毎日、1000件以上のアクセス、4000件以上の閲覧がある情報発信ブログ。花や有機農業・野菜作り、市民運動、行政訴訟など
てらまち・ねっと



 このブログでは安倍政権を、悪い意味、批判的な意味で「突っ走っている」と時々表現している。
 その突っ走りの典型が昨日の会見の内容や方向性だと映る。
 そんな観点でネットのニュースを開いてみた。その中から、理解しやすい論点を、昨日の象徴的な日の"記念"として記録しておく。

 時事通信の山崎元自民副総裁へのインタビューから。
★ ≪安倍首相には、集団的自衛権行使を認めた政権として後世に名を残したいという情念的なものを感じる。海外において武力行使を行おうとしているが、これは日本の防衛政策の大転換だ。戦前への回帰》
★ 《ひょっとしたら「戦争ごっこ」が好きなんじゃないか。そんな世代に入っているような気さえする。》

 毎日新聞。
★ ≪集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更は、祖父の岸信介元首相からの宿願だ。「首相の執念がなければ、ここまで来られなかった」》

 確かに、近年の自民党がやってこなかったことをやり遂げようという安倍氏の執念は、悪い意味で伝わる。
 時事通信の山崎氏インタビュー、「解釈改憲 将来に禍根残す」。
★ 《手順として憲法96条を改正し、衆参両院議員3分の2の発議を2分の1の発議に変えようとしたが、それすら難しいと悟った。便法として解釈改憲で集団的自衛権行使を容認しようという考え方は、はなはだよろしくない。解釈改憲で容認すれば、憲法の法的安定性を損ない、これからも時の政権によって憲法解釈はどうにでもなるという前例をつくってしまう。》

 毎日の社説。
★ ≪9条は戦争放棄や戦力不保持を定めているが、自衛権までは否定していない。個別的自衛権は必要最小限度の範囲内だが、自国が攻撃されていないのに、他国への武力攻撃に反撃できる集団的自衛権の行使は、その範囲を超えるため憲法上許されない。つまり個別的自衛権と集団的自衛権を必要最小限度で線引きし、集団的自衛権行使を認めてこなかった。
 報告書はこの解釈を180度変更し、必要最小限度の中に集団的自衛権の行使も含まれると解釈することによって行使を認めるよう求めた。
 これは従来の憲法解釈の否定であり、戦後の安全保障政策の大転換だ。それなのに、なぜ解釈を変えられるのか肝心の根拠は薄弱だ。
 ・・・いわゆる限定容認論といわれる考え方だ。
 裏返せば、政府が日本の安全に重大な影響を及ぼすと判断すれば何でもできるということだ。実質は全面容認と変わらない。報告書は、地理的限定は不適切とも言っている。》

 簡略にまとめていたのはNHKの「集団的自衛権巡る論点は」という記事。

 ところで、国会の議論のために、安倍氏の考えに対して慎重・否定派だった当時の内閣法制局長官を最高裁に飛ばして、異例な人事で内閣法制局長官に着任させ、安倍氏の後押しをさせる予定だった小松氏が内閣法制局長官をやめる、というニュースも昨日だった。
 歴史的なポイントだから、体調不良では重大な任務はこなせない、との判断か・・・
 
 中日新聞。
★ 《安倍政権は集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更を目指しているが、推進派の小松氏の辞職で作業に影響が出るのは避けられない。政府は後任について、横畠裕介内閣法制次長の昇格を軸に検討を急ぐ。》

 ともかく、先の山崎氏の「解釈改憲で容認すれば、憲法の法的安定性を損ない、これからも時の政権によって憲法解釈はどうにでもなるという前例をつくってしまう。」は、これからは、政権交代して、見解を変えれば、まったく違うことになる、ということでもあろう。

 この象徴的な日の記録として残したのは以下。

●憲法解釈変更、検討加速=安倍首相が集団自衛権行使へかじ-安保法制懇が報告書/時事 2014/05/15
●集団的自衛権:憲法解釈変更は祖父岸元首相からの宿願/毎日 2014年05月15日
●解釈改憲「将来に禍根残す」=山崎元自民副総裁インタビュー=/時事 2014.5.15 
●集団的自衛権行使容認で平和主義が変質?/日刊スポーツ 共同 2014年5月15日
●集団的自衛権めぐる安倍総理の会見に反対の声/名古屋テレビ 2014年05月16日
●集団的自衛権巡る論点は/NHK 5月15日
●社説:集団的自衛権 根拠なき憲法の破壊だ/毎日 2014年05月16日
●解釈変更推進派の小松法制局長官、退任へ/中日 2014年5月16日

