●インテルCEOなど大統領助言組織を辞任 トランプの白人主義への対応巡り
ニューズウィーク 2017年8月15日
8月14日、米バージニア州シャーロッツビルで12日に白人至上主義団体と反対派が衝突し死傷者が出た事件で、トランプ大統領が当初極右派を明確に非難しなかったことを受け、製薬大手メルクのケネス・フレイジャー最高経営責任者(写真)が大統領の経済助言組織である製造業評議会を辞任した。ニューヨークで2015年9月撮影(2017年 ロイター/Brendan McDermid)
米バージニア州シャーロッツビルで12日に白人至上主義団体と反対派が衝突し死傷者が出た事件で、トランプ大統領が当初極右派を明確に非難しなかったことを受け、製薬大手メルクのケネス・フレイジャー最高経営責任者(CEO)が14日、大統領の経済助言組織である製造業評議会のメンバーを辞任した。同CEOはアフリカ系米国人。
このほか、米半導体大手インテルのブライアン・クルザニッチCEOやスポーツ衣料品大手アンダーアーマーのケビン・プランクCEOも相次ぎ辞任を表明した。
インテルのクルザニッチCEOは「わが国の断絶した政治状況が重要課題に対する深刻な危害となっていることに関心を促すため評議会を辞任した」とブログに投稿した。
アンダーアーマーのプランクCEOはツイッターで辞任を明らかにし、米製造業の改善に向けて引き続き意志を強くするとしながらも、同社が「政治ではなく、革新やスポーツに関与する」と述べた。プランク氏は先に、トランプ大統領を称賛したことで同社の広告塔を務めるスポーツ選手らから反発を受けていた。
フレイジャー氏は声明で「米国の指導者は、すべての人々は平等であるというわが国の理想に反する敵対感情、憎悪、白人至上主義の拒否を明確に示し、われわれの基本理念を尊重すべきだ」と表明。「メルクのCEOとして、また個人的な良識に基づき、私は不寛容と過激思想に反対する責任を感じている」と述べた。
これに対しトランプ大統領は、ツイッターで「フレイジャーCEOが大統領の製造業評議会を辞任した。CEOは、これからは『不当に高い薬価の引き下げ』に向けてもっと時間を割けるようになるだろう!」と揶揄(やゆ)した。
さらに大統領は、メルクについて「薬価つり上げのリーダーであり、同時に米国から仕事を海外へ移動させている。仕事を国内に戻し、薬価を下げるべきだ」とツイートした。
フレイジャーCEOは2016年の大統領選時、共和党・民主党双方に献金するなどの政治的貢献をしていたが、大統領候補には献金を行わなかった。
同CEOに対し、同じ製薬会社であるアルナイラム・ファーマシューティカルズのジョン・マラガノーレCEOも賛同を表明。他業界でもヒューレット・パッカード・エンタープライズ(HPE)のメグ・ホイットマンCEO、ゴールドマン・サックスのロイド・ブランクファインCEOらも支持を宣言した。
国内最大の労組、米労働総同盟産別会議(AFL─CIO)は声明で「当会議は、シャーロッツビルで発生した国内過激派による敵対感情に基づく行動を明確に非難するものであり、大統領にも同様の対応を求める」と述べた。
●トランプ氏、不快感表明 助言役の辞任続出に
共同 2017/8/16
【ニューヨーク共同】トランプ米大統領は15日、同氏の人種差別への対応を巡って、米大手企業首脳が相次いで大統領の助言役を辞任したことについて「代わりはたくさんいる。目立ちたがり屋は続けるべきではなかったのだ」とツイッターに投稿し、不快感をあらわにした。
一方で、メーカーなどでつくる米製造業同盟(AAM)のスコット・ポール会長も15日に助言役を辞任すると表明。ツイッターに「私にとってはそうするのが正しいことだ」と投稿した。
●トランプ米大統領、助言組織2つを解散-メンバー辞任相次ぎ
ブルームバーグ 2017年8月17日 04:54
トランプ米大統領は16日、メンバーの辞任が相次いでいた2つの助言組織を解散するとツイッター投稿で表明した。大統領は前日、辞任した経済界の首脳らを「スタンドプレーヤー」と切り捨てていた。
トランプ大統領はツイートで、「製造業諮問委員会と戦略・政策フォーラムのメンバーである企業経営者らに圧力をかけるくらいなら、私は両組織とも解散する。皆さんありがとう!」と述べた。
