司法書士内藤卓のLEAGALBLOG

会社法及び商業登記に関する話題を中心に,消費者問題,司法書士,京都に関する話題等々を取り上げています。

「大企業の「資本金を1億円以下に減らして節税」の動きに総務省が「待った!」…何が問題なのか」

2023-11-10 05:21:04 | 会社法(改正商法等)
THE GOLD ONLINE
https://gentosha-go.com/articles/-/55789


 わかりやすくてよい記事であると思われる。だが,

「なお、会社が株主から出資を受けた額のうち2分の1未満の額については「資本準備金」として資本金に計上しなくてもよいことになっています。たとえば、出資の総額が1,000万円だった場合、500万1円まで資本金に計上すればよいということです。資本準備金は株主への配当に充てることもできます。」(上掲記事)

 え~。「2分の1未満の額」ではなく,「2分の1を超えない額」なのだが・・。

会社法
 (資本金の額及び準備金の額)
第445条 株式会社の資本金の額は、この法律に別段の定めがある場合を除き、設立又は株式の発行に際して株主となる者が当該株式会社に対して払込み又は給付をした財産の額とする。
2 前項の払込み又は給付に係る額の二分の一を超えない額は、資本金として計上しないことができる。
3 前項の規定により資本金として計上しないこととした額は、資本準備金として計上しなければならない。
4~6 【略】

「ここでは、減資した分の金額について既存の株主への配当を行わない「無償減資」について解説します。」(上掲記事)

 ん~,いつの時代のお話か。

「無償減資は、減資した分の金額を前述した「資本準備金」や「利益剰余金」に振り替えることをいいます。大企業の場合、1億円以下に減資しようとすれば主に「利益準備金」に振り替えることになります。」(上掲記事)

「利益剰余金」,「利益準備金」に振り替える??  この弁護士さん,大丈夫か?

「この「催告」は、あらかじめ定めておけば、新聞広告、公式HPで告知すればよいことになっています。」(上掲記事)

 一般向けの解説とはいえ,何だかなの感。

「たとえば、資本金だけでなく、資本金と「剰余金」の合計で判断する方向性が考えられます。剰余金のなかでも「利益剰余金」が資本金より大きく上回り億単位になる会社を「中小企業」というのは、社会通念とも整合しません。」(上掲記事)

「剰余金」という括りではなく,「資本剰余金(資本準備金及びその他資本剰余金)」である。

 アラ探しのようで申し訳ないが,折角よい記事なので,できれば正確に。
コメント

簡易合併の可否(異聞)

2023-11-10 04:37:00 | 会社法(改正商法等)
子会社の吸収合併に伴う特別損失(抱合せ株式消滅差損)の計上に関するお知らせ
https://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20230712520889/

「なお、本吸収合併により当社の個別財務諸表において特別損失を計上することとなりましたこと、及び本吸収合併を簡易合併で行ったことをお詫び申し上げます。」(上掲お知らせ)

 いやいや,差損を生ずる吸収合併では,株主総会の承認が必要で,簡易合併は不可(会社法第796条第2項柱書ただし書,第795条第2項第1号)なのであるから,「お詫び」で済む問題ではなく,「合併無効」であるはずだが。

cf. 平成23年4月15日付け「簡易合併の可否」

 この種の例は,決して稀ではない。知ってか知らずか,簡易合併後に,「抱合せ株式消滅差損の計上に関するお知らせ」を流して何食わぬ顔の上場企業もあるので,「お詫び」するだけマシともいえる?

 本来は,

「本合併に伴い、特別損失(抱合せ株式消滅差損)の発生が見込まれるため、会社法第796条第3項および第795条第2項第1号の規定により2023年12月に開催予定の定時株主総会の承認が得られることを条件としております。」(後掲お知らせ)
※ 会社法第796条第3項??

が正しいやり方である。

cf. 完全子会社の吸収合併および特別損失(抱合せ株式消滅差損)の計上に関するお知らせhttps://www.nikkei.com/nkd/disclosure/tdnr/20231109583846/

(以下再掲)
 ところで,法務局HPの「商業・法人登記申請」に掲げられている登記申請書記載例(1-22)の「簡易合併の要件を満たすことを証する書面」は,従来から「差損」を顧慮しない内容である。親子会社の吸収合併であれば,無対価であることから,この証明書を不要という取扱いを採っている商業登記所も少なくないようである。

cf. 1-22
http://houmukyoku.moj.go.jp/homu/COMMERCE_11-1.html#1-22

 商業登記所の審査で,「差損」の有無について,なぜノーチェックを貫いているのかが不可解である。

 「差損」の有無は,株主総会の開催の要否に関わり,「差損」が生ずる場合に,株主総会の決議がなければ,合併無効という重大な結果を招く事項であるのだから,「差損が生じないこと」を「簡易合併の要件を満たすことを証する書面」の記載事項とすべきであろう。
(再掲おわり)

cf. 令和2年12月26日付け「債務超過子会社との合併,貸倒引当金を計上していれば合併差損は発生しない?」

 私は,簡易合併に関与する際には,「差損」の有無について会社担当者に対して必ず注意喚起をするし,「簡易合併の要件を満たすことを証する書面」には,「差損を生じない」旨を記載するようにしている。
コメント