人気ブログランキング = 今、1位
 ★携帯でも クリック可にしました →→ 携帯でまずここをクリックし、次に出てくる「リンク先に移動」をクリックして頂くだけで「10点」 ←←

 ★パソコンは こちらをクリックしてください →→←←このワン・クリックだけで10点


●憲法解釈変更、検討加速=安倍首相が集団自衛権行使へかじ-安保法制懇が報告書
          時事(2014/05/15-20:04)
 安倍晋三首相の私的諮問機関「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」は15日、政府が憲法解釈上できないとしてきた集団的自衛権行使を可能にするよう求める報告書を提出した。これを受け、首相は「必要な法的基盤を盤石にする確固たる信念を持って真剣に検討を進めていく決意だ」と述べ、解釈変更に向けた検討を加速する方針を表明。与党との調整を経て早期の閣議決定を目指す。戦後の安全保障政策の根幹を憲法改正によらずに転換することにつながり、国論を二分するのは必至だ。

 首相は15日夕、首相官邸で記者会見し、政府対応の「基本的方向性」を示し、限定的な集団的自衛権行使に向けた与党協議に入る意向を表明。憲法解釈の変更が必要と判断されれば、自衛隊法など関連法の改正方針とともに閣議決定する考えを示した。同時に「平和主義は守り抜いていく」と力説。武力行使を伴う国連の集団安全保障への参加は「これまでの政府の憲法解釈とは論理的に整合しない」と否定し、国民に理解を求めた。

 首相は、外国の紛争から避難する邦人を輸送する米艦船の防護など、現行の憲法解釈では対応できない例を示し、「憲法が国民の命を守る責任を放棄せよと言っているとは考えられない」と解釈変更の正当性を主張。変更に向けたスケジュールは「期限ありきではない」と重ねて表明した。 

 首相は会見に先立ち国家安全保障会議(日本版NSC)の4大臣会合を開き、基本的方向性を確認した。

 報告書は安保環境の変化を踏まえ、自衛措置を必要最小限度にとどめるべきだとしてきた政府見解に集団的自衛権行使も含めるよう提言。自衛権に関する最高裁の唯一の見解である1959年の「砂川判決」も根拠に、憲法解釈変更を求めた。

 集団的自衛権の行使には、(1)密接な関係にある国への攻撃(2)放置すれば日本の安全に大きく影響(3)攻撃された国から明示的な支援要請(4)首相が総合的に判断(5)国会の承認(6)第三国の領海などを自衛隊が通過する場合は許可を得る-の6条件を課した。地理的制限は設けていない。

 報告書は、国連の集団安全保障への参加や、武力攻撃に至らない「グレーゾーン」事態対処も可能とするよう法整備を求めた。近隣有事の際の米艦への攻撃排除など、具体的な事例も挙げた。

 与党は20日に協議を本格化させる。政府・自民党は年末に予定する日米防衛協力の指針(ガイドライン)再改定をにらみ合意を急ぐ。行使容認に慎重な公明党は結論を引き延ばして実質的棚上げに持ち込む構えで、駆け引きが活発化しそうだ。

