新型コロナウイルスの感染者が首都圏を中心に増え始めました。
「メダルとコロナのラッシュ」という悪いジョークもありますが、東京五輪後にはワクチンや治療薬も普及して、経済の再生が起こるのではないかと考えています。
この国の経済を再生させるためにも、アフターコロナ、withコロナを見据えた努力が必要です。
中小企業の経営者、オーナーさんたちは、コロナ禍の中でも、必死になって資金繰りや販路開拓に日々努力されています。
給付金や助成金、信用保証協会、信金や地銀・・・使えるものは全部活用する・・・サバイバルのためには複合技、合わせ技をしていくしかありません。
成功しているファミリービジネスは何をどう変えているのか?
矢部謙介・小河光生著 同文館出版刊 2000円+税
コロナの巣ごもりの中、読んだ一冊です。
ファミリービジネス、同族企業についてまとめた一冊です。
日本の中小企業の多くが、オーナー企業。
ファミリービジネス、一族経営です。
欧米でも、この傾向は変わりません。
そんな中、成功しているファミリービジネスは、どんな経営をしているのか?を解説した一冊です。
ファミリービジネスは、決断が早い、会社の大株主なので投資家と利害が一致する、生涯現役の場合が多く長期の視点で経営できるといったメリットがある反面、経営の脆弱性、独断経営、資本獲得が難しい、後継者難といったデメリットもあります。
著者の矢部さんは中京大学経営学部准教授、小河さんはクレイグコンサルティング社の代表取締役。
学者と実務家の共著ということもありますが、章のブリッジ、コンテンツ面で多少のチグハグ感もあります。
ただ、宇津救命丸、エルメス、スノーピーク、エンドー鞄、松山油脂、カワニシホールディングス等の実際のケースを取り上げているため、事例から直接学べるという長所ありの同書です。
目次
第1章 ファミリービジネス(FB)をあなたの代でつぶさないために
第2章 上場FBの財務的特徴と課題
第3章 創業の精神と企業理念
第4章 後継者の育成と事業承継
第5章 次世代経営者に求められる第二創業
第6章 後継者のための組織・人材の活性化法
第7章 FBにおけるブランドの役割と強化
第8章 FBの経営におけるM&Aの活用法
第9章 コーポレート・ガバナンスの構築方法
第10章 FBが永続的に発展していくために
同書は、ファミリービジネス変革の10か条を示しています。
- 永続性に対する認識を変える
- 安全性、投資に対する姿勢を変える
- 創業者の心は変えず、企業理念は変えるべし
- 後継者を変えるとき、もっとも厳しい評価者は社員である
- 社員の意識を変え、第二創業でビジネスを変える
- 新活性化策を取り入れ、経営者も変化せよ
- 自社ブランドを確立して経営者を自立させ、下請け体質を変える
- M&Aで成長の軌道を変える 終活と成長戦略
- 企業風土を変える。軌道修正できる組織を作る
- FBの経営を変え、永続的な発展を実現する
ちょっと一般論ですが、どれも大切なポイントだと思います。
同書の中で、マーカーを引いたのは「FB経営者が留意すべき課題」。
3点あります。
「先代の我慢」・・・老害ではない、その会社のDNA
「思いの共有」・・・経営の方向性
「クイック・ウイン」小さな成功を積み上げる
特に、経営理念やビジョンを通じて、創業者の想いを伝承していくことは大切だと思います。
大塚家具で起こったことも、原理原則を無視したへたなMBAホルダーが通用しなかったということでしょう。
二世経営者、事業を承継予定の方に、一読いただきたい一冊です。