狼魔人日記

沖縄在住の沖縄県民の視点で綴る政治、経済、歴史、文化、随想、提言、創作等。 何でも思いついた事を記録する。

NHKに翻弄された証言者の晩年!

2009-12-04 07:00:23 | ★集団自決

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昨日のエントリーで、集団自決の重要証言者の一人金城重栄氏が亡くなったことを書いた。

今年の4月29日(昭和天皇の誕生日)に、渡嘉敷島の集団自決に立ち会った最重要証人・比嘉喜順(旧姓安里)さんが亡くなっている。

「集団自決」の生き残りは老人と子供が多かったため、既に物故した人が多かったり、当時幼かったため後の証言が他人の影響を受け信憑性にかける点が指摘され、それが真相解明の大きな妨げになっている。

更に問題を複雑にしているのは、「集団自決」の関係者が血縁・地縁で何らかの繋がりがありそれが証言者の口を重くしているという点である。

それに年金支給の問題が絡むと、今でも黙して語らないお年寄りが多数いると聞く。

その点、当時渡嘉敷島の巡査であった比嘉さんは信憑性のある証言者としての条件を全て具備していた。

安里(比嘉)巡査は本島から赴任したばかりで渡嘉敷島の血縁社会には無縁の「よそ者」であり、、島の血縁・地縁社会とはつながりの無い新任の警察官だった。 従って安里巡査に地域共同体の呪縛はない。

安里巡査は、親族に「集団自決」のいない証言者であり、赴任当時29歳という年齢的にも、村の指導的立場の警察官という立場からいっても、生存者の中で最も信頼のできる証言者のはずだった。

これだけの証言者としての条件を具備していながら、しかも戦後一貫して沖縄に在住しているのにもかかわらず、地元マスコミで比嘉(安里)さんに取材したものは1人もいないというのも不可解である。

その理由は?

比嘉さんが渡嘉敷島で起きた集団自決の「不都合な真実」を知っていたからである。

重要証言者の死

 

一方の金城重栄さんは、弟重明氏と違って「軍命」を明言していないにもかかわらず、重明氏の兄であるというだけでNHKに何度も引っぱり出されて、晩年を静かに過ごすことを妨げられ、追われるように島を出て那覇の施設で寂しい晩年を過ごした。

比嘉喜順さんが何度も沖縄マスコミに取材するように連絡しても、一度も取材されることなく一生を終えたこととは全く対照的である。

なお「不都合な事実」の証言者としてマスコミに嫌われた比嘉さんの手記は「沖縄県警察史」に安里巡査として記録されている。

緊急!生き残り警察官の証言  パンドラの箱は開

 

金城重栄氏をNHKが無理やり引っ張り出した印象の番組に関する過去記事NHK特番の感想 【重要付記】あり!を、補筆して以下に引用する。

6月22日放映のNHK、「“集団自決”戦後64年の告白~沖縄 渡嘉敷島から」を途中からしか観てなかったので、コメントを避けていたが、知人の録画を見せてもらった。

予想通りとはいえ、過去に何度も登場した金城重栄、重明兄弟の手垢のついた「証言」を繰りかえしただけの陳腐かつ安易なな番組構成にコメンの必要もないと思ったのだが・・・。

保存記録として感想を記しておく。

全編を通じて、昨年年8月29日放映の≪九州沖縄スペシャル“集団自決”~沖縄渡嘉敷島 兄弟の告白~≫の焼き直し番組で、唯一の変化は、兄の重栄氏が認知症になりかけて、現在は一人渡嘉敷を離れて那覇で入院生活を送っていること。

証言の主役は兄・重栄氏であったが、認知症で記憶を失いかけた重栄氏に、NHK担当者が無理やり用意した証言を言わそうとしているという印象であった。

同じ年の2月1日19時30分に放映されたNHK「渡嘉敷島の集団自決」も、金城重栄、重明兄弟が証言者として登場している。

実はNHKが渡嘉敷島の集団自決特集の為取材を始めた頃、渡嘉敷出身の知人から次のような連絡が入っていた。

<NHK取材班は渡嘉敷島在住でで軍命があったと証言するのは、金城重栄氏と吉川嘉勝氏と数人の取り巻きしかいないが、また金城兄弟ではないだろうね>と。

予想は的中し、重栄氏が口にしていない文言も、ナレーションで勝手に「補作」していたし、戦陣訓の文章を画面にアップで映して「生きて虜囚の云々」の部分に光を当てて、アナウンサーが朗読し「これが重栄さんにとっての軍命だった」とナレーションを入れていたが、吉川嘉勝氏は何故か登場しなかった。