◇集団的自衛権をめぐる動き
1945年10月 国連憲章が発効。51条で集団的自衛権を明文化
  46年11月 日本国憲法公布(47年5月施行)。9条で戦争を放棄し、戦力保持
         を禁止
  59年12月 最高裁が砂川事件の判決で、憲法9条について「自国の平和と安全を
         維持しその存立を全うするために必要な自衛のための措置を取り得る
         ことは、国家固有の権能の行使として当然のこと」と指摘
  60年 3月 岸首相が参院予算委員会で「特別に密接な関係にある国が武力攻撃を
         された場合に、その国まで出かけて行って防衛するという意味におけ
         る集団的自衛権は、憲法上は日本は持っていない、と考えている」と
         表明
  72年10月 田中内閣が「平和主義を基本原則とする憲法が、自衛のための措置を
         無制限に認めているとは解されない。その措置は必要最小限度の範囲
         にとどまるべきものだ」とする政府見解を参院決算委員会に提出
  81年 5月 鈴木内閣が「憲法9条で許容されている自衛権の行使は、わが国を防
         衛するため必要最小限度の範囲にとどまるべきものであると解してお
         り、集団的自衛権を行使することは、その範囲を超えるものであって
         、憲法上許されない」とする政府答弁書を決定
2001年 9月 米同時多発テロ。北大西洋条約機構(NATO)は集団的自衛権を行
         使して米国の対テロ戦争に参加。日本は集団的自衛権を前提としない
          米軍艦艇への給油活動を実施
  04年 2月 小泉首相が参院本会議で、集団的自衛権行使について「便宜的な解釈
         変更ではなく、正面から憲法改正を議論することにより、解決を図る
         のが筋だ」と答弁
  07年 4月 第1次安倍内閣が集団的自衛権の行使容認に向けて「安全保障の法的
         基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)を設置
  07年 9月 第1次安倍内閣が退陣
  08年 6月 安保法制懇が行使容認へ憲法解釈変更を求める報告書を福田内閣に提
         出
  12年12月 第2次安倍内閣が発足
  13年 2月 安保法制懇が議論再開
  14年 3月 自民党の高村副総裁が集団的自衛権の行使を限定的に容認にする「限
         定容認論」を提唱
      4月 日米首脳会談でオバマ大統領が集団的自衛権行使容認に向けた安倍政
         権の取り組みに支持表明
      5月 安保法制懇が報告書提出。安倍首相が記者会見で「基本的方向性」を
         表明
(注)肩書は全て当時

●集団的自衛権:憲法解釈変更は祖父岸元首相からの宿願
       毎日新聞 2014年05月15日
 安倍晋三首相が15日に意欲を示した集団的自衛権をめぐる憲法解釈の変更は、対等な日米関係を目指した祖父の岸信介元首相からの宿願だ。「首相の執念がなければ、ここまで来られなかった」(官邸関係者)との指摘は多い。

 「7年の年月、長きにわたりご苦労も多かったと思う」。首相は15日、安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会(安保法制懇)の報告書提出を受け、委員をねぎらった。第1次政権での懇談会設置は2007年4月。福田政権下の08年に出した報告書はたなざらしになったが、今回は自らの手で報告書を受け取った。

 岸元首相は1960年3月の参院予算委員会で、「他国に基地を貸して自国を守ることは従来、集団的自衛権と解釈されている」と発言した。集団的自衛権行使の道を残すことで、安保政策の幅を広げる狙いがあった。しかし、政府は72年、「集団的自衛権の行使は憲法上許されない」と明確化して、集団的自衛権の行使容認論を封印した。
・・・・・・・・・・・・(略)・・・

●解釈改憲「将来に禍根残す」 =山崎元自民副総裁インタビュー=
             時事 2014.5.15 
 自民党の山崎拓元副総裁は時事通信のインタビューに応じ、憲法解釈の見直しによる集団的自衛権の行使容認に反対する考えを示すとともに、安倍政権が防衛政策の大転換を図ろうとしているとして、懸念を示した。インタビュー要旨は次の通り。

 -安倍政権は集団的自衛権の行使容認に向け憲法解釈の変更に踏み切ろうとしている。
 解釈改憲とは、正面から堂々と憲法を改正せず、時の政権が解釈によって事実上の憲法改正を行うということだ。憲法改正は自民党の党是で、安倍晋三首相も憲法改正を目指す方針を掲げている。その手順として憲法96条を改正し、衆参両院議員3分の2の発議を2分の1の発議に変えようとしたが、それすら難しいと悟った。便法として解釈改憲で集団的自衛権行使を容認しようという考え方は、はなはだよろしくない。解釈改憲で容認すれば、憲法の法的安定性を損ない、これからも時の政権によって憲法解釈はどうにでもなるという前例をつくってしまう。これは避けなければならない。

