平成18年改正医療法(平成19年4月1日施行)による改正前の医療法の下で設立された社団である医療法人(同改正後に「持分の定めのない医療法人」に移行したものを除く。)は,「持分の定めのある医療法人」であって,その社員の出資持分は,経済的価値を有する財産権であり,定款に反するなどの事情がない限り,一般に譲渡性が認められている。
cf. 厚生労働省HP
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/dl/houkokusho_shusshi_09.pdf
※ 12頁
しかし,医療法には明文の規定が置かれていない。
そのため,医療法人の社員の持分の一部譲渡の可否等について争いになった事例として,福岡高裁平成26年3月26日判決(判例時報2242号66頁)がある。ただし,上告受理申立てがされており,未だ確定はしていないものと思われる。
争点は,
(1)持分の一部を譲渡することができるか
(2)一部譲渡について社員総会の承認決議が必要か
等であったようである。
福岡高裁は,次のとおり判断している。
(1)について
「出資持分の一部を他の社員に譲渡する場合,それは社員資格の変動を伴わず,この譲渡によって医療法人の資産が出資持分の払戻として持ち出されるわけではないから,この譲渡が医療法第54条に反するものであるということはできず,医療法及び被控訴人(※医療法人)の定款がこれを一切許容しないものであるとまで解するのは相当でない」
(2)について
「被控訴人においては,出資持分総額に占める割合が高い出資持分を有する社員であっても1個の議決権を有するにすぎないが,その社員が退社する場合は,出資持分の払戻を受けることができるのであるから,被控訴人にとって,出資持分の譲渡は重要な問題である。すなわち,どの社員がどの程度の出資持分を有しているかは医療法人の存立基盤に関わる事項であるから,本件贈与に係る出資持分の一部譲渡は,本件定款第25条第8号の「その他の重要な事項」に該当し,社員総会の議決を有するものと解すべきである」
※ 本件においては,現実には社員総会の承認決議はなかったが,実質的には社員全員の承認があったものと認められるとして,本件贈与を有効と判断している。
cf.医療法
第54条 医療法人は,剰余金の配当をしてはならない。
定款例
http://www.mhlw.go.jp/topics/bukyoku/isei/igyou/igyoukeiei/ruikei.html