人生の目的は音楽だ!toraのブログ

クラシック・コンサートを聴いた感想、映画を観た感想、お薦め本等について毎日、その翌日朝に書き綴っています。

藝大モーニングコンサートでフランセ「クラリネット協奏曲」(Cl:林みのり)、ジョンゲン「協奏的交響曲」(Org:東方理沙)を聴く

2019年06月21日 00時09分10秒 | 日記

21日(金)その1.わが家に来てから今日で1722日目を迎え、国連がヘイトスピーチに対処する行動計画を発表した18日、グテーレス事務総長が演説で、「何人かの政治指導者が憎悪に満ちた考え方や言葉を広め、普遍化し、公の議論を荒らし、社会を弱体化させている」と指摘し、名指しは避けたが、トランプ米大統領を念頭に置いていたと受け止められる発言をした というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      名指ししようがしまいが ヘイトスピーチの政治指導者と言えばトランプだよな

     

         

 

昨日、夕食に「鶏ももソテーキ」と「トマトとレタスの卵スープ」を作りました 鶏~は皮パリパリ肉ジュ―シーです

 

     

 

         

 

昨日、午前11時から東京藝大奏楽堂で「第6回藝大モーニングコンサート」を、午後7時からサントリーホールでNHK交響楽団の定期演奏会を聴きました ここでは、「第6回藝大モーニングコンサート」について書きます

プログラムと演奏者は①フランセ「クラリネット協奏曲」(Cl:林みのり)、②ジョンゲン「協奏的交響曲作品81」(Org:東方理沙)です 指揮は現田茂夫です

 

     

 

全席自由です。1階20列24番、センターブロック右通路側を押さえました

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろのコントラバスという、いつもの藝大フィルハーモニアの編成。コンミスは澤亜紀さんです

1曲目はフランセ「クラリネット協奏曲」です この曲はジャン・フランセ(1912-1997)が1967年から1968年にかけて作曲した作品です 第1楽章「アレグロ」、第2楽章「スケルツァンド」、第3楽章「アンダンティーノ」、第4楽章「アレグリッシモ」の4楽章から成ります

クラリネット独奏の藝大4年生・林みのりさんが、銀のラメ入りの鮮やかな衣装で登場、現田茂夫の指揮で第1楽章に入ります この楽章では中盤でカデンツァが演奏されますが、クラリネットの広い音域や音色を十分に生かした演奏で、この楽器の特性と魅力にあらためて気づかされました 第4楽章ではかなりの超絶技巧が要求される曲想ですが、林さんは確かな技術を背景に鮮やかに演奏を展開しました

林さんによる「プログラム・ノート」は、フランセが活躍していた時代の音楽の方向性、その中でのフランセの立ち位置、この曲の性格と各楽章の解説など、非常に解りやすく丁寧に書かれていて、演奏を聴くうえで大きな助けになりました 演奏者としてだけでなく、文章表現者としても素晴らしい人だと思いました


     


プログラム後半はジョンゲン「協奏的交響曲作品81」です この奏楽堂でパイプオルガンの協奏曲を聴く機会はめったにないので、今回は貴重なチャンスです この曲はベルギーの作曲家・オルガン奏者のジョゼフ・ジョンゲン(1873-1953)の作品で、約40分かかる大作です 第1楽章「アレグロ、モルト・モデラート」、第2楽章「ディベルティメント」、第3楽章「モルト・レント」、第4楽章「トッカータ」の4楽章から成ります

藝大大学院修士1年生・東方理沙さんが、エナメル・ブルーの妖精のような衣装で2階正面のパイプオルガン操作卓に着きます 現田茂夫の指揮で第1楽章に入ります。冒頭、オーケストラによるフーガ風の序奏に続いて独奏オルガンが堂々と輝かしい音楽を奏でます オケとオルガンとの対話が楽しく聴けます 第2楽章は冒頭のオルガンの軽快な主題が印象的です フルートの独奏で開始される第3楽章では、歌う楽器としてのオルガンの演奏が魅力的です そして、第4楽章は冒頭から会場を震撼させんばかりの大音響でオルガンが鳴らされ、さながらパイプオルガン版スターウォーズのようです

東方理沙さんはプログラム・ノートに「オルガンは”1人によるオーケストラ”と言われるが、この作品は『2つのオーケストラのための交響曲』であるとジョンゲンの友人の作曲家ウジェーヌ・イザイは述べている」と書いていますが、スケールが大きくダイナミックな曲想のこの作品は、まさに2つのオーケストラが協奏するかのような「協奏的交響曲」でした

東方さんは、よくこの大作を選んだものだ、と感心しました 小柄ながらも、秘めた情熱は誰にも負けないものがあるのでしょう

 

     

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芸劇ブランチコンサート「ドヴォルザークの楽しみ」を聴く~ピアノ五重奏曲第2番、ユーモレスクほか:伊藤亮太郎、大江馨、佐々木亮、向山佳絵子、清水和音

2019年06月20日 07時19分32秒 | 日記

20日(木)。18日(火)午後10時22分の山形県沖を震源とする地震にはビックリしました 息子が単身赴任している山形県鶴岡市が震度6とニュースで言っていたので、すぐに息子に「無事か?」メールを送りましたが、返信がありませんでした 翌朝、もう一度「無事?余震に注意!」メールを送ると、「無事です」の”ひと言返信”が帰ってきたので一安心しました

ということで、わが家に来てから今日で1721日目を迎え、ドナルド・トランプ米大統領は18日、南部フロリダ州オーランドで開いた大規模選挙集会で演説し、「米国を偉大なままにする」と2020年11月の大統領選への出馬を表明した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      「米国を偉大なままに」じゃなくて「米国第一主義のままに」の間違いじゃね?

