学生の頃、夏休みを利用して2ヵ月ヨーロッパを旅した。発刊されたばかりの、ガリ版で印刷しホッチキス止めの「地球の歩き方」を片手のひとり旅だった。
旅先で多くの人々に出会い、お互いに旅の話を交換した。
リスボンで部屋をシェアしたカナダの青年とお茶をしてた時に、イスの下に置いたバッグごとパスポートと財布、そしてニコンの一眼レフを盗まれた。
銀行に行き、盗まれたトラベラーズチェックの再発行を依頼するも、発行元のシティバンクからの連絡待ちとなり、当座しのげる分しか再発行してもらえなかった。確か金額にして100ドル程度。当時のレートで約一週間分の滞在費だった。パスポートは日本大使館で再発行となった。
そうした手続きに追われて銀行と大使館を往復していたある日、見知らぬ地元の男から日本製のカメラを買わないかと持ち掛けられた。モノは見てないが、明らかにぼくが盗まれたカメラだ。
数年後、テレビで大沢たかお氏が主演の映画「深夜特急」に、似たようなシーンがあった。
当時、旅に慣れていない日本人が旅先で盗難にあるケースがいくつもあった。
盗まれた時は、精神的にへこむがそれを乗り越えなければならない。乗り越えたことで、人生はなんとかなるものとの思いを抱いたが、それも若気の至り。実際にはどうにもならないことがあることを、その後の人生で悟った。
苦境を乗り越えたつもりだったポルトガル。朝ごはんに何を食べてたかなんて思い出せやしない。
それでも、いろんなことに心を動かされてた若き日々。甘くほろ苦い思い出の味。