北朝鮮が核実験を強行した。すでに同国は,核兵器5、6個分のプルトニウムをすでに保有し、それを兵器化する技術があるとの判断をせざるを得ない。
歴史をたどれば、これまでに「四つの核」があったことが分かる。
最初の「核」は、89年に黒鉛減速炉を約70日間にわたって停止し、この間に平壌の北約80キロにある寧辺の核関連施設で核燃料棒を再処理してで抽出されたプルトニウムだ。
第2の「核」は後に第1次朝鮮半島核危機と呼ばれる1994年春、改めて黒鉛減速炉を停止し取り出した使用済み核燃料棒8000本を再処理してできたと見られるプルトニウムだ。この時、危機感を募らせた米政府は寧辺の空爆も検討したが、カーター元大統領が訪朝、金日成主席が国際原子力機関(IAEA)査察官の残留などを受け入れたことから危機は回避された。そして同年10月には米朝枠組み合意ができた。使用済み核燃料棒はアルミ容器に密封され、寧辺の貯蔵施設のプール内に沈められた。
第3の「核」は、高濃縮ウラン計画だ。2002年10月ブッシュ政権下で初めて行われた米朝高官協議は、新たに浮上したこのウラン濃縮計画をめぐって決裂した。朝鮮半島エネルギー開発機構(KEDO)が北朝鮮への重油供給を停止したことに反発した北朝鮮は、同年12月にIAEA査察官を寧辺から追放した。翌2003年1月には使用済み核燃料棒を貯蔵施設から運び出し、トラックに積み込む様子を米国の偵察衛星がとらえた。
第4の「核」は、北朝鮮が2003年初めに再稼働させた黒鉛減速炉の中にある核燃料棒だ。2005年4月には稼働停止が米当局によって確認された。同年7月、北朝鮮は国連代表部を訪れた米政府高官に「使用済み核燃料棒8000本の再処理を完了した」と通告。その前後、米軍偵察機は北朝鮮周辺の大気から、プルトニウムを抽出する際に発生する放射性ガス、クリプトン85を検出した。さらに「核兵器庫を増やすのに必要な措置を引き続き講じている」と述べ、核兵器増産の意思を強調した。
北朝鮮の当面のねらいは、脅威のレベルを一段と上げて米国を直接対話に引き出すことにある。北朝鮮の核問題をめぐる6者協議は2005年11月以来、開かれていない。
北朝鮮は、米国による金融制裁の解除を協議復帰の条件としているが、米政府は6者協議の場で直接対話も可能だとしているものの、制裁解除には応じる気配をみせていない。長距離弾道ミサイル「テポドン2」など今年7月のミサイル発射に続く核実験は、北朝鮮がそれほどまでに追いつめられている現状を反映していると言える。
今年7月4日に日本列島を飛び越えて太平洋に落下したテポドン2号、および昨日10月9日に行われた地下核実験は、それぞれアメリカの祝祭日である独立記念日、コロンブス・デーに合致し米国へのけん制を物語っている。また、テポドン2号発射に続く「核実験宣言」では、「自衛的戦争抑止力を強化する新たな措置」として3点を列挙。最初に核実験の実施を宣言した後、核兵器の先制使用や核の移転を否定し、3項目で「対話を通した朝鮮半島の非核化実現へ、我々の原則的立場は変わらない」と述べ、対米交渉の実現を熱望している様子が伺える。
これまで、北朝鮮のブラフであろうと甘い見方をしていたが、ここに来て核実験が実施されたことで、アメリカ、中国をはじめとし、アジア諸国、ロシアの北朝鮮に対する更なる制裁措置が始まる。これほどの経済制裁のリスクを犯してまで、核兵器を持つその理由としては、北朝鮮が念願としている南北朝鮮の統一であり、それも主体思想による統一への野望であろう。朝鮮半島有事のとき、米国を核で脅かしながら傍観者にして、北朝鮮主導で韓国と一体化を狙う。そのための核戦略なのだろう。果たして、北朝鮮の野望は,この先どんな不幸を巻き込でいくのだろうか?
イラクと北朝鮮では、想定される最悪のシナリオが決定的に異なってしまった。北朝鮮には、核兵器の存在が実際のものとなったのだ。かけがえのない美しい地球を、破壊するようなことがあってはならない。子供たちが安心して暮らせる世界を築くため、我々は英知を集結して取り組まなければならない。そのためには、もっと関心を持って今後の動向に注目していかなければならない。