 

         

 

昨日、夕食に「豚ロースの生姜焼き」「生野菜とサーモンのサラダ」「冷奴」を作りました 冷奴にはオクラ、ミョウガ、鰹節が載っています

 

     

 

         

 

昨日、池袋の東京芸術劇場コンサートホールで第19回芸劇ブランチコンサート「ドヴォルザークの楽しみ」を聴きました   プログラムはドヴォルザークの①ユーモレスク、②森の静けさ、③スラヴ舞曲ホ短調作品72‐2、④ピアノ五重奏曲第2番です 演奏はヴァイオリン=伊藤亮太郎(N響コンマス)、大江馨、ヴィオラ=佐々木亮(N響)、チェロ=向山佳絵子、ピアノ=清水和音です

 

     

 

平日の午前にもかかわらず、結構な数の聴衆が集まっています 比較的ポピュラーな曲目をトップクラスの奏者が演奏して1回2,400円という格安の入場料金の魅力が大きいと思います

1曲目は「ユーモレスク」です この曲はアントニン・ドヴォルザーク(1841-1904)が1894年に完成したピアノ曲集「8つのユーモレスク」の第7曲に当たります 「ユーモレスク」とは簡単に言えばユーモアのある小品のことです 今年6月8日にドイツのアウグスブルクで行われた「レオポルド・モーツアルト国際ヴァイオリンコンクール」で第3位入賞を果たした大江馨と、ベテランピアニスト清水和音により演奏に入ります

大江君は、時に 引きずるような独特なアクセントを付けて演奏しますが、肩の力が抜けて軽快です

2曲目は「森の静けさ」です この曲は1883年から1884年にかけて作曲したピアノ連弾曲「ボヘミアの森から」の第5曲を、1891年にチェロとピアノ用に編曲した作品です 元・N響首席の向山佳絵子さんが白のエレガントな衣装で登場、深みのあるチェロで叙情的に演奏しました

演奏の合間のインタビューで、N響時代の同僚・佐々木亮氏が向山さんについて、「彼女は東京藝大付属高校の1年先輩だったんですが、1年上に物凄くチェロの巧い人がいるという噂が流れ、学内のコンサートを聴きに行ったのですが、あまりにも巧くてびっくり仰天しました」と語っていました。一時、夫婦そろって(夫は藤森亮一氏)N響の首席チェロを務めていました

3曲目は「スラヴ舞曲ホ短調作品72‐2」です この曲は1886年に作曲した「スラブ舞曲集」(第2集)に含まれる作品です N響首席の伊藤亮太郎は、哀愁に満ちたメロディーを流麗に演奏しました


     

          (バックはロビーに設置されているモニター画面です)

 

最後の曲は「ピアノ五重奏曲第2番」です この曲は1887年に作曲されたピアノと弦楽四重奏のための五重奏曲です 第1楽章「アレグロ・マ・ノン・タント」、第2楽章「ドゥムカ、アンダンテ・コン・モート」、第3楽章「スケルツォ(フリアント)、モルト・ヴィヴァーチェ」、第4楽章「フィナーレ:アレグロ」の4楽章から成ります

第1ヴァイオリン=伊藤亮太郎、第2ヴァイオリン=大江馨、ヴィオラ=佐々木亮、チェロ=向山佳絵子、ピアノ=清水和音によって演奏されます

第1楽章は冒頭の向山佳絵子のチェロの演奏が素晴らしく、第2楽章では佐々木亮のヴィオラが冴えわたりました この曲の魅力はメロディーが美しいことに加え、哀愁と陽気さが交互に訪れる独特な曲想ですが、5人のアンサンブルはその切り替えが見事でした チャイコフスキーと同様、ドヴォルザークも「メロディーメーカー」であることを、あらためて思い知らされる演奏でした

ところで 曲間のトークの時、進行役を兼ねる清水氏はマイクを使ってモソモソと早口で喋るので、何を言っているのか聴き取れないことがしばしばあります もう少しゆっくり話してくれないものかといつも思います 新しく始まったシリーズ「名曲リサイタル・サロン」ではナビゲーターに八塩圭子さんが復活しましたが、さすがはアナウンサー上がりということでよく聞き取れます 進行役は トークのプロを手本にして ゆっくり話して欲しいと思います

 

     

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小林研一郎 ✕ キム・ボムソリ ✕ 読売日響でブルッフ「ヴァイオリン協奏曲第1番」、フランク「交響曲ニ短調」、ビゼー「カルメン」第1組曲を聴く ~ 読響第623回名曲シリーズ

2019年06月19日 07時18分38秒 | 日記

19日(水)。わが家に来てから今日で1720日目を迎え、刑事事件の容疑者を中国本土に引き渡すことを可能にする香港の「逃亡犯条例」改正案に対し抗議活動が続いている問題で、林鄭月娥・行政長官が教育関係者らと面会し、改正手続きの延期について、「事実上の撤回に等しい」と述べた というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     一般市民や学生が200万人も反対デモに参加したら 撤回せざるを得ないだろうよ

 

         

 

昨日、夕食に「鶏肉とジャガイモのトマト醤油煮」と「生野菜サラダ」を作りました 「鶏肉~」は近藤幸子先生のレシピです。初挑戦ですが、何とか美味しくできました

 

     

 

         

 

昨夕、サントリーホールで読売日響の第623回名曲シリーズを聴きました プログラムは①ビゼー:歌劇「カルメン」第1組曲、②ブルッフ「ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 作品26」、③フランク「交響曲ニ短調」です ②のヴァイオリン独奏はキム・ボムソリ、指揮は小林研一郎です

 

     

 

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという いつもの読響の編成。コンマスは小森谷巧です

1曲目はビゼー:歌劇「カルメン」第1組曲です この曲はジョルジュ・ビゼー(1838-1875)が作曲した歌劇「カルメン」から、彼の友人の作曲家エルネスト・ギローが、主だった楽曲をピックアップして組曲に仕立てたものです 第1組曲と第2組曲がありますが、この日演奏される第1組曲は①前奏曲(第1幕への前奏曲後半部分)、②アラゴネーズ(第4幕への間奏曲)、③間奏曲(第3幕への間奏曲)、④セギディーリャ、⑤アルカラの竜騎兵(第2幕への間奏曲)、⑥闘牛士(第1幕への前奏曲前半)と続きます 「間奏曲」でのフリスト・ドブリノヴのフルートや、蠣崎耕三のオーボエが素晴らしい演奏を展開しました 最後の「闘牛士」では、コバケンは先を急ぐことなく、堂々たる闘牛士の入場を描き出しました

