おてんとうさんのつぶやき & 月の光の思案 + 入道雲の笑み

〔特定〕行政書士/知的財産管理技能士/国家試験塾講師等が生業の巷の一介の素浪人の日常

実務との差?

2011-05-26 | ■ 業 務 エ ッ セ イ



弟の手術後の経過が気になっています

良化を祈るのみ(ガンバレ)







先日 ある試験に挑戦しました
そのなかの問題
◆ 判例によれば、共同相続が生じたとき、相続財産を構成する金銭は、相続開始と同時に各自の相続分に従い当然に分割され、遺産分割の対象とならない

これは 正しいのか?

短文ですが 判例を読んでいないとすると
論点が多く想起され なかなか手強いことになりました


金銭債権 と 現金(金銭)
可分債権と遺産分割対象の当否判別
判例における結論と その拠って立つ根拠
実務との兼ね合い
などなど
いろいろと考えさせられました

判例の結論だけ把握していれば どーーってことない問題
とアッサリ片づけられる方もいるのでしょうが
理由付けと整合性を追うと 頭が痛くなります(私の理解力では)


参考判例
★[A]  相続財産中の可分債権は法律上当然分割され各共同相続人がその相続分に応じて権利を承継する。
(最判昭29・4・8)

★[B] 共同相続人の一人が、相続財産中の可分債権につき、その相続分を超えて債権を行使した場合には、他の相続人の財産に対する侵害となるから、侵害を受けた相続人は、侵害した相続人に対して、不法行為に基づく損害賠償または不当利得の返還を求めることができる。
(最判平16・4・20)

★[C] 相続人は、遺産分割までの間は、相続開始時に存した金銭を相続財産として保管している他の相続人に対して、自己の相続分に相当する金銭の支払いを求めることはできない。
(最判平4・4・10)






価値として可分な金銭(現金)が遺産中にある場合に 上の判例からすると ある意味預金債権よりも遺産分割の対象にならない(相続分に応じて当然に分割され 遺産分割という観念を
入れる余地がない)とも理解されそうですが 判例は上記のように異なる理解 です

つまり
§金銭は 個性を持たない点で特殊であるとはいえ
動産の一種
にほかならず遺産分割において他の有体物と異なる取り扱いをする根拠がない

§金銭債権だとその債務者という第三者との関係への考慮が必要だけど金銭はもっぱら共同相続人間の問題である

§金銭は 遺産分割手続における不動産・動産等の分割の結果生ずる不均衡の調整に便利である

要するに遺産分割の対象として最後の砦?的な役割があるので当然分割は避ける(つまり遺産分割の対象として残しておく)
ということなのでしょうか?

一般常識的に考えると 現金は一番手っ取り早く分割され
各々の相続分に応じて手元に渡る
ように思われますが 最後の調整役にまわされる
ということで 実務上の要請をモロに受けたような?結論とも
思えてしまいます

実務の要請
これが なかなか手強く 
一般人の常識感覚や法的な理論付けをも蹴散らすようなことに
なってしまう ような?


上の問題文に関連してですが
遺産分割関係の仕事をなさったことがある方なら金融機関の
相続預金
の払い戻し実務は 相続財産中の預金債権につき共同相続人の一人が遺産分割前に払い戻し請求をした場合 各人の相続分の範囲でも応じていないことが通常 だという実態があると思われます
が この運用は
上の判例理論からすると整合性のない扱いと言わざるを得ません(当然分割承継 というのですから 各人が各人の分はためらいなく獲得できるはず)
もっとも
訴訟にまで持ち込めば 相続分に応じた払い戻しを認めているようです(東京地判平10・2・13等)が



各人の請求に一々応ずるのが煩わしいし
相続人間でのトラブルに事実上巻き込まれるのを避ける
ためでしょうが なんとも説明に窮する扱いだと 私は思います



というわけで 本日は 一般の方にも多少参考になる?かも
しれない けど やや専門的すぎるともいえる
記事になってしまいました



最後に 問題の答えは [C]の判例からして 「誤り」 としましたが
果たして それでよかったのか?
自信のないことを載せ ほんとうにスミマセン
あまり納得できませんが
 誤り 
と答えなければならないのだ と考えます

今日の記事に関連したことを以前にも載せました
が いつ頃だったか 忘れてしまいました


           
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