●マイナンバーを記載せずに法定調書・源泉徴収票を税務署に提出できるか
国税局OB・元国税調査官の税理士による税をテーマにしたブログ 2015年07月18日
マイナンバーの「通知カード」による通知を平成27年10月に控え、新聞報道等では企業の対応の遅れが危惧されています。
実際、完全に対応を終えている企業は少ないように思います。また、どれだけ対応を行なっても無くならない問題があります。それは、マイナンバーを従業員、取引先から入手できない場合にどう対応するかという問題です。
その点については、国税庁HPの「社会保障・税番号制度FAQ」の中に「国税分野におけるFAQ」が掲載されており、参考になります。 https://www.nta.go.jp/mynumberinfo/FAQ/kokuzeikankeifaq.htm
そのFAQによると、「申告書や法定調書等の記載対象となっている方全てが個人番号・法人番号をお持ちとは限らず、そのような場合は個人番号・法人番号を記載することはできませんので、個人番号・法人番号の記載がないことをもって、税務署が書類を受理しないということはありません。」とされています。
さらに、マイナンバーの不記載や記載誤りについては、「申告書や法定調書等の税務関係書類を税務署等に提出する際に、個人番号・法人番号を記載しなかった場合や誤りがあった場合の罰則規定は、税法上設けられておりません」とされています。
FAQの解説は「個人番号・法人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務ですので、正確に記載した上で提出をしてください。」と続けられていますが、マイナンバーの記載は義務ではあるけれど罰則はないということです。
その上で、「従業員や講演料等の支払先等から個人番号の提供を受けられない場合、どのように対応すればいいですか。」という問いには、
「法定調書作成などに際し、個人番号の提供を受けられない場合でも、安易に個人番号を記載しないで書類を提出せず、個人番号の記載は、法律(国税通則法、所得税法等)で定められた義務であることを伝え、提供を求めてください。それでもなお、提供を受けられない場合は、提供を求めた経過等を記録、保存するなどし、単なる義務違反でないことを明確にしておいてください。経過等の記録がなければ、個人番号の提供を受けていないのか、あるいは提供を受けたのに紛失したのかが判別できません。特定個人情報保護の観点からも、経過等の記録をお願いします。」
との回答が掲載されており、経過等の記録は当局からのお願いとなっております。
導入目前のマイナンバー制度ですが、マイナンバーを従業員や取引先から入手できない場合の取り扱いは意外にも周知されていません。しかし、国税庁HPに公表されているFAQには、申告書や法定調書等の記載対象となっている人全てが個人番号・法人番号を持っているとは限らないと記載されており、マイナンバーを従業員、取引先が教えてくれないケースも想定されています。
今後、マイナンバー制度が導入され、企業がマイナンバーを従業員や取引先から入手できない場合であっても、過剰な対応を行う必要はなく、上記FAQに沿った冷静な対応を行なうことが大切ではないかと思います。
(注 : マイナンバーを申告書・法定調書等に記載することは法律で定められ義務であり、不記載を推奨するものではありません。)
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