司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

取締役の就任承諾と株主総会議事録の記載の援用

2010-11-03 17:46:48 | 会社法(改正商法等)
 取締役の就任による変更の登記の申請書には,就任を承諾したことを証する書面を添付しなければならない(商業登記法第53条第1項)。

 ただし,株主総会の席上で被選任者が就任を承諾したことが株主総会議事録の記載から明らかである場合には,登記申請書において「就任承諾書は,株主総会議事録の記載を援用する」と記載すれば足りるというのが従来から定着している登記実務である。

 ところが,最近,新任の取締役に関しては,株主総会議事録に就任承諾の旨の記載がある場合においても,就任承諾書を添付せよとか,株主総会議事録に被選任者も記名押印せよとかいう行政指導(?)がされるケースが増えているようである。

 理由は,「被選任者本人の意思が顕れていないから」ということらしい。

 思い当たる事件と言えば,ジョージ・ルーカス,スティーブン・スピルバーグ及びマーティン・スコセッシの3氏に関する下記の事件であるが・・。

cf. 平成22年4月21日付「本人に無断で理事就任の登記をした事件」

 上記記事でコメントしたとおり,「就任承諾書について,議事録の記載の援用が認められている取扱いも,否定されることになるかもしれない」という方向に進みつつあるようなのである。

 先日お邪魔した釧路会の方から聞いた話では,札幌法務局管内では,2~3年前から,そのような行政指導(お願い?)がされているとのこと。

 法律上第三者責任を負うべき役員の就任承諾に関して,慎重に取り扱うべきはもちろんであるから,登記所のお願いも理解できなくもないが,定着している登記実務を覆すのであれば,相応の対応をすべきであろう。
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不自然な養子縁組~法務省が全国実態調査

2010-11-03 12:37:13 | いろいろ
讀賣新聞記事
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20101103-00000012-yom-soci

 養子縁組ビジネスなど,不自然な養子縁組が蔓延している問題で,法務省が全国実態調査を行うそうである。

 「現場レベルでふさわしい対応策を検討している」とあるが,極めて不自然であっても,養子縁組の意思があるものを不受理にはできないことから,果たして・・・。
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企業内司法書士

2010-11-03 07:56:23 | 会社法(改正商法等)
 コメント欄に質問あり。

Q.「社内弁護士」というのは近年よく耳にしますが,「社内司法書士」というのは,法令上または司法書士会の制度上、可能なのでしょうか。もし可能だとすると,どのような点に留意する必要があるのでしょうか。

A.
 司法書士の兼業に関しては,法律上明文の禁止規定はない。ただし,「司法書士は,その業務を公正・迅速・誠実に行い,かつ,品位及び秘密の保持を担保し得る限りにおいては,兼業を禁止されていない。」とされている。

cf. 平成17年5月17日付「司法書士の兼業規制」

 そして,司法書士が企業に雇用されるケースに関しては,いわゆる非司法書士の取締り(「司法書士会に入会している司法書士又は司法書士法人でない者(協会を除く。)は、第3条第1項第1号から第5号までに規定する業務を行つてはならない」(司法書士法第73条第1項))の観点もあり,原則として,登録を認めない取扱いであるようである。

 参考になる公権解釈としては,規制改革会議「全国規模の規制改革要望に対する各省庁からの再回答について(平成19年8月15日)」における法務省再回答がある。
http://www8.cao.go.jp/kisei-kaikaku/accept/200706/0815/0815_1_09.xls
※ NO.5044001

「会社員(法務関連部門)を続けながら司法書士登録をし司法書士業を兼業したい」という方からの要望に関して,法務省の再回答は,次のとおりである。

「登録審査は,基準に適合しているか日本司法書士会連合会が審査するものであり,日本司法書士会連合会の審査は法務省の解釈に拘束されるものではないが,司法書士と会社員の兼業を認めた場合,当該司法書士は会社での勤務中は依頼に応ずることができず,司法書士業務で知り得た依頼人の情報が会社での業務に利用にされかねないなど,依頼に応ずる義務(司法書士法第21条),秘密保持の義務(同第24条)等の司法書士法上,司法書士に課せられている義務が遵守されなくなるおそれがあるなどの事情があるようなケースでは,司法書士と会社員の兼業を認めることが適切ではないものと考える。
 いずれにしても,登録を求める者の置かれた状況は,各人ごとに千差万別であり,登録審査は,個々の事案を考慮しつつ,個別に日本司法書士会連合会において適合性を判断するほかないと考える」


 私は,例えば,企業の法務部員のような形で「司法書士登録はするが、司法書士業務を行わない」タイプの司法書士を容認してもよいのではないかと考えるが,司法書士法第16条第1項1号が,「引き続き2年以上業務を行わないとき」は,日本司法書士会連合会は,その登録を取り消すことができると規定していることもあり,現行法上は,容易ではない。

cf. 平成20年6月20日付「第70回日司連定時総会終了」

 というわけで,認められる例がないわけではないが,現時においては,個別具体的事情に鑑みて判断される問題であり,上記法務省再回答を斟酌いただくしかない,です。
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