tetujin's blog

映画の「ネタバレの場合があります。健康のため、読み過ぎにご注意ください。」

ケチャダンス(kecak)

2008-06-03 22:37:10 | 日記

ウルワツ寺院の遊歩道の先に、ケチャダンスの舞踏場があった。円形の広場になっていて、その周りには、海に一片を切り取られる形で、半円状に囲んだ8段の階段状観覧席がある。天気が良ければ一番高い列の席から海に沈む夕日が見えるのだろうが、今日はあいにくの曇り空なので、正面最前列のかぶりつきの席に座る。

円形の広場には、オイルを燃料にした松明が置かれ、そのまわりに、ファイヤーダンスでつけられたススの黒い跡があった。中央の松明に火がともされ、独特の歌声と共に半裸の男たちが入場して、聖水による清めの儀式の後、ケチャがはじまる。男たちの衣装は、上半身は着衣無しで、赤い帯に白と黒のチェック模様の短い腰巻きをまき、右耳に赤のハイビスカスの花をかざっている。
数十人の男達は車座に座り、両手を上げて「チャ!チャ!チャ!」と合唱。肩を震わせ、指、顔、全てを小刻みに動かす。踊りというより宗教儀式だ。リズムを刻む人々やメロディっぽい部分を担当する人など色々なパートに分かれていて、それが複雑に絡まって見事な音楽を作り上げていた。そのうち、ラーマーヤナの物語がはじまり、女性のダンサーが美しくゆっくりした動きを見せる。それを取り囲む男たちとの対比が際立つ。
舞踏劇は踊りが中心なのだが、途中台詞も入る。言葉は理解できずとも踊りで感情を表現しており、ストーリーは想像がつく。王子様がとらわれて、悪者と戦って、サルやらの動物たちが出てきたり・・・・・・。
舞踏劇が進行して物語が一通り終わると、ラストはファイヤーダンス。

男たちが周りに下がって、広くなった広場の中央を囲んで藁を何箇所かに積み上げて、オイルをかけるといきなり点火。いくつもの見事な火柱が目の前に現れた。白い馬を模した木馬にまたがった男が登場し、もえさかる火柱の中に突入。そして、火の粉を撒き散らしながら、火がついた藁だかをそこら中に蹴って散らして踊り始める。火の粉は夕暮れの薄明かりに舞い、西からの風に吹き流されて観客席の方にも飛んで行く。このクライマックスのファイヤーダンスは、夕闇に浮かぶ炎が神秘的で、かつ、幻想的でなんとも言えない余韻が残った。
ぼくは、また一つ、バリのホワイトマジックにかかっていた。