曲目はブルッフ「ヴァイオリン協奏曲 第1番 ト短調 作品26」です    この曲はマックス・ブルッフ(1838-1920)が1866年、28歳の時に作曲し、1867年から68年にかけて改訂した作品です   第1楽章「(前奏曲)アレグロ・モデラート」、第2楽章「アダージョ」、第3楽章「(終曲)アレグロ・エネルジコ」の3楽章から成ります

ヴァイオリンを独奏するキム・ボムソリは韓国生まれの新鋭です ソウル大学を経て米ジュリアード音楽院で学びました ミュンヘン国際コンクール最高位、ヴィエニャフスキ国際コンクール第2位、モントリオール国際音楽コンクール第2位など輝かしい受賞歴を誇ります

黒と金をベースにしたオシャレな衣装のキム・ボムソリがコバケンと共に登場し、さっそく演奏に入ります キムの演奏は、予想通り確かな技術に裏づけられた音楽性の高いもので、高音から低音まで完璧にコントロールされて会場の隅々まで届きます コバケン✕読響はピタリとつけます ヴァイオリン独奏のないオケだけの部分では、テンポを落として歌わせます ソリストを最大限に引き立てるのはコバケンならではでしょう

満場の拍手とブラボーに、キム・ボムソリはイザイの「無伴奏ヴァイオリン・ソナタ第4番」から第4楽章を超絶技巧で演奏し、会場の温度を上昇させました


     


プログラム後半はフランク「交響曲ニ短調」です    この曲はセザール・フランク(1822-1890)が1886年から1888年にかけて作曲した晩年の傑作です   この作品は、一つの主題や動機が変容を遂げながら全曲に登場する「循環形式」を採用していることで知られています  第1楽章「レント~アレグロ・ノン・トロッポ」、第2楽章「アレグレット」、第3楽章「アレグロ・ノン・トロッポ」の3楽章から成ります

コバケンは比較的ゆったりしたテンポで演奏を展開します 特筆に値するのは第2楽章冒頭における北村貴子のコールアングレの演奏です 全曲を聴いて思ったのは、コバケンはこの5、6年で随分変わったのではないか、ということです それ以前は「恣意的な指揮ぶり」というか「いかにも受け狙いで、作っている」と感じたものですが、最近は、音楽の流れが自然に感じます 彼はもう79歳。歳とともに余分な意識が抜けたのでしょうか それだけに、読響の演奏が素直に素晴らしいと感じました

コバケンはいつものように管楽器からセクションごとに立たせ、賞賛の拍手を求めます そして、拍手を制して「アンコールはマスカーニの『カヴァレリア・ルスティカーナ』間奏曲で祈りの世界に入ります」と言って、演奏に入りました 悲しくも感動的なこの曲を聴きながら、コバケンの言う「祈りの世界」とは、彼の出身地であるフクシマへの鎮魂と復興への祈りなんだろうな、と思いました 読響の面々はコバケンの祈りに渾身の演奏で応えました

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無料招待コンサート「モーツアルトで、おぺらくご!?」 & 「アフラック・チャリティー」があります! / 中山七里著「連続殺人鬼カエル男ふたたび」を読む ~ 音楽が聴こえてくる小説

2019年06月18日 07時16分32秒 | 日記

18日(火)。わが家に来てから今日で1719日目を迎え、イスラエル政府は16日、同国北部のゴラン高原に新たに設ける入植地について、米トランプ大統領にちなんで「トランプ高原」と命名すると発表した というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     ゴラン あれがトランプタワー高原だよ おっかさん  ポンぺイオ遺跡じゃないぜよ

 

         

 

昨日、夕食に「野菜と挽肉のドライカレー」と「生野菜とアボカドのサラダ」を作りました ドライカレーは、わが家の、と言うか、私の定番メニューに昇格しました

 

     

 

         

 

無料招待コンサートがあります 一つは8月20日(火)午後7時から東京文化会館大ホールで開かれる「モーツァルトで、おぺらくご!?」です これは一般社団法人 東京都人材支援事業団主催によるコンサートです プログラムは①モーツアルト「ディヴェルティメントK.136」第1楽章、②同「ピアノ協奏曲第21番K.467」、③おぺらくご「フィガロの結婚」です 出演は②のピアノ独奏=仲道郁代、③のソプラノ独唱=高橋絵里、三宅理恵、青木エマ、管弦楽=東京交響楽団、指揮=飯森範親、ナビゲーター・落語=桂米團治です

 

     

 

申し込み方法は下のチラシの通りで 締め切りは7月25日ですが、応募者多数の場合は抽選となります。なお、申し込み資格は東京都内在住・在勤・在学者に限定されています

 

     

 

2つ目は9月17日(火)午後7時からサントリーホール大ホールで開かれる「アフラック チャリティーコンサート」です プログラムは①チャイコフスキー「ヴァイオリン協奏曲ニ長調」、②プロコフィエフ:バレエ音楽「ロメオとジュリエット」から抜粋です 出演は①のヴァイオリン独奏=神尾真由子、管弦楽=東京フィル、指揮=三ツ橋敬子です

申し込み方法は下のチラシの下欄の通りです 締め切りは7月31日ですが、応募者多数の場合は抽選になるとのことです

 

     

 

     

 

「絶対当たる!」と3回唱えて応募してみてはいかがでしょうか 気休めに過ぎませんが

 

         

 

中山七里著「連続殺人鬼カエル男ふたたび」(宝島社文庫)を読み終わりました 中山七里の本は、文庫化されるたびに購入し、このブログでご紹介してきました 念のため著者のプロフィールをご紹介します。1961年岐阜県生まれ。「さよならドビュッシー」で第8回「このミステリーがすごい!」大賞を受賞し 2010年にデビューしましたが、その後の快進撃は止まるところを知らず、次々と傑作を世に送り出しています

 

     

 

