能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

マネジメント理論、経営理論を世のため人のために役立てるために

会社をつぶさないために・・・ 修羅場の中で社長がすべきことは何か?事業再生人からの助言

2014年12月24日 | 本と雑誌

事業再生、倒産法の活用、事業承継・・・。

経営というのは本当に難しいもので、うまくいくほうが「稀」ということが言えると思います。


損益分岐点的に見ると、月初は常にマイナスからのスタート。

営業努力により売上をとりながら、マイナス域からまずはプラマイゼロを目指します。

人件費や家賃、経費などの固定費を回収し、変動費の領域に入っていきます。

そして、損益分岐点を超えて利益の獲得となるわけです。


ただ、この基本的な図式は、多くの要素が順調に推移してのこと、一つ間違えれば・・・運が悪ければ、固定費も回収できない事態となります。


そうです。

経営というのは、まず、うまくいくことは少ないという前提に立って様々な手を打っていかなければならないということが出来るのです。

 

会社は潰れない

 須藤利究著 あさ出版 1500円+税

 

著者の須藤さんは、「事業再生人」。

必殺!仕事人のようでカッコいい肩書です。

著者は、金融機関での20年以上のキャリアを経て事業再生のコンサルタントとして独立。

会社の表も裏も見てきたビジネスパースンです。

さまざまな修羅場を、経営者とともに伴走してきた方だと思います。

同書の冒頭で、著者は述べます。


「断言します。

会社が潰れるか、復活するかは、

経営者の絶対に潰さないという思い、執念にかかっています。

それさえあれば、どんな状況からも再生できるのです。」


会社を潰さないという信念、そして気合と根性・・・そこからがスタートだと。

少し非科学的なような感じもしますが、ギリギリまで追い詰められて、知恵を絞り、血のにじむような努力を積み重ねていかなければ、事業再生は難しいということなのだと思います。

 

目次

第1章 絶対にあきらめるな!本当にあった復活劇

→冒頭部分では、手形の不渡り、銀行による貸しはがし、連帯保証人、自己破産などの生々しい話を紹介。具体的に作って初めて改善案である、資金繰り予定表を活用しよう、銀行の対応が変わってもあわてない、粘り強い交渉が鍵といった教訓を導き出しています。

 

第2章 復活のためにできること

ポイントは資金繰り。様々なバリエーションを提示しています。

・親しい取引先に前払い等の支払い条件の短期化を交渉する(風評リスクを考慮、数社が限界)

・営業が目標数字を超える努力をする(訪問件数を二倍にする等)

・受取手形を何枚かに分けてもらう。これにより割引手形、自社振出手形を減らす。

・在庫の資金化の検討。

・見込み仕入を減らす。仕入は、価格動向、為替変動、需給動向に対応して行う。

・売れる会社資産のリスト作成。

・経費削減の徹底。

・売掛金の回収。

・営業マンが自社の支払い条件を理解する。

・製造業の場合、リードタイム短縮。 ・・・

 

第3章 銀行は敵であり味方

 

第4章 社長と社員の処遇を変えると楽になる

 

第5章 中小企業が生き残る4つのパターン

・内需専念型 ニッチ市場、寡占市場を見つけられるか

・国内資源開発型 自社独自の強み、ダントツ製品

・海外雄飛型 売れるところならどこでも行く

・オンリーワン企業追求型 特殊技術やホスピタリティ

 

第6章 必ず会社を復活させる秘密の方法

 

最終章では、「再生への見極め」ということで、事業再生できる社長のキャラクターを例示しています。

1.  経営悪化を招いた原因を理解しているか?

2.  社長しは再生に耐えうる性格か?ストレス耐性。執念はあるか?

3.  幹部社員にヤル気、問題意識があるか?協力する気持ちはあるか?

ギリギリの状態からの復活には、最低上記の3つの条件が必要とのこと。

それぐらい、事業再生は、修羅場の中での戦いになるということです。

 

また、事業の赤字になっている現状の分析に必要な経営情報の整理について解説されていますが、これは有事というより平時から作成し日々メンテナンスしておく資料だと思います。社

長席というコックピットの計器として機能すると思います。

1.  資金確保のための売却リスト

2.  資金繰り予定表・・・振出手形の決済額、売掛金、買掛金の個別企業ごとの支払や回収期間

3.  固定費の額 向こう3カ月~6か月の売上、仕入などの予想と毎月の実績との検証

4.  取引銀行の支援体制 債務免除、再生までの返済計画の承認

5.  決算書の資産、負債の見直し

6.  企業の動産、不動産の現在価格

7.  不動産担保の状況

8.  簿外債務の有無

9.  連帯保証人の状況・・・家族、第3者

10. 税金、社会保険料等の未納

 

著者が同書の中で訴求していることは、まずは、「危機に陥らない仕組みづくり」。

万が一、有事となっても、強い気持ちを持って、諦めず、知恵を絞り、行動すること。

修羅場を見てきた著者だから言える教訓だと思います。

会社を経営している社長、経営幹部に、ぜひとも一読していただきたい一冊です。

また、経営学を学ばれている方(特に、ビジネスモデルだ、ストラテジーだと横文字が大好きな方)にも、現場感覚、ライブ感をつかむのに大きく役立つと思います。

同書は、1500円ですが、その100倍の価値があるように思います。

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