 安倍首相には、集団的自衛権行使を認めた政権として後世に名を残したいという情念的なものを感じる。海外において武力行使を行おうとしているが、これは日本の防衛政策の大転換だ。戦前への回帰でもあり、将来に大きな禍根を残すのではないかと心配している。
・・・・・・(略)・・・

-集団的自衛権の行使に賛成するという立場は変わらないのか。
 憲法改正の中では認める。自動的にそうなる。自衛のために軍隊を持つことは認めるからだ。

 -解釈改憲に反対するのは国民の同意を得ない手続きが問題だからか。
 それもあるが、私は安倍政権が防衛政策の大転換を図ろうとしていることに反対だ。憲法改正と防衛政策は別。集団的自衛権を行使するために憲法を改正するのではない。(憲法改正でも)国際紛争を解決する手段として、武力による威嚇、武力の行使を永久に放棄するということは変えない。もし変えるならば、日米は安保上対等の関係になり、日米安保条約を再改定しなければならない。日本の基地提供はなくなる。全ての米軍基地の返還を求めることになる。それは日米関係を根本的におかしくする。米国の核抑止力がなくなると、日本の核武装を求める声も強まる。海外派兵を認めるか否か、今の憲法解釈ではできないが、解釈見直しで可能になる。

 -自民党の高村正彦副総裁が1959年の最高裁判決(砂川判決)から必要最小限度の集団的自衛権の行使を認める「限定容認論」を唱えたが、公明党は反対の立場を示している。
 砂川判決そのものが古証文だ。日本の集団的自衛権を対象にしていない判決だ。日本にある米軍基地が攻撃を受けたら、それは日本国内のことであり、日本の自衛権、個別的自衛権の問題だ。高村さんの議論は牽強(けんきょう)付会、こじつけの議論だ。これを詭弁(きべん)という。公明党の山口那津男代表は優秀な法律家だから、すぐに詭弁と分かり、欺瞞(ぎまん)性を見破った。

 -憲法改正は困難で時間がかかるから、解釈改憲で集団的自衛権行使を認めようとしている。
 安倍首相の私的諮問機関である「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)はわが国周辺の国際情勢の変化を強調しているが、近い将来、日中戦争になり得るという前提で議論しているのではないか。中国に対する外交的配慮が足りない。逆に(安倍首相は)靖国神社に行って中国を刺激している。

 -なぜ安倍政権が集団的自衛権行使容認に急ぐとみるか。
  ひょっとしたら「戦争ごっこ」が好きなんじゃないか。そんな世代に入っているような気さえする。軍事力で対等になりたいという考えがある。米国に日本を守らせようという考えは確立しているが、今の安倍政権の集団的自衛権の議論は日本が米国を守ってやろうという話だ。それだけでなく、集団的自衛権行使の対象国は限定しないという。対象は「密接な関係にある国」というが、その定義がない。軍事的に密接な関係にある国は米国しかないが、軍事的とは書いていない。何をもって密接な関係と言うのか。米国以外はどこか。国連加盟国全部だと言っているのか。そんな馬鹿な話はない。これは非常に大きな穴だ。そんなことを言えば中国だって密接な関係にある国だ。自衛隊が世界中を回って各国に加勢するというのか。

●集団的自衛権行使容認で平和主義が変質?
            日刊スポーツ 共同 [2014年5月15日]
 憲法解釈変更による集団的自衛権の行使容認は、憲法が基本原理とする平和主義の在り方を大きく変質させる。自衛隊の武力行使に歯止めをかけてきた憲法9条の廃止と同じだとの批判も強い。

 9条は戦争放棄と戦力不保持を掲げるが、政府は国の存立と国民の生命を守るため「必要最小限度の自衛措置」を認めてきた。憲法前文の「平和的生存権」と、13条の「生命、自由および幸福追求権」がその根拠だ。

 ただ、9条の規定から制約はある。政府は、自国への武力攻撃を排除する個別的自衛権は認める一方、他国への攻撃に反撃する集団的自衛権の行使は「必要最小限度」に含まれないとの解釈を取ってきた。

 この「必要最小限度」は伸び縮みするような概念ではないというのが従来の見解だ。集団的自衛権の行使容認には「憲法改正という手段を取らざるを得ない」と、内閣法制局長官が国会で答弁したこともあった。