凄惨な殺害方法と稚拙な犯行声明文で世間を震撼させた「カエル男連続猟奇殺人事件」から10か月後。事件を担当した精神科医・御前崎教授の自宅が爆破され、その跡から紛砕され炭化した死体が出てくる 現場から「カエル男」こと精神障碍者・当真勝雄の筆跡による幼児のような稚拙な犯行声明文が発見される 彼はさいたま市内の医療施設を退院して以降 消息が掴めていない カエル男復活か と埼玉県警捜査一課の渡瀬課長と部下の小手川刑事が事件を追う やがて 埼玉県熊谷市の工場で契約社員の若者が硫酸プールに落とされる事件が発生、次に、東京の神田駅で若い女性が線路に突き落とされる事件が発生する    そして、さいたま市内の製材所で、廃材紛砕装置に下半身を巻き込まれて男が死亡する事件が発生する いずれも、そばにカエル男の筆跡による稚拙な犯行声明文が残されていた 一方、現在 医療刑務所に収容されている、当真勝雄の保護司だった有働さゆりが新たな動きを見せる。果たしてカエル男の目的は何なのか? そもそも、精神障碍者である当真勝雄に 捜査網から逃れて犯行を重ねるほどの知恵と行動力があるのか? どんでん返しの後に、もう一つのどんでん返しが待っている

この本を読み終わって最初に思ったのは、原点回帰ではないけれど、彼のデビュー作「さよならドビュッシー」にプロットが似ているな、ということです

巻末の「解説」を書店員の新井見枝香さんが書いていますが、冒頭「小説から、音楽が聴こえてくることがある。そしてその音は、心に深く刻み込まれる」と書き出しています そして「初めて読んだのは『さよならドビュッシー』だった。演奏シーンを読んで、これは明らかにピアニストが書いた文章だ、と確信した 中退とはいえ、私は音大に通っていたクラシック畑の人間である。生粋の英国人が、ネイティブと非ネイティブの発音を聞き分けるように、小説における音楽表現の真贋を私が見抜くのは、当然のことだろう」と続けています。しかし、中山氏はまったくピアノが弾けないことが分かり愕然とします 実は、私も「さよならドビュッシー」を読んだ時、中山七里という小説家は音大出身者に違いないと確信したのです ところが花園大学文学部国文学科卒というのです。花園大学ってどこにあるのよ、って感じです

この「カエル男ふたたび」にもベートーヴェンのピアノ・ソナタ「熱情」が出てきますが、「さよならドビュッシー」「おやすみラフマニノフ」「いつまでもショパン」「どこかでベートーヴェン」といった”作曲家タイトル・シリーズ”に限らず、中山氏の小説にはクラシック音楽が流れる、あるいは演奏するシーンが多く見られます その豊かな表現力はとても”音楽素人”が書いたものとは到底思えません そういうシーンを読んでいると、新井さんのように「小説から、音楽が聴こえてくることがある」と感じるのです

この本には巻末に「中山作品・人物相関図」が掲載されています デビューから9年目にして40冊の登場人物を網羅しています。中山ファンには有難い資料です

「中山七里七転八倒」(幻冬舎文庫)を読むと、「この人は いつ寝ているんだろう」と思うほど仕事漬けの毎日を送り、寝落ちして起きたら2日後だったとか、身体がいくつあっても足りないくらいだと思います そこから、「実は中山七里は7人いる」とかいう都市伝説が生まれてくるのです とにかくすごい人です

 

     

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「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン フィナーレ2019」を聴く~ドホナーニ「六重奏曲」、アレンスキー「弦楽四重奏曲第2番」他 / 名演出家 フランコ・ゼフィレッリ氏逝く

2019年06月17日 07時24分03秒 | 日記

17日(月)。わが家に来てから今日で1718日目を迎え、日本中央競馬会は15日、競走馬の飼料添加物から禁止薬物が検出されたため、同添加物を購入した28厩舎に所属する計156頭を競走除外とし、15、16日の函館、東京、阪神競馬に出走させない措置を取った というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

         馬にとっては「馬の耳に念仏」だな  ぼくのおやつには薬物入ってないよね?

 

         

 

昨日の朝日朝刊社会面に「ゼフィレッリさん死去 映画『ロミオとジュリエット』監督 96歳」という記事が載っていました 超訳すると

「イタリアのメディアによると、映画監督でオペラ演出家のフランコ・ゼフィレッリさんが15日、ローマの自宅で死去した。96歳だった 1923年、フィレンツェ生まれ。巨匠ルキノ・ヴィスコンティの下で舞台美術や映画監督の仕事に携わった。68年の英伊合作映画『ロミオとジュリエット』で成功を収めた オペラの演出も手掛け、米国のメトロポリタン歌劇場でのプッチーニ『トゥーランドット』や、伊ミラノ・スカラ座でのヴェルディ『アイーダ』など、絢爛豪華な舞台で世界的に知られるようになった 『アイーダ』は新国立劇場開場記念の98年のほか、10周年、20周年などの公演でも上演された

 

     

 

私が生の公演で観たオペラは、メトロポリタン歌劇場の来日公演(2011年)でのプッチーニ「ラ・ボエーム」、新国立劇場でのヴェルディ「アイーダ」です このほかMETライブビューイングでは「ラ・ボエーム」「トゥーランドット」「アイーダ」を観ました ゼフィレッリの舞台美術でよく言われるのは、「リアルな細部にこだわる」ということです その意味では、時代劇映画でタンスが出てくるシーンでは、タンスの中に本物の着物を入れておくなど、目には見えないところにも細心の注意を払っていたという世界の巨匠・黒澤明監督に共通していると思います

いつかどこかでゼフィレッリの舞台美術による「トゥーランドット」をライブで観るのが私の目下の夢です

 

         

 

昨日、サントリーホール「ブルーローズ」で「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン フィナーレ2019」を聴きました   プログラムは①グリンカ「ベッリーニの『夢遊病の女』の主題による『ディヴェルティメント・ブリッランテ』変イ長調」、②ロッシーニ「チェロとコントラバスのための二重奏曲 ニ長調」、③バルトーク「弦楽四重奏曲 第2番」より第2楽章、④コミタス(アスラマジャン編曲)「アルメニア民族音楽14の小品」より「私の赤いハンカチーフ」、「雲」「祭りの歌」、⑤チャイコフスキー(ドゥビンスキー編曲)「子どものアルバム」作品39より「フランスの古い歌」「優しい夢」「民謡」、⑥ツィンツァーゼ「ジョージア民謡による小品」より「口うるさい女房」「蛍」「田舎の踊り」、⑦ドホナーニ「六重奏曲ハ長調作品37」より第1・4楽章、⑧バーバー「弦楽のためのアダージョ」、⑨エルガー「序奏とアレグロ」作品47、⑩マルティヌー「四重奏曲H.139」、⑪アレンスキー「弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 作品35」より第2・3楽章です

