●もんじゅ廃炉、21日に正式決定
日経 2016/12/17 2:00
政府は21日に原子力関係閣僚会議を開き、高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県)の廃炉を正式に決める。核燃料サイクル政策は維持し、周辺地域を高速炉の研究や人材育成の中核拠点として位置付ける。立地する福井県や敦賀市が廃炉の見返りに求める試験研究炉の新設や交付金の増額なども検討しており、国と地元の協議は最終局面を迎えた。
●「到底受け入れられない」と福井県知事がもんじゅ廃炉方針を拒否 国側は再度説明へ
産経 2016.12.19 12:13
政府が廃炉の方針を固めた高速増殖炉原型炉「もんじゅ」(福井県敦賀市)について、同県と国が意見交換する「もんじゅ関連協議会」が19日、文部科学省で開かれ、西川一誠知事は廃炉方針に対し「到底受け入れられず、見直しを強く求める」と拒否する姿勢を示した。
協議会には西川知事、松野博一文科相、世耕弘成経済産業相が出席した。
直前に開催された政府の高速炉開発会議で固まった廃炉方針について説明を受けた西川知事は「もんじゅの総括と廃炉に至る説明が不十分で、国としての反省がされていない」と批判。政府として責任ある回答を再度示すよう求め、国側は「改めて回答する場を設ける」と答えた。
西川知事は「単に情勢の変化や、海外の知見を利用すればもんじゅで得られる知見を代替できるなどとする抽象的な説明での廃止は納得できない。十分な議論を尽くしたとは思えない」と指摘した。
また、廃炉に至る過程の運営を現在と同じ日本原子力研究開発機構に任せる方針についても「原子力規制委員会から運営能力がないと指摘された組織であり、地元としては誠に不安。新たな運営主体をぜひ成立させてほしい」と求めた。
国側は、廃炉後も周辺地域を高速炉開発の中核的拠点と位置づけ、新たな試験研究炉の設置や人材活用などを進めると説明した。だが西川知事は会合後、記者団に「現時点の説明は不十分で、検討する段階ではない」と述べた。
●新たな高速炉開発の方針案まとまる
NHK 12月19日 12時03分
新しい高速炉の在り方を議論している政府の会議は19日、経済性を検証する実証炉の開発に向けては高速増殖炉「もんじゅ」を再開せずに、フランスをはじめ海外との協力などを通じて新しい知見を得ながら開発を進めるとした方針案をまとめました。
政府は、安全管理上の問題が相次いだ福井県の高速増殖炉「もんじゅ」は廃炉の方向で調整する一方、経済産業省や文部科学省、それに電力会社などが参加する「高速炉開発会議」で新しい高速炉の開発方針の検討を進め、19日の会議で方針案をまとめました。
方針案では、仮にもんじゅの運転を再開した場合、今後16年間で5400億円以上の費用がかかると見られることから、再開にかかる期間や費用などを考慮して今後はもんじゅを再開せず、新しい方策で必要な知見を得ていくとしています。
具体的には、フランスと協力して設計する実証炉や、高速実験炉「常陽」など国内外の施設などを通じて研究開発を進めることにしています。このほか、会議ではもんじゅを廃炉にした場合、30年かけて燃料の取り出しや施設の解体などを行うと、少なくとも3750億円が必要となることが説明されました。
会議では、さらに作業部会を設けて今後10年程度の間に必要な開発作業などを検討し、再来年をめどに高速炉開発の工程表をまとめることにしています。
●もんじゅ廃炉に3750億円以上 新たに「高速炉」計画
テレ朝 2016/12/19 11:49
福井県にある高速増殖炉「もんじゅ」に関する政府の方針案がまとまりました。もんじゅは1995年にナトリウム漏れ事故を起こすなどトラブルが相次ぎ、1兆円以上をつぎ込んだものの、稼働したのはこの20年でわずか20日ほどでした。そして、廃炉には3750億円以上かかることが分かりましたが、国はさらに進んだ「実証炉」を開発する計画です。
世耕経済産業大臣:「高速炉開発は、我が国の将来に欠かすことのできない重要なプロジェクトです」
三菱重工業・宮永俊一社長:「国や関係者と連携し、年明け以降のロードマップ策定作業に積極的に貢献していく」
政府の方針案では今後、もんじゅよりも実用化に近付けた実証炉を開発します。時期や場所は未定ですが、2018年度をめどに今後10年程度の作業工程表を作ります。それまでは海外の高速炉開発を共同で進める方針です。いずれも予算は示されていません。
もんじゅについてはこれまでにかかった1兆円以上の費用に加え、廃炉に3750億円以上かかることが新たに示されました。政府関係者は「動かしたこと自体が成果だ」などと話しています。政府は21日以降に関係閣僚会議を開き、もんじゅの廃炉と併せて高速炉の開発方針を正式決定します。
●もんじゅ廃炉 政府「実証炉」開発へ舵…将来に禍根を残す可能性も
iza 2016.12.19 15:25
政府が廃炉の方針を示した高速増殖炉「もんじゅ」をめぐっては、今も存続を求める声は少なくない。ただ、肝心の運営主体が見つからないことや、再稼働に多額の費用がかかることから、政府は廃炉とした上で、高速炉開発の次のステップである「実証炉」へと進む判断をした。
政府がもんじゅ廃炉に大きくかじを切るきっかけになったのは、原子力規制委員会が昨年11月13日、もんじゅの運営主体、日本原子力研究開発機構について出した勧告だった。
「(日本原子力研究開発)機構はもんじゅの出力運転を安全に行う主体として必要な資質を有していない」。トラブル続きだった機構に対し、規制委はこう指摘。文部科学相に新たなもんじゅの運営主体を探すよう求めたのだ。
しかし、勧告から1週間後に頼りの電気事業連合会が「電力会社には技術的な知見がない」と早々に手を引き、運営主体探しは暗礁に乗り上げる。
費用面もネックとなった。文科省は、もんじゅを新規制基準に適合させ再稼働させるためにかかる費用を5400億円以上と試算。すでに1兆円もの国費が投じられた施設だが、再稼働にはさらに莫大(ばくだい)な費用が必要となることが明らかになった。
そのため、政府はもんじゅを再稼働させた場合に得られる新たな知見の洗い出しを実施。その結果、こうした知見は国内のほかの施設や、海外で得られる知見で埋め合わせができると判断し、次の「実証炉」開発に進めると判断した。
ただ、原発は「実験炉」「原型炉」「実証炉」「実用炉」のステップを踏んで開発されるのが一般的だ。原型炉のもんじゅがフル稼働していないにもかかわらず次の実証炉開発に進み、そこで新たな問題が発生した場合、今回の判断が将来に禍根を残す可能性もある。
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