 安保法制懇は、安全保障環境の変化を強調し「必要最小限度」に含まれる集団的自衛権行使があると主張。安倍晋三首相も支持し、15日の記者会見で「限定的な行使だ」と理解を求めたが、解釈変更を可能にする法理論的な説明は乏しかった。

 想定事例は公海上での米艦防護や米国に向かう弾道ミサイル迎撃、シーレーン(海上交通路)防衛だが「個別的自衛権や警察権で対応できる」「現実的ではない」といった指摘がある。

 政府は「あり得ない」と否定するが、行使をいったん認めれば米国の要請で「地球の裏側」で活動することになるのではとの不安もある。安保法制懇は「地理的な限定を設けることは適切でない。不毛な抽象論だ」と、懸念自体を切り捨てた。

 青井未帆学習院大教授(憲法学)は「安倍首相は本来なら憲法改正が必要なことを解釈変更でやろうとしている。9条を名ばかりにする行為だ」と指摘。「『必要最小限度の自衛措置』だから自衛隊は合憲だとしてきた、その理屈も成り立たなくなる」と批判した。(共同)

●集団的自衛権めぐる安倍総理の会見に反対の声
           名古屋テレビ 2014年05月16日 00:50
安倍総理大臣が、集団的自衛権の容認に向け議論を進める考えを示したことに、東海地方でも反対の声が上がっています。

安倍総理大臣は、15日、東京都内で会見を開き、集団的自衛権の容認に向け議論を進める考えを示しました。

安倍総理大臣:「わが国の安全に重大な影響を及ぼす可能性がある時、限定的に集団的自衛権を行使することは許される。今後、さらに研究を進めていきたいと思います」。安倍総理は、憲法の解釈変更についても議論を進める考えです。名古屋市内では、15日夕方、市民らが反対運動を行いました。参加者:「攻撃されていないにも関わらず、武力行使するというのは、憲法9条をどこからどう読み違えても、そういう解釈にならない」。


●集団的自衛権巡る論点は
          NHK 5月15日 22時27分
集団的自衛権の行使を巡って、安倍総理大臣が設置した有識者懇談会は15日、憲法解釈を変更し、行使を容認するよう求める報告書を提出しました。
戦後日本の安全保障政策の大転換となりえる議論が本格化することになりそうです。

安保法制懇とは
政府の有識者懇談会は、正式名称を「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」と言い、安倍総理大臣の私的諮問機関として議論を続けてきました。
メンバーは14人で、座長は柳井俊二元外務事務次官、座長代理が北岡伸一国際大学学長で、経歴を見ますと学識経験者が9人、元官僚、元自衛官が4人、財界人が1人となっています。
全員がこれまでに発表した論文などの中で、集団的自衛権の行使を容認することにいずれも肯定的な意見を明らかにしています。

報告書とは
報告書は、日本を取り巻く安全保障環境は一層厳しさを増しているとして、日本の平和と安全を維持するためには従来の憲法解釈では十分に対応できないとしています。
そのうえで、憲法上認められる必要最小限度の自衛権の中に集団的自衛権の行使も含まれると解釈すべきだとして、憲法解釈を変更し、集団的自衛権の行使を容認するよう求めました。

集団的自衛権を巡る論点
憲法解釈の変更による集団的自衛権の行使容認については、さまざまな論点があります。
主なものとして、1.憲法解釈の変更という手続きを取ることの是非、2.行使を容認した場合に歯止めが効くかどうか、3.今の解釈で認められている個別的自衛権や警察権でどこまで対応できるのか、この3点が挙げられます。

論点1.憲法解釈の変更という手続きを取ることの是非
憲法解釈の変更という手続きを取ることの是非について、慶應義塾大学の小林節名誉教授は、「集団的自衛権の行使容認という実質的な憲法改正を解釈の変更で行うことを許せば、将来、憲法を土台から壊し、権力者だったら何でもできるという独裁国家を生むおそれがある。集団的自衛権の行使を容認したいのなら、堂々と憲法改正を提起して、国民的な論争を経て、国民投票で可決してもらうのが筋だ」と批判しています。
一方、有識者懇談会のメンバーの1人で駒澤大学の西修名誉教授は、「今の憲法はそれぞれの国の固有の権利である自衛権を否定しているわけではなく、その自衛権の1つである集団的自衛権の行使のしかたを議論していくことは立憲主義に反しない。現代は、憲法で国家権力を制約するだけでなく、国家に積極的な役割を果たさせることが求められる」と話しています。

