世の姿のありかたの よりあるべき規準というものをみつめていくことは、いかに複雑
な事情と要因により形作られ、なんとも不思議極まる情況を経ていく、困難なものであ
ることだろう、と、思わずにはいられない判例が令和5年にだされていました。
多くの学習者の方は、それなりの折の時に、見聞きしていることなのかもしれませんが、
あるブログ記事を検討している折に、先日、参考にしたのでしたが、本日あらためて、
日曜日の事務所内で、また、眺めさせていただいたのでした。
性同一性障害特例法 における性別変更のための要件の合憲性 について
の 最高裁大法廷決定 です(全体は、そうとうな長文です。学習のため
にでしたら全体を読むことが好いとは思いますが補足・反対意見の部分を
除くと、10ページまでです)。
全体のなかから、拾い読みしたとき自身は特に確認した部分、の羅列です。
(太字にしてある部分は、私自身の加工です。
ご容赦を)
本件は、生物学的な性別は男性であるが心理的な性別は女性である抗告人
が、性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律(以下「特例法」
という。)3条1項の規定に基づき、性別の取扱いの変更の審判を申し立
てた事案である。
性同一性障害とは、生物学的な性別と心理的な性別が不一致である状態を
いい、医学的な観点からの治療を要するものである。今日では、心理的な
性別は自己の意思によって左右することができないとの理解の下に、心理
的な性別を生物学的な性別に合わせることを目的とする治療は行われてお
らず、性同一性障害を有する者の社会適応度を高めて生活の質を向上させ
ることを目的として精神科領域の治療や身体的治療が行われている。
特例法3条1項4号(以下「本件規定」という。)は、「生殖腺がないこ
と又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。」と規定するところ、
本件規定に該当するためには、抗がん剤の投与等によって生殖腺の機能全
般が永続的に失われているなどの事情のない限り生殖腺除去手術(内性器
である精巣又は卵巣の摘出術)を受ける必要があると解される。原審の確
定した事実によれば、抗告人は、生殖腺除去手術を受けておらず、抗告人
について上記事情があることもうかがわれない。
性同一性障害を有する者については、治療を受けるなどして、性自認に従
って社会生活を送るようになっても、法令の規定の適用の前提となる戸籍
上の性別(以下「法的性別」という。)が生物学的な性別によっているた
めに、就職等の場面で性同一性障害を有することを明らかにせざるを得な
い状況が生じたり、性自認に従った社会生活上の取扱いを受けられなかっ
たりするなどの社会的な不利益を受けているとされている。
性同一性障害を有する者について、まず精神科領域の治療を行うことは異
ならないものの、身体的治療を要する場合には、ホルモン療法、乳房切除
術、生殖腺除去手術、外性器の除去術又は外性器の形成術等のいずれか、
あるいは、その全てをどのような順序でも選択できるものと改められた。
令和2年以降、一部の女子大学において法的性別は男性であるが心理的な
性別は女性である学生が受け入れられるなどしている。
本件規定は、性同一性障害を有する者のうち自らの選択により性別変更審
判を求める者について、原則として生殖腺除去手術を受けることを前提と
する要件を課すにとどまるものであり、性同一性障害を有する者一般に対
して同手術を受けることを直接的に強制するものではない。しかしながら、
本件規定は、性同一性障害の治療としては生殖腺除去手術を要しない性同
一性障害者に対しても、性別変更審判を受けるためには、原則として同手
術を受けることを要求するものということができる。
性別変更審判を受けた者が変更前の性別の生殖機能により子をもうけると、
「女である父」や「男である母」が存在するという事態が生じ得るところ、
そもそも平成20年改正により、成年の子がいる性同一性障害者が性別変
更審判を受けた場合には、「女である父」や「男である母」の存在が肯認
されることとなったが、現在までの間に、このことにより親子関係等に関
わる混乱が社会に生じたとはうかがわれない。
本件規定による身体への侵襲を受けない自由に対する制約は、上記のよう
な医学的知見の進展に伴い、治療としては生殖腺除去手術を要しない性同
一性障害者に対し、身体への侵襲を受けない自由を放棄して強度な身体的
侵襲である生殖腺除去手術を受けることを甘受するか、又は性自認に従っ
た法令上の性別の取扱いを受けるという重要な法的利益を放棄して性別変
更審判を受けることを断念するかという過酷な二者択一を迫るものになっ
たということができる。
本件規定による身体への侵襲を受けない自由の制約については、現時点に
おいて、その必要性が低減しており、その程度が重大なものとなっている
ことなどを総合的に較量すれば、必要かつ合理的なものということはでき
