発表の6月末統計で、純米酒が本醸造酒を絶対量で抜いたとのこと。国民の嗜好は、混ざりものではなく本来の日本酒である純米酒の方向に確実に向かっているといえるのであろう。

 加えて、今回の出店蔵の傾向で面白いのは、精米歩合70%や80%という低精米歩合の酒に挑戦している蔵が増えてきたことである。かつては「米の磨き合戦」という感じがあったが、最近はむしろ「米の味を生かす」という方向にあるのではないか? 
 今回出展の38蔵の内、精米歩合70%以上の酒を出品した蔵は8蔵(21%)。加えて長龍酒造は精米歩合68%の「吉野杉の樽酒」という銘柄一種で参加してきたし、「黒帯」の福光屋も、68%1銘柄、65%2銘柄の3銘柄だけの出品であった。この2蔵を加えると10蔵となり、実に26%と3割に近い。
 精米歩合70%以上の酒を出品した蔵の比率は、10年前の2003年秋では50蔵中3蔵(6%)、5年前の2008年秋では45蔵中7蔵(15.5%)であったから、低精米酒追求の傾向は確実に強まっているといえよう。
 酒造技術の向上もあってのことと思われるが、米の味をできるだけそのまま生かした「豊かな味」を追求していると思われ、食べ物との相性など食文化の新たな追求と思われる。加えて使用原材料の関係から低価格の酒が生まれてくれば、まさに「安くて美味しい酒」の誕生となる。
 今後の傾向を見守りたいと思っている。

  Kさんと「秀鳳」のブースで


中谷巌氏が提起する「2周目のグローバリゼーション」について

2012-10-06 14:38:37 | 政治経済

 

 三菱UFJリサーチ&コンサルティング理事長の中谷巌氏が、10月3日付の『daily REPORT』で「“2周目”のグローバリゼーション」と題してスケールの大きい文明史観を提起している。
 それによると…。
 1周目のグローバリゼーションは、コロンブスのアメリカ発見以来、世界文明が西へ西へと「西転」した過程で、「グローバル資本主義の考え方が世界の隅々まで浸透したという意味において、西欧文明の『西転』はコロンブス以来500年を経て、地球を一周分まわり終えたということになるであろう」としている。
 この1周目のグローバリゼーションは人類の物質的生活水準を飛躍的に向上させたが、、西洋による非西洋諸国の収奪(植民地主義、帝国主義など)により成し遂げられたものでもあり、その副作用も大きい。即ち、地球環境破壊、核の開発や原発事故、遺伝子操作などの新たなリスク、富と所得の格差、貧困問題、金融肥大化による世界経済の不安定化、などなど。

 そして、これら副作用に対する深刻な反省なくして「2回目のグロバリゼーション」に突き進むならば、人類の未来は非常に危ういと警告している。そのためには、前述の副作用を克服した新しい文明観、西洋諸国が非西洋諸国を征服・略奪してきた「力と闘争の文明観」の克服、自然を搾取することで経済発展をめざす「成長至上主義」を改めること、などの重要性を提起している。

 そして中谷氏は、日本が江戸時代まで西洋の価値観と一線を画してきたこと、自然を征服すべきものとする西洋の価値観に対し「人は自然によって生かされている」とする自然との共存思想を持ってきたことなどを挙げ、2回目のグローバリゼーションに向かう文明観を形成するうえで日本人の果たすべき役割の大きいことを指摘している。


 このような大きな文明史観を身につけるには、どのような勉強をすればいいのだろうか? つい3日前の「ヘリングパーティ」の記事で、「今の日本はどうなっているんだ」、「もはや日本には住みたくない」など話し合ったことを書いたが、日本人の持つ豊かな文明史観を今一度考え直す必要があるのではないか?


黒田、イチローのヤンキース優勝を称える

2012-10-05 15:44:29 | スポーツ

 

 大リーグのアメリカン・リーグがレギュラーシーズンを終えたようで、最終戦でヤンキースが勝って地区優勝を決めた。私は別にヤンキースのファンではないが、黒田が最終戦で勝利投手となって16勝を挙げ、優勝に貢献したたことを喜ぶ。
 今年の野球に関する私の関心ごとは、広島カープが3位以内に入れないか、阪神の金本の記録更新がどこまで進むか、それと黒田がヤンキースで何勝するか、などであった。イチローについても、もう1回ぐらい200本安打を打つのではないかと、ひそかに期待していたが。
 