このツイートの1時間足らず前には、戦略・政策フォーラムが自主解散する意向をホワイトハウスに伝えると報じられていた。トランプ大統領は、企業首脳らから見捨てられる前に先手を打って解散を表明したとみられる。大統領は15日のニューヨークでの記者会見で、バージニア州シャーロッツビルで起きた白人至上主義者らと反対派との衝突について、「双方の側」に責任があると述べ、波紋を呼んでいた。
この記者会見の後、ブラックストーン・グループのシュワルツマン最高経営責任者(CEO)が率いる戦略・政策フォーラムのメンバーらの間に動揺が広がった。事情に詳しい関係者によれば、ブラックロックのフィンクCEOは自社の顧客数人に電話し、同フォーラムから脱退する予定だと伝えた。そして翌16日朝、フィンク氏はシュワルツマン氏に辞任の意向を伝えた。
これを受け、同フォーラムは16日午前に電話会議を行った。事情に詳しい別の関係者によれば、電話会議でメンバーはフォーラムにとどまるか、辞任するかを問われ、12人のうち10人が辞任の意向を示したという。さらに別の関係者によれば、フォーラムは解散を公表する前に、決定をホワイトハウスに伝える計画だった。
フィンク氏は16日のブラックロック従業員宛ての文書で、バージニア州での暴力と人種差別、反ユダヤ主義は明確に批判されるべきだと述べた。
ブルームバーグが入手した同文書でフィンク氏は、「今年に入って、私は大統領と幾つかの問題で意見を異にしたが、われわれの顧客も含め、投資家の声を届けることが重要だと考え、私はフォーラムに参加し続けた。しかし残念ながら、この数日間の出来事を受け、自分の良心に照らし、このフォーラムにこれ以上参加できないとの結論に達した」と説明した。
サンディエゴ州立大学でビジネス倫理を教えるダン・イートン氏は、2つの助言組織の解散は「コーポレート・アメリカ」がトランプ政権に完全に背を向けたことは意味しないと指摘。企業は依然として、トランプ政権が法人税改革とインフラ投資を推し進めることを期待していると説明した。
● トランプ氏助言組織解散:識者はこうみる
ロイター 2017年 08月 17日 15:47
[16日 ロイター] - トランプ米大統領は16日、米経済界の首脳らで構成する大統領助言組織の「製造業評議会」と「戦略・政策フォーラム」を解散した。
市場関係者のコメントは以下の通り。
●税制・インフラ政策の推進能力に疑問
<テンパス・コンサルティング(ワシントン)の市場ディレクター、ジョン・ドイル氏>
トランプ政権が税制とインフラの改革に関するいかなる政策を推し進める能力も疑問にさらされる。
今回の動きは、トランプ政権が多くの問題を抱えていることの新たな証しだ。
●大統領の情報把握能力は低下せず
<パフォーマンス・トラスト・キャピタル・パートナーズ(シカゴ)のトレーディング・ディレクター、ブライアン・バトル氏>
過去数日間、辞任が相次いでいたが、このことが(解散の)原因になったとは思えない。
助言組織の解散により、企業の最高経営責任者(CEO)が何を考えているのか大統領が把握する能力が低下するわけではない。
●政治リスク増大、意義ある法案の追求一段と困難に
<グリーンウッド・キャピタル・アソシエーツ(グリーンウッド・サウスカロライナ州)の最高投資責任者(CIO)、ウォルター・トッド氏>
これほどの大きなニュースはない。過去48─24時間の間に政治リスクが増大したことは否めない。
税制改革のほか、向こう45日程度で予算案を通過させ連邦債務上限を引き上げる必要がある。すでに状況は困難になっていたが、今回のことで一段と困難さが増した。
米経済の支援となるはずの意義のある法案の追求が脱線することになる。
●財界の離反で政策実行力問われる
<DAダビッドソン(シアトル)の債券トレーディング部バイスプレジデント、メアリーアン・ハーレー氏>
助言組織の解散劇の裏にあるのはホワイトハウスの混乱以外の何物でもない。トランプ氏は民主党はもとより、共和党内でも右派、左派を含め求心力が低下しているが、ここにきてトランプ氏の中核的な支持基盤の一つである財界も大統領に見切りをつけようとしている。大統領の政策実行力が明確に問われており、トランプ氏は体制の建て直しが急務となる。
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