問6を解いてみましょう。
事例問題です。
条文の知識で解くのではなく、それを事例に当てはめて結論を出させるものです。
法学部の授業ならともかく、宅建試験の学習でこのような訓練はしていません。
では、解けないかというと、それもそうではないので、数は少ないのですが、こういう過去問で訓練しておくしかないでしょう。
そういう意味でも、この問題は貴重なものです。深掘りしておきましょう。
・・・・・・
問6 AとBとの間で令和2年7月1日に締結された売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、売買契約締結後、AがBに対し、錯誤による取消しができるものはどれか。
1 Aは、自己所有の自動車を100万円で売却するつもりであったが、重大な過失によりBに対し「10万円で売却する」と言ってしまい、Bが過失なく「Aは本当に10万円で売るつもりだ」と信じて購入を申し込み、AB間に売買契約が成立した場合
2 Aは、自己所有の時価100万円の壺を10万円程度であると思い込み、Bに対し「手元にお金がないので、10万円で売却したい」と言ったところ、BはAの言葉を信じ「それなら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
3 Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
4 Aは、自己所有の腕時計を100万円で外国人Bに売却する際、当日の正しい為替レート(1ドル100円)を重大な過失により1ドル125円で計算して「8,000ドルで売却する」と言ってしまい、Aの錯誤について過失なく知らなかったBが「8,000ドルなら買いたい」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
・・・・・・
まずは、要領よく考えましょう。
「AがBに対し、錯誤による取消しができる」かどうかですから、AをBより保護したいか、ですね。
肢1はどうでしょう。そうみると、Aは負け、Bは勝ちでしょう。取消しできませんね。
Aには重大な過失があり、BはAの錯誤について善意無過失であるからです。
肢2ですが、どうでしょうか。
法律的に分析しようとしないで、要は、Aは「手元にお金がないので、10万円で売却したい」と言っていること、Bは「Aの言葉を信じていること」から、これもB保護で、取消しできませんね。
これを法律的に説明すると、なんとなく難しくなります。
つまり、表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤(動機の錯誤といいます)に基づく意思表示を取り消すためには、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていることを要するというわけです。あー、難しい。
すなわち、Aは、Bに対し「手元にお金がない」と言っているのみであって、法律行為の基礎とした事情(時価100万円の壷を10万程度と誤信したこと)については、相手方に表示されていないのです。
どうですか、こういう事例問題では、むしろその場でABのどちらを助けたいか、そのためにはどういう事情を読み取るべきかを考えた方がよくはありませんか。
肢3は取消しできて、これが正解です。
Aは「贋作であるので、10万円で売却する」と言っています。Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」といっています。
肢2とは違いますね。ABどちらを保護したいですか。
これも法律的にかっこを付けて説明すると、
表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤(動機の錯誤)に基づく意思表示を取り消すためには、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていることを要する、のでしたが、Aは、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と動機を表示しているとみるのです。
また、100万円の価値がある絵画を10万円の贋作とする錯誤は、法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものと評価できますね。
したがって、錯誤による取消しができるのです。
肢4ですが、これもAは重大な過失がある場合で、Bは善意無過失であるので、Bを保護したいですね。
ですから、Aは錯誤による取消しができません。
どうでしょうか。この問題をどのように攻めていくのか、じっくり考えておきましょうね。
これならできるというテクニックを見つけるのも、過去問研究なんですよ。
では、また。
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事例問題です。
条文の知識で解くのではなく、それを事例に当てはめて結論を出させるものです。
法学部の授業ならともかく、宅建試験の学習でこのような訓練はしていません。
では、解けないかというと、それもそうではないので、数は少ないのですが、こういう過去問で訓練しておくしかないでしょう。
そういう意味でも、この問題は貴重なものです。深掘りしておきましょう。
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問6 AとBとの間で令和2年7月1日に締結された売買契約に関する次の記述のうち、民法の規定によれば、売買契約締結後、AがBに対し、錯誤による取消しができるものはどれか。
1 Aは、自己所有の自動車を100万円で売却するつもりであったが、重大な過失によりBに対し「10万円で売却する」と言ってしまい、Bが過失なく「Aは本当に10万円で売るつもりだ」と信じて購入を申し込み、AB間に売買契約が成立した場合
2 Aは、自己所有の時価100万円の壺を10万円程度であると思い込み、Bに対し「手元にお金がないので、10万円で売却したい」と言ったところ、BはAの言葉を信じ「それなら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
3 Aは、自己所有の時価100万円の名匠の絵画を贋作だと思い込み、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と言ったところ、Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
4 Aは、自己所有の腕時計を100万円で外国人Bに売却する際、当日の正しい為替レート(1ドル100円)を重大な過失により1ドル125円で計算して「8,000ドルで売却する」と言ってしまい、Aの錯誤について過失なく知らなかったBが「8,000ドルなら買いたい」と言って、AB間に売買契約が成立した場合
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まずは、要領よく考えましょう。
「AがBに対し、錯誤による取消しができる」かどうかですから、AをBより保護したいか、ですね。
肢1はどうでしょう。そうみると、Aは負け、Bは勝ちでしょう。取消しできませんね。
Aには重大な過失があり、BはAの錯誤について善意無過失であるからです。
肢2ですが、どうでしょうか。
法律的に分析しようとしないで、要は、Aは「手元にお金がないので、10万円で売却したい」と言っていること、Bは「Aの言葉を信じていること」から、これもB保護で、取消しできませんね。
これを法律的に説明すると、なんとなく難しくなります。
つまり、表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤(動機の錯誤といいます)に基づく意思表示を取り消すためには、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていることを要するというわけです。あー、難しい。
すなわち、Aは、Bに対し「手元にお金がない」と言っているのみであって、法律行為の基礎とした事情(時価100万円の壷を10万程度と誤信したこと)については、相手方に表示されていないのです。
どうですか、こういう事例問題では、むしろその場でABのどちらを助けたいか、そのためにはどういう事情を読み取るべきかを考えた方がよくはありませんか。
肢3は取消しできて、これが正解です。
Aは「贋作であるので、10万円で売却する」と言っています。Bも同様に贋作だと思い込み「贋作なら10万円で購入する」といっています。
肢2とは違いますね。ABどちらを保護したいですか。
これも法律的にかっこを付けて説明すると、
表意者が法律行為の基礎とした事情についてのその認識が真実に反する錯誤(動機の錯誤)に基づく意思表示を取り消すためには、その事情が法律行為の基礎とされていることが表示されていることを要する、のでしたが、Aは、Bに対し「贋作であるので、10万円で売却する」と動機を表示しているとみるのです。
また、100万円の価値がある絵画を10万円の贋作とする錯誤は、法律行為の目的及び取引上の社会通念に照らして重要なものと評価できますね。
したがって、錯誤による取消しができるのです。
肢4ですが、これもAは重大な過失がある場合で、Bは善意無過失であるので、Bを保護したいですね。
ですから、Aは錯誤による取消しができません。
どうでしょうか。この問題をどのように攻めていくのか、じっくり考えておきましょうね。
これならできるというテクニックを見つけるのも、過去問研究なんですよ。
では、また。
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