論点2.行使を容認した場合に歯止めが効くかどうか
行使を容認した場合に歯止めが効くかどうかについて、自衛隊のイラク派遣当時、内閣官房副長官補を務めた、元防衛官僚の柳澤協二さんは、「集団的自衛権を行使してほしいという他国から要請されて助けないとなったら、政治的なダメージは計り知れないため、結局、集団的自衛権は歯止めが効かない。自衛隊は発足以来、1人の戦死者も出さなかったが、集団的自衛権の行使が容認されれば、そうした犠牲を強いることになるという認識が必要だ。こうしたリスクやデメリットもすべて考慮して議論すべきだ」と指摘しています。
一方、駒澤大学名誉教授の西修さんは、「報告書では、国際法上の縛りに加え、『日本の安全に重大な影響を及ぼす可能性がある』といった条件を定めている。その範囲でしか行使できないようにすれば、歯止めになる。さらに、必要最小限の行使を容認していくのであり、政府、国会、国民それぞれが歯止めの在り方を議論していくべきだ」と話しています。

論点3.今の解釈で認められている個別的自衛権や警察権でどこまで対応できるのか
今の解釈で認められている個別的自衛権や警察権でどこまで対応できるのかについて、例えば、報告書で示された事例のうち、公海上で攻撃されたアメリカの艦船を自衛隊が守るケースなどは、個別的自衛権で対応できるという指摘があります。

安全保障が専門で、流通経済大学教授の植村秀樹さんは、「報告書には、日本が対応する必要がない事例や、個別的自衛権でも対応できる事例が含まれている。国民が集団的自衛権の行使容認を受け入れやすい事例を並べている印象があり、結論ありきで、世論をミスリードするおそれがある」と指摘しています。

一方、安全保障が専門で、拓殖大学海外事情研究所教授の川上高司さんは、「日本を取り巻く安全保障環境は激変しており、領海領空を巡る争いや、北朝鮮の弾道ミサイルなどの脅威が日に日に増している。ほかの国が日本を守ってくれているのに、日本がほかの国を守れない現状は改めていかなければならない。日米同盟を強化するためにも、集団的自衛権の行使容認は早急に必要だ」と指摘しています。


●社説:集団的自衛権 根拠なき憲法の破壊だ
      毎日新聞 2014年05月16日
 憲法9条の解釈を変えて集団的自衛権の行使を可能にし、他国を守るために自衛隊が海外で武力行使できるようにする。安倍政権は日本をこんな国に作り替えようとしている。

 安倍晋三首相の私的懇談会「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)が、集団的自衛権の行使容認などを求める報告書を提出した。法制懇の委員14人は、外交・安全保障の専門家が大半で、憲法学者は1人だけだ。全員が行使容認派で、結論ありきといえる。

 歴代政府は、憲法9条を次のように解釈してきた。

 ◇9条解釈の180度転換だ
 9条は戦争放棄や戦力不保持を定めているが、自衛権までは否定していない。しかし、自衛権行使は必要最小限度の範囲にとどまるべきだ。個別的自衛権は必要最小限度の範囲内だが、自国が攻撃されていないのに、他国への武力攻撃に反撃できる集団的自衛権の行使は、その範囲を超えるため憲法上許されない。

 つまり個別的自衛権と集団的自衛権を必要最小限度で線引きし、集団的自衛権行使を認めてこなかった。

 報告書はこの解釈を180度変更し、必要最小限度の中に集団的自衛権の行使も含まれると解釈することによって行使を認めるよう求めた。

 これは従来の憲法解釈の否定であり、戦後の安全保障政策の大転換だ。それなのに、なぜ解釈を変えられるのか肝心の根拠は薄弱だ。


 報告書は根拠材料として、9条の政府解釈は戦後一貫していたわけでなく、憲法制定当時は個別的自衛権の行使さえ否定していたのが、自衛隊が創設された年に認めると解釈を大きく変えたことを指摘している。

