商業登記通達においては、「会社の目的の具体性については、審査を要しないものとする。」とされたのみであり、適法性、営利性及び明確性については、従来どおり審査の対象となることは、再々述べたとおりである。
しかし、「論点解説 新・会社法」11頁では、「会社の目的である事業が営利性を有するか否かにかかわらず、会社がその事業としてする行為およびその事業のためにする行為は、すべて商行為とみなされる(5条)。」と述べられており、営利性を有しない事業目的も認められるがごときである。困りますね。
また、武井一浩著「会社法を活かす経営」(日本経済新聞社)16頁でも、「旧商法では、営利目的であることなど事業目的・内容面での規制があったが、会社法では、会社法の手続に則って設立されたものが『株式会社』であるとされた。病院や学校など、非営利事業を行う組織が『株式会社』という器を利用する場合にも、会社法に従って株式会社を設立することとなる。」と述べられている。困りますね。
これらは、学校や病院の経営といった一般的には営利性を有しないとされてきた事業目的も認められうる(もちろん許認可は問題となる。)という意味では正しいが、まったく収益を生まない事業を目的として掲げることを登記実務は容認するものではないので、注意が必要である。
CSR経営が叫ばれる昨今、収益を生まない公益事業を行うことも企業に求められるであろうが、どうしても掲げたいのであれば、定款に別条を立てる(任意的記載事項として)のがよいと考える。もちろん登記はされないが、定款に規定を置くことで株主又は債権者に対して公示できることとなるからである。