何のことはない。 これでは認知症の老人をNHKスタッフが取り囲んで予定した証言を言わそうとしているのが画面からミエミエではないか。 

それも上手くいかないので、戦陣訓の文言を画面に映し、「これが彼にとっての軍命だった」とは、NHKもとんだ猿芝居演出したものだ。

 

参考までに昨年6月放映ののNHK番組を見た感想引用するとこうなっている。

<同番組を見た感想ですが、特に目新しい証言はなかったが、

次の2点は、既知の事実とはいえ、天下のNHKが放映したということで重要な意味を持つ。

①父親殺害の告白

これまで金城重明氏は「親兄弟」という表現で母親と弟、妹を殺害したことは繰り返し告白してきたが、父親のことは逃避行中はぐれてしまい、どこかで不明死したと述べていた。

それが雑誌『WILL』増刊号でジャーナリストの鴨野守氏が、父親も殺害した事実をレポートしたため、隠せないと思ったのか今回の番組では父親殺しもカミングアウトした。

数ある集団自決の証言では、一家の主が年寄りや女子供を殺害したという例はあるが、壮年の父親をその子供が殺害したという例は未だないし、少なくとも筆者は知らない。

金城兄弟が、「親兄弟を手にかけた」といいながら、長いこと「父親殺し」を隠していた理由は一体なんだったのか。

勿論、番組ではこれには触れていない。

更に兄弟は、自分の親弟妹だけではなく、他の村人も数多く殺害している。

②金城重明氏は島で毎年行われる戦没者慰霊祭には一度も参加したことはなく、
島に住む兄の重栄氏は慰霊祭の日を避けて一人でそっと参拝していた

これも知る人ぞ知る事実ではあったが、今回NHKが本人たちに取材した結果、確実な情報となった。

この事実から、二人が渡嘉敷島では村八分状態であることがわかる。

遺族としては、敵である米軍の攻撃で死んだのなら諦めもつくが、同じ村の兄弟に自分の肉親が殺害され、しかも加害者が揃って生きている事実には耐えられないのであろう。

村人の突き刺さるような怨嗟の視線を背に受けると、金城兄弟としては、何が何でも「軍の命令だった」と言い続けなければ、戦後生きてはおれなかったのだろう。

すくなくとも、6人家族のうち、兄弟二人で、残りの四人を皆殺しにしたのなら、計算上は四人分の「援護金」が遺族である兄弟二人に支給されていることになる。(未確認)

自分の手で殺害した父母弟妹の「遺族援護金」を金城兄弟が受けているとしたら・・・・・・・・、

どんなことがあっても、軍に責任転嫁しなければ生きてはいけなかったのだ。

 
                    ◇
 
金城兄弟の「軍命あり論」は裁判でも否定されているので、ここでは詳しく述べないが、その破綻した「軍命あり論」を繰り返し放映しなければならないほど、軍命あり論派は追い詰められてきたのかと感じるような中身の無い番組だった・・・これが番組を見ての偽らざる感想である。
 
【付記】
 
渡嘉敷出身の知人から「NHK特番」を観た感想をいただきましたので、紹介します。
 
数少ない「軍命あり派」のなかでも出たがり屋といわれる元教師の吉川嘉勝氏が画面に出なかったのが不思議なようです。
 
やはり、早い時期に現地聞き取り調査をした星雅彦氏の告発が影響したのであろうか。
 
太字強調は引用者。
 
兄弟の周りにいる殺された人たちの親族、あるいは殺されかけた人たちが、あえて口からださなかったこと「惻隠の情」を加害者の側が無視して、呪縛から逃避し自己を正当化するためマスコミに登場(利用)したことは、地域においては受け入れられないと思います。
那覇で暮らす弟の方は創り上げた環境の中で生活できるからまだ良い方で、
島で暮らす兄の方は自己主張すればするほど、地域の人たちから離れていくことになると思います。

NHKはかなり前から2週間に1度程度は来島していたようですが、何をしていたのでしょうか?
あれだけ力を入れてあの程度の内容では、逆に驚きです。証言で登場した方達もでたがりで理由ありの人だけで、「あの人だったら言うだろう」と思います。
それにしても、吉川弟が画面に出なかったこと、あれだけの取材で彼らに都合の良い新しい証言が一つとして無かったことは、やはり命令なんて聞いた人はいなかったことの究極の
証明だと思います。


 

 

沖縄戦「集団自決」の謎と真実
秦 郁彦
PHP研究所

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