出演は、ヴァイオリン=池田菊衛、内野祐佳子、宮川莉奈、ヴィオラ=磯村和英、チェロ=堤剛、毛利伯郎、コントラバス=池松宏、クラリネット=コハーン・イシュトヴァ―ン、ホルン=福川伸陽、パーカッション=竹島悟史、弦楽四重奏=クズ・クァルッテット、ピアノ四重奏=アンサンブル・ラロ、アンサンブル=サントリホール室内楽アカデミー選抜アンサンブル、指揮=原田幸一郎です

 

     

 

自席はC7列12番、センターブロック右通路側。会場は文字通り満席です 

1曲目はグリンカ「ベッリーニの『夢遊病の女』の主題による『ディヴェルティメント・ブリッランテ』変イ長調」です この曲はロシアの作曲家ミハイル・グリンカ(1804-1857)が、イタリアの作曲家ベッリーニの歌劇「夢遊病の女」(1831年初演)の音楽をもとに作曲した作品です 第1楽章「ラルゲット~モデラート~アレグレット」、第2楽章「アンダンテ・カンタービレ」、第3楽章「ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります

演奏はピアノ五重奏=アンサンブル・ラロ、ヴァイオリン=宮川莉奈(桐朋学園)、コントラバス=池松宏(都響)です。アンサンブル・ラロは2004年結成のピアノ四重奏団で、メンバーはヴァイオリン=アレクサンダー・シトコヴェツキ―、ヴィオラ=ラズヴァン・ポポヴィッチ、チェロ=ベルンハルト・直樹・ヘーデンボルク、ピアノ=ダイアナ・ケトラーです

この曲では第1楽章の冒頭からダイアナ・ケトラーのピアノが大活躍します 第2楽章では弦楽によるカンタービレが美しく響きます 第3楽章は出演者が楽し気に演奏している様子が窺えほほえましく感じました

2曲目はロッシーニ「チェロとコントラバスのための二重奏曲 ニ長調」です この曲はジョアッキーノ・ロッシーニ(1792‐1868)が作曲した作品で、第1楽章「アレグロ」、第2楽章「アンダンテ・モッソ」、第3楽章「アレグロ」の3楽章から成ります

チェロ=堤剛、コントラバス=池松宏の二人によって演奏されますが、第1楽章は高音部が厳しそうでしたが、第2楽章はゆったりした流れなので低音の魅力が発揮されました 第3楽章を聴きながら、なぜロッシーニはチェロとコントラバスという組み合わせの曲を書いたんだろう、と不思議に思いました 当時、身近に名手がいたに違いありません

3曲目はバルトーク「弦楽四重奏曲 第2番」より第2楽章「アレグロ・モルト・カプリッチョ―ソ」です この曲はベラ・バルトーク(1881-1945)が1914年から17年にかけて作曲した作品です

演奏は桐朋学園に在学中に学生で結成されたユニット、クァルテット・インテグラです メンバーは第1ヴァイオリン=三澤響果、第2ヴァイオリン=菊野凛太郎、ヴィオラ=山本一輝、チェロ=菊地杏里です。前日のコンサートでバート―ヴェン「ラズモフスキー第1番」の第1楽章と第4楽章を演奏したユニットです

冒頭から荒々しくも集中力に満ちた切れ味鋭い演奏が展開します 前の曲が低音楽器の組み合わせによる比較的穏やかな作品だったのに対し、この曲はテンポの速い起伏の激しい作品なので、そのコントラストが鮮明でした

次は今年の「ベートーヴェン・サイクル」を完奏したクス・クァルテット(第1ヴァイオリン=ヤーナ・クス、第2ヴァイオリン=オリヴァー・ヴィレ、ヴィオラ=ウィリアム・コールマン、チェロ=ミカエル・ハクナザリアン)による演奏です

ヴァルダペット・コミタス(1869-1935)作曲アスラマジャン編曲「アルメニア民族音楽14の小品」より「私の赤いハンカチーフ」「雲」「祭りの歌」、②ピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)作曲ドゥビンスキー編曲「子どものアルバム」作品39より「フランスの古い歌」「優しい夢」「民謡」、③スルハン・ツィンツァーゼ(1925-91)作曲「ジョージア民謡による小品」より「口うるさい女房」「蛍」「田舎の踊り」が続けて演奏されました

流石だと思ったのはチャイコフスキーの作品で、このような小さな曲から交響曲やオペラに至るまで、まさに「メロディーメーカー」を思わせる見事な音楽作りです ツィンツァーゼの作品では「口うるさい女房」が面白く聴けました

プログラム前半の最後はドホナーニ「六重奏曲ハ長調作品37」より第1楽章「アレグロ・アパッショナート」、第4楽章「アレグロ、ヴィヴァーチェ・ジョコーソ」です この曲はハンガリーの作曲家エルネ―・ドホナーニ(1877‐1960)が1935年に作曲した作品です

アンサンブル・ラロの4人、クラリネットのコハーン・イシュトバーン、ホルンの福川伸陽の演奏で第1楽章に入ります ピアノに導かれてホルンが朗々と奏で、クラリネットが続きます この曲は長調の作品ですが、ほの暗さを感じさせる曲想です。しかし、第4楽章は一転、弾むようなピアノの主題に乗り、ホルンとクラリネットが、次いで弦楽合奏が嬉々として推進力に満ちた演奏を展開します イシュトバーンと福川氏は演奏中に顔を見合わせてニヤリとしたりして実に楽しそうです これは他のメンバーも同様で、演奏する喜びに満ち満ちていました この演奏はこのコンサートの白眉でした


