ダイバーシティ、インクルージョン、グローバル化、シニア雇用、グループ人事、女性活躍推進、メンタルヘルス、働き方改革など企業組織をめぐる人事労務は、かなり大変な状況になっています。
ルーティンの人事仕事をしているだけでは、組織の衰退や企業の不活性化、リテンションなどに結びついていくことになります。
さらに、労働者は、Webで簡単に労働法、労働裁判判例を検索することができ、労基署への通報、裁判への進展は日常的なものとなっています。最近では、三回完結の労働審判やADRといった労働紛争解決の方法も普及しつつあります。
そんな中、楠田祐・大島由紀子著「破壊と創造の人事(ディスカバー21刊)」で、「戦略的人事」というコンセプトを掲げ、人事のあるべき象、ありたい姿を提示しています。
◆人事担当者に求められるスキルや知識
- 労働法規の知識
- 産業心理学の知識
- 統計学の知識
労働法に精通していることは当然・・・あとは、働く人たちのモチベーションの向上、人的資源の最大限の活用といった点が大切になります。
ヒューマンだがロジカル、リーガルマインドを持った人材が人事部に必須となった時代だと思います。
◆人事外部との関係
- 経営陣との連携
- 働く人たちの「現場」との関係
- 異業種の人事の人たちとの関係
- 外部専門パートナーとの関係
こちらも当然の社内外のリレーシーョンづくり・・・。
人事部のデスクで一日過ごすのではなく、「歩き回るマネジメント(MBWA)」は必須の仕事になると思います。
◆人事担当者に必要な3つのビジネスリテラシー
- 人事の専門能力
- ITビジネス能力
- ソリューション能力
◆人事担当者に必要な3つの資質
- ロジカルシンキング・・・情報を重なりなく漏れなくとらえる力、課題と実効策を常に連動させる力、実効策を総合的に構成する力
- やる気
- リーダーシップ・・・人を尊敬し大事にすること、自分で自分のヤル気を呼び起こせること、人の話を聞いて反省できること、自分自身がわかっていること
人事労務担当者の多くは文系・・・なかなかロジカルに数字、データを土台として議論できるスキルを有していない傾向にあります。
以前であれば、浪花節、人情話などのヒューマンスキルで解決できたことも、今では通用しません。
そういえば、団体交渉が深夜におよび、人事部長の机の下から一升瓶を取り出して、労使でコップ酒・・・という古き良き時代もありました・・・笑。
◆人事担当者に必要だが欠けている資質
- 好奇心
- 社交性
- オープンマインド
- 向上心
出来れば、明るい人事担当者であって欲しいですね。
人事部も一時期は、経営幹部への登竜門という時もありましたが、今ではクラーク・・・給料計算や社会保険などの事務処理担当者のロールに近い感じです。
以前のニッポン株式会社の全体を統括する人事部という役割は過去の時代・・・今ではライン部門の人事権の方が強まりつつあります。
高いコミュ力、ヒューマンスキル、ロジカル思考、労働法の知識、モチベーションマネジメント等のスキルが、人事担当者必須となる時代になったようです。
今まで、ハードワーカー、社畜を抱え込んで組織力で世界を凌駕した終身雇用や年功序列、企業内組合の3種の神器も過去のものになりつつあります。
働き方改革やワークライフバランス、同一労働同一賃金、長時間労働の是正などに対応していくためにも、職務給を中心とした仕事給へのシフトも必要不可欠です。
さらに、AIやHRテクノロジーが、採用や異動、昇進、昇格、評価などに大きな影響をもたらすのも、すぐそこに来ています。
人事の仕事そのものが経営トップの機能になり、人事部自体がなくなるということが起こるかもしれません。
ムダを剃り落としていくと最終的にはロボットが働く無機質な組織になると思います・・・そんな会社では働きたくないですよね(笑)。