ない。
よって、本件規定は憲法13条に違反するものというべきである。
地方公共団体においては、近年、いわゆるパートナーシップ制度が飛躍的に
拡大している。この制度は、地方公共団体によって違いはあるものの、一般
に、婚姻していない二人が生活上のパートナーである旨の宣誓の届出を受理
して証明すること等を内容とする制度であり、性的指向や性自認等の点で性
的少数者とされる者について、社会生活上の不利益を軽減し、人格や個性を
尊重する社会の形成に資すること等を目的とする。
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当初は、同性の二人を対象とする制度であったが、現在は、異性の二人をも
対象とする制度が一般的であり、性別変更審判等に関わらず性同一性障害を
有する者の利用が広く考慮されている。さらに、最近では、パートナーシッ
プ制度と併せて、子や親を含め、ファミリーシップ制度を設ける地方公共団
体も増加している。
5号規定は、治療を踏まえた医師の具体的な診断に基づいて認定される性同
一性障害者を対象として、性別変更審判の要件を定める規定であり、5号規
定がなかったとしても、単に上記のように自称すれば女性用の公衆浴場等を
利用することが許されるわけではない。その規範に全く変わりがない中で、
不正な行為があるとすれば、これまでと同様に、全ての利用者にとって重要
な問題として適切に対処すべきであるが、そのことが性同一性障害者の権利
の制約と合理的関連性を有しないことは明らかである。
特例法の制定趣旨は、性同一性障害に対する必要な治療を受けていたとして
もなお法的性別が生物学的な性別のままであることにより社会生活上の問題
を抱えている者について、性別変更審判をすることにより治療の効果を高め、
社会的な不利益を解消することにあると解される
特例法の趣旨及び規定の在り方からみて、特例法は、生物学的には性別が明
らかであるにもかかわらず、心理的にはそれとは別の性別であるとの持続的
な確信を持ち、かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようと
する意思を有するという、その心理的及び意思的な状態を基本的な要件とし、
一般的な医学的知見に基づく医師の診断によりこれらが認められる者につい
て、法令上の性別の取扱いの特例を認めることを基本的内容とするものと解
される。
5号規定が違憲と判断される場合、本件規定の場合と同様に、5号規定だけ
が無効になると解されるところであるが、本件規定及び5号規定が無効にな
るとすると、特例法3条1項1号から3号までに係る要件のほか、特例法2
条の性同一性障害者の定義に係る要件だけが残ることになるから、特例法の
趣旨等に照らし、特例法全体が無効となるのか、本件規定及び5号規定だけ
が無効となるのかについて更に検討する。残余の要件により性別変更審判が
されるとすると、特例法の趣旨等に反することになり、司法の判断により新
たな立法をするに等しく、立法権を侵害することにならないかという問題で
もある。
自認する性別と生物学的な性別が一致する者が誤って自認する性別と異なる
性別を戸籍に記載され、その訂正が許されず、生涯、自認する性別と異なる
法的性別を甘受しなければならない状況を想像すれば、性自認に従った法令
上の性別の取扱いを受ける利益が人格的生存にとって不可欠であることにつ
いて、大方の賛同を得られると思われる。さらに、性別変更審判が認められ
た例は、累計で1万件を超えているが、それによって社会的な混乱が生じて
いることはうかがわれず、また、特例法に基づく法的性別の変更が記載され
る戸籍は、一般に公開されないものであり、通常は既に変更されている外見
や名に合致した法的性別に変更するものである以上、他者の権利侵害が、性
同一性障害者の法的性別の変更に伴って生ずるとは考え難い。したがって、
性同一性障害者が性自認に従った法令上の性別の取扱いを受ける利益は、憲
法13条によって保障されると考えてよいと思われる。
5号規定についてもホルモン療法等によって手術をすることなくその要件を満たす
ことはあり得る。女性から男性への性別変更審判を受けた者については、そのよう
な例が多いという調査結果も存在する。もっとも、5号規定についても、男性から
女性への性別変更審判を求める者の場合には通常は手術が必要になるところ、その
手術も、身体への侵襲の程度が大きく、生命・身体への危険を伴い得るものである。
また、5号規定の要件を充足するための手術は不要な場合であっても、当該要件を
満たすために行われるホルモン療法も、重篤な副作用が発生する危険を伴うもので
ある。したがって、5号規定も、性自認に従った法令上の性別の取扱いを受ける権
利と身体への侵襲を受けない自由との過酷な二者択一を迫るものであることは、本
件規定の場合と異ならないといえる。他方において、5号規定を廃止した場合に社