     


プログラム後半の1曲目はバーバー「弦楽のためのアダージョ」です この曲はアメリカの作曲家サミュエル・バーバー(1910-81)が1937年に作曲した「弦楽四重奏曲第1番」の第2楽章を弦楽合奏用に編曲したものです 1938年にアルトゥーロ・トスカニーニ指揮NBC交響楽団によって初演されました

演奏はチェンバーミュージック・ガーデン・アンサンブル(受講生たち)、コンミスは桐朋学園の内野祐佳子、指揮は原田幸一郎(元・東京クワルテット)です

30人近くの受講生たちのほとんどは女性奏者で、男性は3人のみです。現在の音楽大学の実相を凝縮しているかのような男女構成です 緻密なアンサンブルによる しみじみと静かな感動を呼ぶ演奏でした

後半2曲目はエルガー「序奏とアレグロ」作品47です この曲はエドワード・エルガー(1857-1934)が1904年から翌05年にかけて作曲した作品です

演奏はヴァイオリン=内野祐佳子、池田菊衛、ヴィオラ=磯村和英、チェロ=毛利伯郎、弦楽合奏=チェンバーミュージック・ガーデン・アンサンブル、指揮=原田幸一郎です

弦楽四重奏を弦楽合奏が囲んで演奏するコンチェルト・グロッソのスタイルを踏襲した構成です 原田氏の指揮で演奏に入りますが、序奏は魂のこもった渾身の演奏で、分厚い弦楽合奏によりアレグロに繋がれます とても聴きごたえのある熱量の高い演奏でした

3曲目はマルティヌー「四重奏曲H.139」です この曲はチェコの作曲家 ボフスラフ・マルティヌー(1890-1959)が作曲した作品で、クラリネット、ホルン、チェロ、スネアドラムという変わった組み合わせの曲です

第1楽章「アレグロ・モデラート」、第2楽章「ポコ・アンダンテ」、第3楽章「アレグレット・マ・ノン・トロッポ」の3楽章から成ります

演奏はクラリネット=コハーン・イシュトバーン、ホルン=福川伸陽、チェロ=毛利伯郎(元・読響ソロ)、パーカッション=竹島悟史(N響)です

冒頭からスネアドラム(小太鼓)が活躍する曲ですが、全体的に軽妙洒脱な曲想でした

最後の曲はアレンスキー「弦楽四重奏曲 第2番 イ短調 作品35」より第2楽章「モデラート」、3楽章「アンダンテ・ソステヌート~アレグロ・モデラート」です この曲はロシアの作曲はアントン・アレンスキー(1861-1906)が1894年に作曲した作品ですが、通常の弦楽四重奏曲と異なり、ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ2挺という編成です

演奏はヴァイオリン=アレクサンダー・シトコヴェツキ―、ヴィオラ=ラズヴァン・ポポヴィッチ、チェロ=ベルンハルト・直樹・ヘーデンボルク、堤剛です

第2楽章はヴァイオリンと2本のチェロとの対話が楽しく聴けました 演奏の白眉は第4楽章です。フーガにより華やかな演奏が繰り広げられますが、どうもどこかで聴いたようなメロディーです よくよく考えてみたら、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲第8番「ラズモフスキー第2番」の第3楽章「アレグレット」の中間部で演奏されるロシア民謡(皇帝讃歌)でした ベートーヴェンがなぜ第8番の弦楽四重奏曲でこの「ロシア民謡」のメロディーを使用したかと言えば、第7番から9番までの弦楽四重奏曲の作曲の依頼者がウィーン駐在ロシア大使ラズモフスキー伯爵だったからです ロシアの作曲家アレンスキーが同じメロディーを使用したとしても不思議ではありません この曲ではそのメロディーをゆったりしたテンポで演奏しています フィナーレは熱狂的に盛り上がって曲を閉じました

終演は午後5時4分でした。これをもって「サントリホール  チェンバーミュージック・ガーデン2019」も終了です 今年は6月2日から16日までの15日間で14公演聴きましたが、このうち7日から16日までの10日間は毎日サントリーホールに通いました。これは自己新記録かも知れません

というわけで 先週はとても疲れたので、今日は家で明日以降のコンサートで聴く曲のCDを聴いて予習をしながら読書をしようと思っています

 

     

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ユベール・スダーン ✕ 菊池洋子 ✕ 東京交響楽団でシューマン「ピアノ協奏曲」、同「マンフレッド序曲」、チャイコフスキー「マンフレッド交響曲」を聴く / 須田祥子さんと川田知子さん 似てる?

2019年06月16日 08時08分44秒 | 日記

16日(日)その2.よい子は「その1」も見てね。モコタロはそちらに出演しています

昨日の日経朝刊最終面のコラム「交遊抄」に東京フィルの首席ヴィオラ奏者・須田祥子さんがエッセイを寄せています 超訳すると

「毎年ゴールデンウィークに宮崎県で開催されている宮崎国際音楽祭に初めて参加したのは2001年だった。当時は若手の25歳だった 別の奏者の代役だったが、その時に出会い親友になったのがヴァイオリニストの川田知子さんだった。川田さんは8歳年上だが、サバサバしている性格が自分と似ていた 2人でいると音楽の話もするが、年を重ねたせいか、健康の話題が多くなった。身体のケア、歩き方、楽器の持ち方まで、身体にガタが来る前にいろいろ試してみようと試行錯誤している 演奏家は身体を酷使するアスリートでもある。プロ意識が高い川田さんの考えや実直な姿勢は勉強になる 最近は性格だけでなく顔つきも似てきたらしく、よく本物の姉妹だと間違えられる

演奏家は身体を酷使するアスリートでもある」というのはその通りかもしれません 1回のコンサートをこなしたら体重がかなり減るのではないかと想像します ダイエットにはいいかも それにしても、須田さんと川田さんの顔つきが似てきて本物の姉妹だと間違えられる、というのは意外でした 最近 川田さんの演奏姿を見る機会がないので分かりませんが、それほど似ているとすれば、須田さんの独特なヘアスタイルで区別するしかないのかな、と思ったりしました

 

         

 