 気がついてみれば全て広島カープに始まっている。金本は昔はカープの主軸バッターであったし黒田はカープのエースであった。金のない広島カープ、しかも万年Bクラスの広島カープにあっては、これらの優秀選手を長くつなぎとめることはできない。毎シーズン、泣く泣く優秀選手を他チームにとられるのであるが、ファンとしてはそれぞれの選手が行った先のファンにはならないが、その選手の活躍は追い続ける。

 黒田は確か、広島では最多で15勝しか出来なかったのではないか? それがメジャーリーグで、しかもヤンキースで16勝するというのは、ファンとしては鼻高々である。金本は今年で引退することになったが、打者としては数々の記録を残した。期待し続けている最後の記録は「打点」である。あと1打点で通算打点1522となり、あの長嶋茂雄の歴代7位に並ぶ。2打点あげれば単独7位となる。
 私は毎日、新聞のスポーツ欄の最初ににそのことに目を注ぐのであるが、ついにあと2試合になってしまった。ヒットなら1本の可能性はあるが打点となると絶望的か?

 まあしかし、金本の打撃成績は通算で安打数7位、本塁打数10位、打点数8位とすべて歴代ベストテン入り。これは立派だと思う。
 黒田と金本が広島カープに残っていれば、今年のカープはAクラス入りを果たしていただろうか? ファンとは常にこんなことを考えるものなのだ。


オランダ大使館のハーリング・パーティに参加

2012-10-03 15:50:23 | 時局雑感

 

 10月3日はオランダにとって記念すべき日だ。16世紀中葉、スペインとの80年戦争を戦い抜き、最後の砦として守り抜いたライデン市民が勝利した日である。
 オランダはこの日(1574年10月3日)を誇り高く世界に発信し続け、勝利したライデン市民が飢えを満たした「ハーリング(にしん)」と「ヒュッツポット(野菜のシチュー)」と白パンを各国に送ってその日を祝っている。ここ10年近くこのパーティには参加を続けているが、今年もオランダ大使からの招待状を受けて参加した。

 
 オランダ大使からの招待状 

ハー7リング、ヒュッツポット、白パンとジェネーヴァ

 この史実と歴史的意義については、すでに書き続けてきた (07年4月20日、08年10月4日、010年10月4日など) ので詳述はさけるが、久しぶりに会ったT夫人やF夫人と、ライデン市民のあの壮大な気宇は何処から生まれたのだろうと話し合った。
 つまり、砦を守り抜いてスペイン軍に勝利したご褒美に、向こう何年間かの税金を免除してやるとの国王の提起にライデン市民は「税金は払います。その代りに大学を作ってほしい」と申し出たくだりである。そうして生まれたライデン大学がその後の世界に果たした業績は大きい。日本になじみのシーボルトもライデン大学の教授であった。
 それに比して今の日本はどうなっているのだろうか? というのが一致した意見であった。あのライデン市民の気宇まで行かないとしても、もう少し何とかならないか、と嘆くばかり…。
 T夫人もF夫人も国際色豊かな人。「もう日本には住みたくない!」と言い放つのを 「まあ、そう言わずに…、日本を見捨てないでください」となだめるばかりであった。
 それにしても日本の未来は暗い。このままつぶれてしまうとも思えないのだが…?

     
             
         


祭りの秋

2012-10-01 10:11:14 | 時局雑感

 

 秋は祭り…。収穫を祝い、また末永き五穀豊穣を願う。
 ワイフの実家は二つ隣り駅の桜上水(京王線)、住所でいえば下高井戸であるが、それから浜田山にかけた一帯の鎮守の神“八幡様”の祭りで赤飯を炊いたので食べに来いという。ワイフと連れ立って散歩がてら歩いていく。
 ビールをご馳走になり汗を鎮めて、みんなで八幡様に繰り出す。子供神輿も何台も練り歩いており、神社の境内にはびっくりするほどたくさんの出店、屋台が並んでいた。さっそく焼き鳥とお好み焼きを買い、食べながら境内を歩き回る。そしていつも不思議に思うのだが、そこには祭りのときしか見かけることのないおもちゃや菓子類が並んでいる。

   
       
   祭りに恒例の出店

 これらのお菓子やおもちゃ屋は日ごろは何処で商売しているのかと不思議に思う。しかし寅さんの映画を見ていると、祭りを追って転々としているので、日本中で祭りの絶えるときはないのであろう。そして祭りのときしか買えないからこそ、子供にとっては珍しく、思い出としても長く残るのであろう。

 年に一度の村祭り…、そこには秋の実りとともに様々な喜びや思い出が凝縮しており、人はその喜びをもって次の一年を生きていくのであろう。
 因みにおみくじを引くと大吉で、願望(ねがいごと)の項には「のぞみのままです」と書かれてあった。私も、この願望に支えられて生きていこう。

      


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