司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

目的の営利性について②

2006-06-13 23:07:08 | 会社法(改正商法等)
 旧商法下の登記実務では、会社の目的について、適法性、営利性、具体性及び明確性の4要件を充足する必要があるとして、審査の対象とされていた。ところが、会社法施行に際して、具体性についてはパブコメが実施され、通達において「具体性については、審査を要しないものとする」とされた。しかし、営利性等については、パブコメは行われず、通達においてもまったく触れられていない。

 このような場合、営利性等については従来どおり審査の対象となる、と解されるのである。営利性に関して、従来の実務を変更するのであれば、「営利性については、審査を要しない」と明らかにすべきであって、何の言及もなければ従来どおり、ということになる。

 会社が営利社団法人であるということと、個々の事業の営利性とは別の問題である。非営利事業がそれ自体収益性がなくても、会社の収益増加に大きく貢献することはあるかもしれない。しかし、それを目的として掲げ、登記により公示する必要性はないと考える。
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株式会社が100%自己株式を取得することの可否について

2006-06-13 22:41:59 | 会社法(改正商法等)
 6月12日付「全部取得条項付種類株式の功罪」について、葉玉さんから反撃を受けてしまった(^^)。http://blog.livedoor.jp/masami_hadama/archives/50854708.html

 株式会社が100%自己株式を取得することの可否については、平成13年の金庫株解禁の折に、下記のとおり法務省の見解が示されており(郡谷さんも名を連ねておられる。)、私の立場は概ねこれに従うものである。自己株式の取得について、会社法では自由度が増したとは言え、旧商法時代の解釈を変更するだけの理由はないと考える。
 なお、「株主総会を開催する時だけ自己株式を株式会社以外の者に取得させ、その時以外は100%自己株式にしておくことを容認できるとすると、同族会社の判定はどうなる?」という疑問もあるようだ。

(以下、引用)
 改正法は、取得価額の総額について制限を設けるだけで、取得できる株式の総数について制限を設けていない。これは、会社債権者の保護を図る観点からは、取得価額の総額につき配当可能限度額等の範囲内という制限をかけることで十分であって、取得株式の総数についてまで制限をかける必要はないためである。旧商法210条ノ2は、取締役等に譲渡するための自己株式の取得について、取得できる株式数を発行済株式総数の10分の1を超えることができないとしていたが、これは、自己株式の取得および保有を原則として禁止するという立場から、例外的にこれを許容する場合について政策的に一定の限度を設けたにすぎないものである。同様に、譲渡制限会社が先買権者の指定に基づいて自己株式を買い受ける場合についても、取得数の上限を画する規定(旧商法204条ノ3ノ2第7項後段)が削除された。

 なお、取得できる自己株式の総数に制限を設けないときは、会社が発行済株式のすべてを取得することにより、議決権を有する株式がなくなるという事態を招来することも考えられる。この場合、株式会社の必須の機関である株主総会が機能しないことになる。したがって、授権された取得価額の総額の範囲内であっても発行済株式のすべてを取得することは許されない。もっとも、発行済株式の総数を取得することができるとする株主総会の授権決議については、その後の新株発行等があり得ることから、ただちに無効ということはできない。

cf. 原田晃治・泰田啓太・郡谷大輔「自己株式の取得規制等の見直しに係る改正商法の解説」旬刊商事法務1607号
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相続対策、種類株式の活用

2006-06-13 09:04:39 | 会社法(改正商法等)
http://www.nikkei.co.jp/news/main/20060613AT3Y1200212062006.html

 中小企業庁が事業承継対策を練っているという話だったが、経営を引き継がない相続人の相続税負担を軽くするために、議決権のない株を相続する場合は、議決権のある普通株より相続税評価を20%程度減少させる内容を取りまとめたようである。
 会社法上はバラエティに富む種類株式の活用が考えられるが、税務の取扱いが明らかでないことから、活用に抑止力が働いているのが現状。妙策であることを期待したい。
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