今、有田芳生著「私の家は山の向こう」という本を読んでいる。
この本は、台湾人の歌手、テレサテンが亡くなるまでを追った
人物ノンフィクションである。
筆者は確か、先の参院選に出馬した方でもある。当選したのか、
落選したのかは知らないが、時々テレビ番組でコメンテーター
としても見かける方でもある。
私は、全くテレサテンのファンではない。「つぐない」「愛人」「時の流れに
身をまかせ」などのヒット曲を知っている程度である。
それとずっと昔に週刊誌で、テレサテンはスパイだとか、偽造パスポートで
来日して強制送還になったとか、なんやら胡散臭い記事を覚えている
程度であった。
アジアの歌姫と呼ばれた彼女は、1970年代後半から国際的に孤立を
深めていた台湾政府に政治的に利用されたり、天安門事件に関わったり
時代に翻弄された歌手でもあった。
そんな彼女は1995年、タイのチェンマイで喘息発作のため突然亡くなる。
彼女は毎日、夕方5時頃になると宿泊していたホテルの前にある大衆食堂
で1杯30バーツ(120円)の鶏肉入りのそばを食べていたという。
中国人でありながら生涯、大陸中国で歌うことが出来ぬまま亡くなって
しまったことは、さぞ無念であっただろう。
とても幸せとは言えなかったような人生であったが、彼女の唄だけは
これからもずっと、アジアの人々に歌われ続けていくことであろう。