清算株式会社の貸借対照表の純資産の部は,項目で区分されない(会社法施行規則第161条第3項)。「資本金」「資本準備金」「その他資本剰余金」という区分がないのである。
したがって,清算株式会社が募集株式の発行等を行っても,資本金の額は増加しないものとして登記実務は取り扱われているようである。
cf.
平成25年1月10日付け「清算株式会社における募集株式の発行等」
それでは,清算株式会社が「会社の継続」を決議する場合,継続後の資本金の額等は,どのように考えるべきか?
従来の登記実務は,漫然と,解散前の資本金の額のままで,何の疑問も持たれなかった。
しかし,会社法施行後,上記のように取り扱われているのであれば,「会社の継続」を決議する際に,同時に,株主総会の決議により,当該株式会社の純資産の額を「資本金」「資本準備金」「その他資本剰余金」に振り分けることとすべきであろう。
この際,従前の資本金の額が例えば5000万円であり,会社継続後の資本金の額を1000万円と定める場合,資本金の額の減少となるが,会社法第447条等の規律は及ばず,いわゆる債権者保護手続等を別途とる必要はないと考える。
このように考えないと,清算手続において,弁済を行った後,残余財産が1000万円残った状態で,「会社の継続」を決議する場合,資本金の額=5000万円,その他剰余金の額=△4000万円の状態でスタートすることとなり,甚だ不合理であるからである。
逆に,従前の資本金の額が例えば1000万円であり,会社継続後の資本金の額を5000万円と定める場合,資本金の額の増加となるが,会社法第450条の規律は及ばないと解される。増加した資本金の額に応じた登録免許税は,もちろん必要である。