アーリーン・ハーシュフェルダー著、2000(日本語版2002年BL出版)
北アメリカ大陸の先住民、いわゆるアメリカインディアンの、アメリカ大陸へのヨーロッパ人到来以降を中心とした迫害と抵抗そしてUSAへの同化の歴史の真実を記録した書である。
“人種のるつぼ”USAでは現在、コロンブス後のヨーロッパ移民が最多数を占め、以下20%近くになんなんとするヒスパニック系、10数%のアフリカ系黒人、アジア系移民と続き、ネイティブアメリカンは今や構成員数ではマイノリティに追いやられてしまった。
よく知られているようにアメリカ先住民の遠い祖先はモンゴリアンで日本人とも同系である。彼らは10万年近く前にカムチャッカからアラスカを経由してアメリカ大陸に渡ってきたとされている。
それからの永い永い年月に思いを馳せれば、彼らにも欧州や、中国、日本にも勝るとも劣らない独自の文化的歴史と遺産があるはずなのだが、そのほとんどがたかだか200年あまりの白人を中心としたUSA建国の歴史の中で葬り去られてしまったのである。
黒人、アジア人も迫害はされたが彼らにはまだそのルーツとしての母国と文化は残されている。しかし、ネイティブアメリカンはそのルーツと母国(国土)さえも奪われてしまったのだ。そうした意味でヨーロッパ系移民たちの人類史的犯罪行為の責任は重い。
日本人もアイヌ民族や琉球人に対して同じことをしてきた。国力的にありえないが、万万が一あの戦争に勝利していれば東アジアは日本人によってUSAならぬUSJ(ん?、どっかで聞いたような)と化していただろう。
逆に、負けてアメリカに洗脳された日本人はソ連を否定するが、もしソ連の参戦が無かったならば今頃日本人はネイティブアメリカンの一部族となっていたに違いない。
私は、頼れるものは自分だけという、そのフロンティアスピリットの故に西部開拓史と、真偽はさておき時代の空気を物語化した西部劇(ウェスタン)が大好きである。
しかしそれらが、こと先住民(ネイティブアメリカン)に関しては全く真実を伝えていないし、彼らの豊かな文化と人間性を完全に否定し、野蛮人としてのいびつなイメージを世界に広げる役割りしか果たしてこなかったことも重々承知している。
しかしだからこそウェスタンを愛する者は、エンターテイメントとして楽しむ部分とは区別して歴史の真実にしっかりと目を向けなければならないと思っている。本書はそのための現在入手できる最良の書であることは間違いない。
ヨーロッパ人到来以前の北アメリカ
ヨーロッパ勢力の浸出
西部をめぐる戦い
ネイティブアメリカンの暮らしの一端
平原居住先住民の主な糧はバッファローとトウモロコシ。白人はそれを奪った。
サンドクリークの虐殺(1864年11月)以後の抵抗の戦い。
右上の銃はスプリングフィールド銃(単発だが強力)、拳銃は初の回転レボルバー式連発銃レミントン44口径。ともに当時の政府軍の正式銃だった。その後、西部劇の定番、1873年より製造されたより高性能の連発式ウィンチェスターライフル、コルトSAA45口径(通称ピースメーカー)の時代となる。
その後各地で先住民の抵抗の戦いが続く(南西部を勢力圏としていたアパッチのレジスタンス。ジェロニモは有名。)が、武力に勝りしばしば土地分割使用契約を反故にする白人・政府軍に追い詰められ、ついに「ウィンデッドニーの大虐殺(1890)」を最後にネイティブアメリカンの抵抗の歴史は力尽きた。
バッファロー・ビル・コーディーのウェスタンショー。西部劇以前からネイティブアメリカンの歪んだイメージを作り上げ広めた。
クリント・イーストウッドの自作自演作品に、そんなバッファロー・ビルを“パロった”「ブロンコ・ビリー」というコメディ作品がある。
銃による殺人を実行する生身の人間の実際の感情を扱った西部劇「許されざる者」、慕情を誘う「マジソン郡の橋」、太平洋戦争を日米双方の視点から見た「硫黄島からの手紙」、職人魂「グラン・トリノ」、イーストウッドはタカ派のように言われているが様々な分野で存外、真面目でシリアスに問題と向き合う映画人だ。
USAに強制同化させられながらもなんとか独自文化を伝承しようとの努力も続けられている。