昨夕、サントリーホールで東京交響楽団の第671回定期演奏会を聴きました プログラムは①シューマン「マンフレッド」序曲、②同「ピアノ協奏曲 イ短調 作品54」、③チャイコフスキー「マンフレッド交響曲 作品58」です   ②のピアノ独奏=菊池洋子、指揮=ユベール・スダーンです

 

     

 

東響はいつもの編成で、左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、チェロ、ヴィオラ、その後ろにコントラバスという並びです が、コンマスがいつもと違います 郷古廉(ごうこ すなお)が客員コンマスとしてスタンバイします 1993年宮城県生まれ。2013年のティボールヴォルガ国際ヴァイオリンコンクールで優勝を果たした実力者です 最近では2017年から19年まで「東京・春・音楽祭」でベートーヴェン「ヴァイオリン・ソナタ全曲演奏会」を成功させたばかりです 彼の客員は近い将来の人事案件の前触れでしょうか まったく不明です

1曲目はシューマン「マンフレッド」序曲です この曲はロベルト・シューマン(1810-1856)がイギリスの詩人バイロンの詩劇「マンフレッド」に触発されて1848年から49年にかけて作曲した劇音楽の序曲です

スダーンの指揮で演奏に入りますが、奥田佳道氏の書かれた「プログラム・ノート」にあるような「何かに駆り立てられ、表情を刻々変えながら疾走するオーケストラ。情熱も葛藤もお任せあれ」という表現がピッタリの曲想です 自分の言葉で言い表せば、「ノンストップ・ロマンティック・ミュージック」です

2曲目はシューマン「ピアノ協奏曲 イ短調 作品54」です この曲はシューマンが1841年に第1楽章を、1845年に第2・3楽章を作曲した作品で、1845年12月4日にドレスデンでクララ・シューマンのピアノ独奏、フェルディナント・ヒラーの指揮で初演されました その後1853年に改訂されています 第1楽章「アレグロ・アフェットゥオーソ」、第2楽章「間奏曲:アンダンティーノ・グラツィオーソ」、第3楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」の3楽章から成ります

ソリストの菊池洋子が赤の鮮やかな衣装で登場、ピアノに向かいます この人は背が高く、スタイルが良いのでステージ映えします それだけに、背の低い指揮者は彼女と積極的に協演しようとは思わないかも知れません これは個人の考えですが

実は、ロマン派のピアノ協奏曲の中で、私が一番好きなのはシューマンのこの曲なのです とくに第3楽章の後半などは猛烈に好きです 菊池洋子 ✕ スダーン ✕ 東響の演奏はテンポ感も良く、ピアノもオケも良く鳴り、申し分ありませんでした 第3楽章などは(靴の中で)足で拍子をとっていました 他人に迷惑をかけていません。足からず

 

     


プログラム後半はチャイコフスキー「マンフレッド交響曲 作品58」です この曲はピョートル・イリイチ・チャイコフスキー(1840-1893)が1885年に作曲し 1886年にモスクワで初演されました   正式な曲名は「マンフレッド、バイロンの劇詩による4つの音画の交響曲」です ロシア作曲界の重鎮バラキエフの勧めで作曲したもので、人生に対する疑問から、アルプス山中をさまようマンフレッドが出逢う様々な体験をベルリオーズ風な固定概念の手法で綴った標題音楽です

第1楽章「レント・ルグブレ(悲痛な):アルプスの山中をさまようマンフレッド」、第2楽章「ヴィヴァーチェ・コン・スピリト:アルプスの妖精」、第3楽章「アンダンテ・コン・モート:山岳人の自由な生活」、第4楽章「アレグロ・コン・フォーコ(炎のごとく):アリマ―ナの地下宮殿」の4楽章から成ります

スダーンの指揮で第1楽章が開始されます 冒頭、バスクラリネットとファゴットにより「マンフレッドの主題」が演奏されますが、この主題がすべての楽章に出てきます 次いで弦楽器によって「嘆きのテーマ」とでも呼びたくなるような深く感動的なメロディーが奏でられますが、この演奏を聴いて、すっかり「マンフレッド」の世界に引き込まれました 今まで2度ほど生演奏でこの曲を聴きましたが、どうもイマイチ本心から良い曲だとは思えませんでした しかし、スダーンの指揮で聴いて、初めて「ああ、この曲はこういう風に演奏するのが正しいんだな」と納得できました スダーンは音のうねりを作り出すのがうまく、ダイナミックでドラマティックな音楽作りをします そこに、わざとらしさはなく、音楽の流れが自然です 

この楽章のフィナーレ近くでホルンがベルアップ奏法をしていたのが新鮮でした マーラーの交響曲ではよく見かけますが、チャイコフスキーでは初めて見ました

第2楽章は実質的なスケルツォですが、フィナーレ部分でコンマスと第2ヴァイオリン首席との間で交わされる弱音の会話が、メンデルスゾーンのスケルツォのようで面白かったです

第3楽章はパストラーレ(田園)風の音楽が支配します オーボエやフルートが美しいソロを聴かせます

第4楽章は標題にあるような「炎のごとく」激しい音楽です まるでベルリオーズ「幻想交響曲」の最終楽章の世界です この日の演奏は「原典版」によるもので、オルガンは使用されず、第1楽章の終結部が繰り返され、劇的に終わりを告げます 過去に聞いたのはオルガンが入る「改訂版」でした。どちらも良いと思いますが、今回の演奏を聴くと「原典版」の方が良いと納得させられます

曲全体を聴いてあらためて思うのは、「メロディーメーカー」チャイコフスキーです「マンフレッド交響曲」の作曲時期は、交響曲第4番と第5番の間に当たりますが、第6番を含めたチャイコフスキーの三大交響曲と比べてみても、決して劣らない魅力的なメロディーに溢れた傑作だと思います。この日の演奏を聴いてそう思いました

私は十数年前から東京交響楽団の定期会員を継続してきましたが、その最大の理由は歴代の音楽監督が素晴らしいからです 初代の秋山和慶、2代目のユベール・スダーン、そして3代目のジョナサン・ノット、みんな好きです

