鏑木蓮『エンドロール』を読んだ。もともとは、『知らない町』というタイトルで、東日本大震災の直前に出された本のようだ。後半部分の「廃村」を探す場面やその手助けをする文化財修復を学ぶ学生さんの情景が、東日本大震災後の東北の課題と関わってくるのは、偶然か。
発端は、「孤独死」から。その老人の人生の片付けに居合わせ、そのにあった、古い映画雑誌とノートと八ミリフィルムを手にする映画の製作をめざす主人公。遺品や本の整理、そしてフィルムのデジタル化に関わっているので、自分の仕事と重なってしまう。そのような興味で読み進められたが、戦争の時期の回転魚雷のような特攻作戦で死んだ戦友のこととなる。いまでいうと、九十歳を越える人たちの体験を核としていることとなる。そういう意味では、なかなか今の人たちが実感をもつって読み進めるのは難しいのかも知れない。
このような小説みたいな仕事をしている自分を実感した。そんなうまくはいかないのだが。