会に生じ得る問題は、もとより慎重に考慮すべきであるが・・・上記のような過酷
な選択を正当化するほどのものとまではいえないように思われる。
憲法13条以外で規定された基本的人権も、表現の自由や信教の自由を考
えれば明らかなとおり、決してその外延は明確ではなく、憲法学者の研究
の大部分は、憲法上基本的人権として明記された権利の外延についての様
々な解釈の優劣に関するものといってよいと思われる。検索エンジンやS
NSの登場によって、表現の自由の外延について新たな議論が必要になっ
たように、技術の進展等を含む社会情勢の変化に伴い、基本的人権の外延
は変動の可能性を伴うのであり、変動する外延を確定していく努力は、判
例や学説に委ねざるを得ないであろう。
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平成十五年法律第百十一号
性同一性障害者の性別の取扱いの特例に関する法律
(趣旨)
第一条
この法律は、性同一性障害者に関する法令上の性別の取扱いの特例について定めるものとする。
(定義)
第二条
この法律において「性同一性障害者」とは、生物学的には性別が明らかであるにもかかわらず、
心理的にはそれとは別の性別(以下「他の性別」という。)であるとの持続的な確信を持ち、
かつ、自己を身体的及び社会的に他の性別に適合させようとする意思を有する者であって、そ
のことについてその診断を的確に行うために必要な知識及び経験を有する二人以上の医師の一
般に認められている医学的知見に基づき行う診断が一致しているものをいう。
(性別の取扱いの変更の審判)
第三条
家庭裁判所は、性同一性障害者であって次の各号のいずれにも該当するものについて、その者
の請求により、性別の取扱いの変更の審判をすることができる。
一 十八歳以上であること。
二 現に婚姻をしていないこと。
三 現に未成年の子がいないこと。
四 生殖腺せんがないこと又は生殖腺の機能を永続的に欠く状態にあること。
五 その身体について他の性別に係る身体の性器に係る部分に近似する外観を備えていること。
2 前項の請求をするには、同項の性同一性障害者に係る前条の診断の結果並びに治療の経過
及び結果その他の厚生労働省令で定める事項が記載された医師の診断書を提出しなければなら
ない。
(性別の取扱いの変更の審判を受けた者に関する法令上の取扱い)
第四条
性別の取扱いの変更の審判を受けた者は、民法(明治二十九年法律第八十九号)その他の法令の
規定の適用については、法律に別段の定めがある場合を除き、その性別につき他の性別に変わっ
たものとみなす。
2 前項の規定は、法律に別段の定めがある場合を除き、性別の取扱いの変更の審判前に生じた
身分関係及び権利義務に影響を及ぼすものではない。
附 則 抄
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から起算して一年を経過した日から施行する。
(性別の取扱いの変更の審判を受けた者に係る老齢基礎年金等の支給要件等の特例に関する措置)
3 国民年金法等の一部を改正する法律(昭和六十年法律第三十四号)附則第十二条第一項第四号
及び他の法令の規定で同号を引用するものに規定する女子には、性別の取扱いの変更の審判を受け
た者で当該性別の取扱いの変更の審判前において女子であったものを含むものとし、性別の取扱い
の変更の審判を受けた者で第四条第一項の規定により女子に変わったものとみなされるものを含ま
ないものとする。
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上記の記事と直接関係があることではないのですが・・・判例を眺めながら ボンヤリ
思っていること は ・・・・
世はマスマス複雑になった、というよりは、複雑であったということが巷に明らかにな
る場面が増した、というか、サマザマな疑問をサマザマな手法で発信する手段が圧倒的
に増えたということなのでしょう か ?
別な表現をすると、現実には存在していたなんとも悩ましい懸案も世に出現するまでは
不存在と同様なままでジッとこごまったままでいる・・・そうしたアタリマエのことな
のだ・・・でも 様相が明らかに変わってきた、 とも解釈できようか・・・
情報に関する発信・獲得のサマザマな手法の次元違いの変化とともに世のアレコレのこ
との巷に登場する量が、そして、その質も、けた違いに変わった 色 形 でも触れ得
るようにはなってきた、ということなのでしょうか?
なんだか アーダコーダと書きなぐってしまっている最大の理由は、明らかです、
あまりの情報の過大さに、ヘキエキしていることが、おおよそ わかるから です。
それなら、その邪魔だと思えてしまうものに近づき過ぎないよう心してかかれば
いいじゃない か、と、自身に言い聞かせてはいるのですが・・これが ナカナカ
テゴワイ
なんということなどをも、ボソボソ つぶやいている
只今 15時30分 。