WESTWOOD -手作りビンボー暮らし-

持続可能な社会とは、必要なものはできる限り自分(達)で作る社会のことだ。衣食住なんでも自分で作れる人が偉いのだ。

ちょっと見直したNHK -林業復興2題-

2009年02月07日 | 環境・エコ・共生・持続・温暖化とか・・

 NHKでこの一週間に林業の現状と復興模索を扱った番組が2題続いた。一つは「プロフェッショナル」という番組で、①京都旧日吉町(現南丹市)森林組合の技術者Yさんを中心とした取り組み、もう一つは②大阪の老林業家Oさん(80歳)の取り組みであった。
 どちらも低価格外材に押されて苦境に立つ日本林業の中で、創意工夫で注目されており、そこから林業再生の方向のヒントを模索しようという内容であった。最近の民放番組は、下請け製作見え見えのくだらない録画バラエティー番組ばかりで、他人事ながら民放局の先行きが心配になるのに比べて、最近のNHKは不祥事の反省からか、「クローズアップ現代」はじめ見るべきものも多くはなってきている。楠井さんも頑張ってるし、ボツボツ受信料払ってやってもいいかな?(おっと口が滑ってしまった)。

 ①は全国放送でNHK本局の製作、②は関西特集でたぶん大阪地方局の製作で、放送時期や番組内容から両者はおそらく相互の連絡調整なく製作されたように思われる。しかし、期せずして両者の主張と実践には共通点があった。それは、「いかにして長持ちする林道を作るか」ということであった。

 Yさん、Oさん両者とも日本林業再生のために必要なことはいろいろあるが、最も重要なことは「長持ちする林道をつくること」「長持ちする林道を作るにはコース選びが肝要で、崩落の可能性が高い危険箇所を見抜き避けてコース取りする技術が大切」と言っていた。
 お二人が話されていた、危険箇所としての地下水脈や過去の崩落跡などをその場所の植生によって見極める技術などは大変参考になった。

 私も、マツタケ山作りやログ材の伐採搬出を体験して同じことを感じていた。明るく生き生きとしたマツタケ山を作るには、ザイセンチュウにやられた枯損松や林を暗くしている雑木、腐植層の除去が必要だが、最大の難題は除間伐や地掻きよりもむしろ出た除間伐材・腐植の森からの搬出なのであった。
 山間傾斜地の多い日本林業のネックが、木材の搬出コストにあることもすでに多くから指摘されているところだ。

 担い手が減少一途の山作り、林業では省力化、機械化、低コスト効率化が求められるのは、ある程度やむをえない部分もあるだろう。そこでまず求められるのは林道の整備であるが、せっかく作った林道が大雨などで崩れてその補修に多くの手間とコストがかかっているのが日本林業の大きな問題点である、というのが両者の共通認識であった。      
 そういえば、以前、海外(中国か東南アジアだったような?)の大規模林業の問題点として、皆伐したあと放置された林道が荒れて、結局山の再生もできなくなってしまっている問題が指摘されていた。

 老Oさんは山を愛する林業家として、近年のプロセッサーなどの大型機械導入や列状間伐など効率化のみを追い求めるやり方には疑問を呈しておられた。番組では重機械化をすすめている熊本の森林組合の「採算性のためには効率化を追求せざるを得ない」との声も紹介されていたが。

 ところで、日本林業再生のために「道作り」以上にもっと根本的な問題点としてYさんが指摘され、ご自身の森林組合で実践され成果を上げておられる重大施策がある。それは「現場林業労働者の正職員化」である。

 旧来より、そして現在も大半の林業現場労働は、一時雇いの出来高払いで、作業の支持は現場実務経験に乏しい森林組合職員(中には事務方の人が)が行っていている。熟練と特殊な技術を必要とするわりに能率の悪いワイヤーと滑車を使った旧式な搬出方法などがいまだに幅を利かせているらしい。傾斜その他の木材生産用地としての適不適の評価と山の実勢に応じた整備方法の立案・実施が十分行われていない、といった問題点も指摘されていた。
 その大きな要因は、今大きな問題になっている派遣業務と変わらない「林業労働者の一時雇い」にあるという指摘だ。不安定な雇用では士気も上がらず、もっとも現場経験をつんでいる現場労働者の声が業務に反映されず改善もない。
 Yさんの森林組合では、現場労働者を正職員化することで生活の安定と仕事への誇りを生み出し、現場の創意工夫で林業自体も活性化し成果を挙げておられ、全国から注目され各地へ改善指導に招かれたりもされているという。