能率技師のメモ帳 経済産業大臣登録中小企業診断士・特定社会保険労務士の備忘録

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生涯投資家 村上世彰氏の半世記 資本主義を合理的に駆け抜けようとした野心家の末路

2020年01月10日 | 本と雑誌

「なんと強欲な」。
「それが、村上氏への第一印象だった。しかし、本書でその真意を読むと、異なる姿が見えてくる。」
冬休み、積読クリアランス週間・・・今回は村上世彰氏の半世記を綴った「生涯投資家」。
同書の解説は、池上彰さんが書いています。


それが冒頭の「なんと強欲な」というフレーズ。
池上さんは村上さんのことを「コミュ障」と呼んでいます(笑)。
アタマの良い人の中には、コミュニケーションが苦手、というよりは「これぐらいの説明で分かるだろう」と考えコミュニケーションのショートカットをしてヒンシュクを買う人が結構います。
東大法卒、通産省キャリア官僚の村上さんも、そういった面があったのだと思います。
株主主権、コーポレートガバナンスを米国のように機能させるために、法的な手段をフル活用して変えようとした気の短い天才肌のビジネスパースン・・・その声は市場にも企業にも届きませんでした。

生涯投資家
村上世彰著  文春文庫  670円+税


大学時代は会社法のゼミで勉強していました。
法律を読むと、株式会社は株主のモノと書いてありますが、今の世間の理解はちょっと違います。
コーホレートガバナンス、CSR、ステークホルダー、ESG、最近ではSDGsのコンセプトも入り様々な説が乱立しています。
美しい会社の理想とカネ至上主義のグローバル資本主義・・・そのハザマの中で最初に身を投じたのが村上ファンドであり、ホリエモンだったと思います。


目次
第1章 何のための上場か
第2章 投資家と経営者とコーポレートガバナンス
村上流の投資は、「期待値」とIRR
第3章 東京スタイルでプロキシーファイトに挑む
第4章 ニッポン放送とフジテレビ
第5章 阪神鉄道大再編計画
第6章 IT企業への投資 ベンチャーの経営者たち
第7章 日本の問題点 投資家の視点から
第8章 日本への提言
第9章 失意からの10年

以前は、総会屋とかインテリやくざと言われる反社と呼ばれる勢力が、かなりの数跋扈していました。
今では会社法や金商法などの改正により絶滅危惧種となっていますが・・・。


同書を読んでいてドキドキしたのが、第4章のニッポン放送とフジテレビ。
モノ言う株主として、法律を盾に斬り込んでいく村上氏・・・ドキドキしながら読みました。
結局、彼はインサイダー取引犯として逮捕されます。
最高裁まで行って有罪、そして村上ファンド解散。
平家物語のような幕切れでした。
村上さんは、きっとピュアな人なんだろうなあと思います。あの事件以降、非上場化する会社が出てきたり、体裁がいいから上場という企業が減ってきたように思います。


そして、シンガポールに移住して個人投資家へ転身・・・。
村上ファンド解散後は、NPO支援、投資教育、東日本大震災支援などの活動をされています。
引き際だけはカッコよかったと思います。


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