YouTube動画を見流していたら「バナナの保存法」に行き当たりました。それがどうも納得がいかんので自分でも実験をしてみました。
バナナからは熟成を促す植物ホルモン=エチレンガスが出ているので、ラップで包んで保存すると熟成を遅らせて長く保存できるのだといっています。投稿者は実験をしているのですが、実験の内容は、
バナナを2グループに分け、一方は①ラップで包んで冷蔵庫の野菜室に保存。もう一方は②何も処置をせず室温に置く。
1週間ほどして比べると、②は例のソバカスだらけのバナナになっているのに対し、①はほとんど変化がなかった。
で結論、「バナナを長く保存するにはラップで包んで保存すればよい」というのです。
なんかおかしいと思いませんか?
すでにお気づきの方もおられると思いますがそう、保存条件の設定が不適当なのです。
上の実験では「ラップで包むか包まないか」以外の温度条件の比較が考慮されていません。①は冷蔵庫、②は室温放置。つまり、①の方が長持ちしたのは「ラップで包んだため」なのか「冷蔵庫に保存したため」なのかを判定できないのです。
そこで「ラップ」と「温度」両方の条件を比較できる実験を行ってみました。
すなわち、「ラップで包んだもの」と「ラップで包んでいないもの」の2種類2組を、1組は「冷蔵庫保存」、もう1組は「室温放置」。もちろん、各組の「ラップで包んでないもの(エチレン放出?)」が「ラップで包んだもの」に影響を与えないよう、それぞれのバナナは1本づつポリ袋に入れて密封しています。1週間後の結果が次の画像。
左のソバカスの2本は「室温放置」したもの。右のツルっとした2本は「冷蔵庫の野菜室保存」したもの。
この結果から推測できることは、永く保存するには「温度条件(低温保存)の方が重要」で、「ラップで包むか包まないかはあまり関係なさそう」ということがお分かりいただけると思います。
で、もう一度YouTube動画にあたってみると、出るわ出るわ、圧倒的に「バナナの(長期)保存にはラップで包むのが良い」「袋に入れるとよい」としているものがほとんど。で、温度についてはバラバラ。どちらかというとやはり「冷蔵庫(低温)保存」としているものは多いが、そもそも温度条件に付いての実験、考察はまず行われておりません。
この実態から推測されることは、どうやら「バナナはヘタの部分からエチレンガスを出すので、それをラップなどで防いでやれば長期保存できる」という「都市神話」が存在しているらしいということです。
ここからは個人的な推量、考察、仮説です。
「野菜や果物の熟成は植物ホルモン=エチレンガスによって促進される」というのは、科学的には証明されている事実でしょう。しかしその放出量や感受性は植物によって差があるでしょうし、バナナの場合はエチレン放出量は少なく感受性も小さい。むしろバナナの熟成に対する感受性は温度条件によるところが大きいらしい。たしか「リンゴはエチレン放出量が多く、エチレン感受性の高いものをリンゴと一緒に保存すると熟成が促進される」ということを聞いたことがあります。
そうした注意を払って見直してみると、このようないつの間にか染み込んだ「都市神話?」による流言のなんと多いことか。血液型占いなどその代表的なものでしょう。