ちゃ~すが・タマ(冷や汗日記)

冷や汗かきかきの挨拶などを順次掲載

榊原洋一『子どもの脳の発達 臨界期・敏感期-早期教育で知能は大きく伸びるのか?』(講談社+α新書)

2009年08月04日 11時16分22秒 | 
榊原洋一『子どもの脳の発達 臨界期・敏感期-早期教育で知能は大きく伸びるのか?』(講談社+α新書)に目を通した。
最近の脳科学の話かと思ったら、そうでもない。早期教育の脳科学的根拠とされる考え方を批判的に考察し、「臨界期」「敏感期」についてその意味を考察したものである。まずは井深大の幼児教育論の流行を検討し、次に「臨界期」の概念の登場を、ローレンツ、ヒューベル、ハッテンロッカー、グリーノウ、レネバーグ、クラウスの論に即して紹介している。ちなみにそれぞれの業績の特徴は以下のようなもの。
ローレンツ(インプリンティングの発見)
ヒューベル(猫の視覚遮断実験)
ハッテンロッカー(シナプスの数を数えた)
グリーノウ(ラットのニューロン樹状突起の枝分かれの環境による相違)
レネバーグ(言語獲得の臨界期)
クラウス(新生児愛着理論)
その上で、臨界期の問題を検討し、その結果を一般化や人間への適用を戒めている。同時に、早期教育の有効性と弊害の可能性を述べている。構成は次の通り。

はじめに
第1章 早期教育はなぜはやるのか
第2章 臨界期の登場
第3章 臨界期神話にメスを入れる
第4章 早期教育の有効性と弊害の可能性
脳の発達と早期教育-あとがきに代えて

オオカミに育てられたアマラとカマラについても取り上げている。榊原もこのアマラとカマラの発見については疑っている。榊原の説は、虐待や放棄の可能性であり、極端なネグレクトによって言語や知的発達の障害を起こしたものと考えているようである(pp.99-104)。