● 脳由来神経栄養因子 ウィキペディア
脳由来神経栄養因子(のうゆらいしんけいえいよういんし、BDNF; Brain-derived neurotrophic factorとも)は、標的細胞表面上にある特異的受容体TrkBに結合し、神経細胞の生存・成長・シナプスの機能亢進などの神経細胞の成長を調節する脳細胞の増加には不可欠な神経系の液性蛋白質である。
BDNFは、ヒトでは、BDNF遺伝子から生成される蛋白質である。[1][2][3] BDNFは、成長因子の中の神経栄養因子の一つであり、標準的な神経成長因子と関連している。神経栄養因子は、脳や末梢で見出される。
BDNFは、中枢神経系や末梢神経系の一部のニューロン(神経単位)に作用し、今あるニューロンが維持されるようにサポートし、ニューロンの成長を促し、新しいニューロンやシナプスに分化することを促す。[4][5] 脳の中では、BDNFは、海馬、大脳皮質、大脳基底核で活性化されている。それらの部位は、学習、記憶、高度な思考に必須の領域である。[6] BDNFは、網膜、運動ニューロン、腎臓、唾液腺、前立腺にも作用する。[7]
BDNFそれ自体は、長期記憶に重要である。[8] 哺乳類の脳にある大多数のニューロンは、胎児期に形成されるのであるが、成人の脳の一部分では、神経幹細胞から、神経発生neurogenesisとして知られるプロセスにより、新しいニューロンを成長させる能力を維持している。神経栄養因子は、神経発生neurogenesisを刺激し、コントロールする化学物質である。BDNFは、最も活性のある神経栄養因子の一つである。
ある種の身体的運動は、ヒトの脳において、BDNFの合成を3倍程度にまで増加させる。
アルツハイマー病のある人では、脳の組織中のBDNFは低下している。
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