 現在の憲法解釈は歴代政府が30年以上積み上げ、国民に定着したものだ。戦後の憲法解釈が定まっていない時代に変遷を遂げた経緯があるから、変えてもいいというのは理屈が通らない。その時々の内閣が憲法解釈を自由に変えられるなら、憲法への信頼は揺らぐ。憲法が権力を縛る立憲主義にも反する。

 それでも行使できるようにしたいというのなら、国会の3分の2の賛同と国民投票という手続きを伴う憲法9条改正を国民に問うのが筋だ。

 何のために行使を認めるのか、現実に必要があるのかも明確でない。

 報告書は、中国や北朝鮮情勢など厳しさを増す安全保障環境を指摘し、「安全保障環境の大きな変化にかかわらず、憲法論の下で安全保障政策が硬直化するようでは、憲法論のゆえに国民の安全が害されることになりかねない」と警告した。

 憲法の平和主義が果たしてきた役割への言及は極端に少なく、まるで憲法を守って国を滅ぼしてはならないと脅しているようだ。そして検討の具体的事例として「公海上の米艦防護」「米国向け弾道ミサイルの迎撃」「シーレーン(海上交通路)の機雷除去」などを挙げた。

 安倍首相も記者会見で二つの事例をパネルにして説明し、現在の憲法解釈のままでは自衛隊がそれらの活動を行うことができないと訴えた。 しかし、首相が挙げた一つ目の事例の、朝鮮半島有事を念頭に避難邦人を輸送する米艦船が攻撃された場合の防護は、集団的自衛権を認めなくても、個別的自衛権などで十分に対応できるという指摘も多い。

 二つ目の、国連平和維持活動(PKO)に参加している他国軍の部隊などが襲われた場合の駆けつけ警護は、そもそも集団的自衛権とは関係がないPKOの武器使用の問題だ。

 ◇本質そらす首相の会見
 集団的自衛権問題の本質からそれた国民に理解されやすい事例をあえて選び、首相自ら「命を守るべき責任を負っている私や日本政府は、本当に何もできないということでいいのか」と情緒的に訴えることで、集団的自衛権の行使容認に向けた空気を醸成する狙いがにじむ。

 報告書は、実際の行使にあたっては「我が国の安全に重大な影響を及ぼす可能性がある」などの要件を満たした場合、政府が総合的に判断して必要最小限度の行使をするか否かを決めるよう提言している。いわゆる限定容認論といわれる考え方だ。

 裏返せば、政府が日本の安全に重大な影響を及ぼすと判断すれば何でもできるということだ。実質は全面容認と変わらない。報告書は、地理的限定は不適切とも言っている。


 首相は記者会見で、法整備により「抑止力が高まり、紛争が回避され、戦争に巻き込まれなくなる」と強調した。だが歴史を顧みれば、自衛の名のもとに多くの侵略戦争が行われてきた。集団的自衛権が戦争への道をひらく面があることを忘れてはならない。

 報告書は、国連の集団安全保障への参加、PKOでの武器使用の見直し、グレーゾーン事態と呼ばれる武力攻撃に至らない侵害への対応なども検討するよう求めた。

 このうち湾岸戦争やイラク戦争のような集団安全保障の戦闘参加について、首相は提言を採用しない考えを示した。与党協議では、日本の安全や国益に必要なことは何か、憲法解釈変更でなければ実現できないのか、近隣諸国との関係にどんな影響が出るのかなど、現実を踏まえた具体的で冷静な議論を求める。

●解釈変更推進派の小松法制局長官、退任へ
        中日 2014年5月16日 00時25分
 政府は15日、小松一郎内閣法制局長官(63)の体調不良を理由に退任させる方針を固めた。政府関係者が明らかにした。安倍政権は集団的自衛権の行使を容認する憲法解釈変更を目指しているが、推進派の小松氏の辞職で作業に影響が出るのは避けられない。政府は後任について、横畠裕介内閣法制次長の昇格を軸に検討を急ぐ。

 首相が設置した「安全保障の法的基盤の再構築に関する懇談会」(安保法制懇)は行使を容認すべきだとする報告書を15日に政府へ提出したばかり。小松氏は15日午後、報告書が提出された直後に官邸で首相に面会した。この場で進退について話し合ったとみられる。

コメント ( 0 ) | Trackback ( )