●斜面
信濃毎日 8月19日(木)
竹原信一市長の特異な言動で揺れる鹿児島県北西部の阿久根市。問題が新しい局面に入った。リコールを目指す市民団体が署名集めを始めた。有権者数の3分の1以上集まれば住民投票が行われ、過半数の賛成で市長は失職する
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発端はブログでの発言だった。「高度医療のおかげで以前は自然に淘汰(とうた)された機能障害を持ったのを生き残らせている。結果、養護施設に行く子供が増えてしまった」。その後、職場の張り紙をはがした職員を懲戒免職、マスコミ取材を拒否…と、常識はずれの振る舞いが止まらない
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中でも問題が大きいは、市長批判派が多数を占める市議会への出席を拒んだことだろう。市長は議会をボイコットしたまま、職員らの賞与の半減や市議報酬の日当制への変更などを専決処分で決めてきた。地方自治法では想定されていない市長の暴走だ
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首長と議会の反目は珍しいことではない。長野県でもかつて田中康夫前知事と議会多数派が対立、知事の不信任案可決-失職-出直し選挙-知事再選、の経過をたどった。ともに県民から直接選ばれる知事と県議。互いに高め合う度量を欠いた混乱だった
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事態を収拾するのは結局、有権者しかない。リコールが成立すれば出直し選挙になる。市長のやり方をどう考えるか、2万人余りの有権者の意思が問われる。首長と議会。二元代表制の運用が試される選挙にもなる。 |