これまでスダーンの指揮で聴いたコンサートで、ハズレは一つもなかったな、とあらためて思いました

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「Enjoy!室内楽アカデミー・フェロー演奏会」を聴く ~ ベートーヴェン「弦楽四重奏曲第7番」、シューベルト「ピアノ三重奏曲第2番」、ドヴォルザーク「ピアノ五重奏曲第2番」他より抜粋

2019年06月16日 07時23分53秒 | 日記

16日(日)その1.わが家に来てから今日で1717日目を迎え、麻生太郎財務相は14日の衆院財務金融委員会で、立憲民主党会派の大串氏が「年金を受け取っているか」と質問したのに対し、「受け取っていないと思います」と答弁した後、「(受給するかどうかは)秘書に任せているので、私には正確な記憶がない」と答弁したと いうニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     さすがは庶民の暮らしを知らない麻生大臣だ はした金など秘書に任せとけってか

 

         

 

昨日、午前11時からサントリーホール「ブルーローズ」で「Enjoy!室内楽アカデミー・フェロー演奏会」を、午後6時から同・大ホールで東京交響楽団定期演奏会を聴きました ここでは「Enjoy!室内楽アカデミー・フェロー演奏会」について書きます

プログラムは①ベートーヴェン「弦楽四重奏曲 第7番 ヘ長調 作品59‐1 ”ラズモフスキー第1番” 」より第1楽章・第4楽章、②シューベルト「ピアノ三重奏曲 第2番 変ホ長調 D.929」より第2楽章・第4楽章、③ドヴォルザーク「ピアノ五重奏曲 第2番 イ長調 作品81」より第1楽章、④ドビュッシー「弦楽四重奏曲 ト短調 作品10」より第1楽章・第3楽章・第4楽章、⑤チャイコフスキー「弦楽六重奏曲 ニ短調 作品70 ”フィレンツェの思い出” 」より第4楽章です

 

     

 

自席はC6列12番、センターブロック右通路側です    梅雨で雨の降る中けっこうな聴衆が集まりました

1曲目はベートーヴェン「弦楽四重奏曲 第7番 ヘ長調 作品59‐1 ”ラズモフスキー第1番” 」より第1楽章「アレグロ」、第4楽章「アレグロ」です

この曲はクス・クァルテットの演奏で聴いたばかりです

演奏はクァルテット・インテグラです。2015年4月に桐朋学園に在学中の学生で結成したとのことです。メンバーは第1ヴァイオリン=三澤響果、第2ヴァイオリン=菊野凛太郎、ヴィオラ=山本一輝、チェロ=築地杏里です

冒頭のチェロの主題が雄渾で、全体的に爽やかな演奏で良かったと思います

2曲目はシューベルト「ピアノ三重奏曲 第2番 変ホ長調 D.929」より第2楽章「アンダンテ・コン・モト」、第4楽章「アレグロ・モデラート」です

演奏はトリオ・ムジカです。2018年に東京藝大の同期生で結成したとのことです。メンバーはヴァイオリン=柳田か那子、チェロ=田辺純一、ピアノ=岩下真麻です

第2楽章は冒頭のチェロの独奏、それに続くピアノの演奏が特に良かったです。シューベルト特有の孤独感、うら悲しさが良く出ていました。第4楽章では3人のアンサンブルが見事でした

3曲目はドヴォルザーク「ピアノ五重奏曲 第2番 イ長調 作品81」より第1楽章「アレグロ、マ・ノン・タント」です

演奏は第1ヴァイオリン=アレクサンダー・シトコヴィツキー、第2ヴァイオリン=若杉知怜、ヴィオラ=佐川真理、チェロ=田辺純一、ピアノ=ダイアナ・ケトラーです シトコヴィツキーとケトラーの二人はアンサンブル・ラロのメンバーで、ともに英国王立音楽院教授を務めています

この曲では何と言っても第1ヴァイオリンのシトコヴィツキーのリードが凄い 彼の情熱に触発されて他のメンバーが熱量の高い演奏を展開しているように見えます 厚みのあるアンサンブルが見事でした


     


休憩後の1曲目はドビュッシー「弦楽四重奏曲 ト短調 作品10」より第1楽章「活き活きと、きわめて決然として」、第3楽章「アンダンティーノ:甘く表情豊かに」、第4楽章「きわめて穏やかに~極めて躍動して~少しずつ動きをつけて~極めて躍動的に」です

この曲については、前の曲でチェロを演奏した田辺君がマイクを持って「ドビュッシーは多くの作品の中でこの曲にだけ作品番号(10番)を付けていますが、これはデタラメな番号で、作曲順に並べると80番目くらいになります。これは従来の慣習に囚われない異端児ドビュッシーの冗談とも皮肉とも取れます」と解説してくれました 聴く側としては、こういう解説こそ望ましいと思います

演奏はクァルテット・ポワリエです。2018年に桐朋学園大学の在学生と卒業生で結成したとのことです メンバーは第1ヴァイオリン=宮川莉奈、第2ヴァイオリン=若杉知怜、ヴィオラ=佐川真理、チェロ=山梨浩子です

第1楽章はドビュッシー特有の浮遊感が良く出た演奏で、第3楽章は弱音がとても美しい演奏、第4楽章は躍動感あふれる演奏でした

最後の曲はチャイコフスキー「弦楽六重奏曲 ニ短調 作品70 ”フィレンツェの思い出” 」より第4楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」です

演奏は第1ヴァイオリン=アレクサンダー・シトコヴィツキー、第2ヴァイオリン=内野祐佳子、第1ヴィオラ=ラズヴァン・ポポヴィッチ、第2ヴィオラ=渡辺咲耶、第1チェロ=牟田口遥香、第2チェロ=ベルンハルト・直樹・ヘーデンボルクです。ポポヴィッチとヘーデンボルクはシトコヴィツキーと同じアンサンブル・ラロのメンバーです

この曲でも第1ヴァイオリンのシトコヴィツキーのリードが凄い 隣で演奏する内野祐佳子さんの演奏も凄い 弦楽四重奏から楽器を2つ増やした弦楽六重奏曲による推進力に満ちた分厚い音楽の醍醐味を十二分に味わうことが出来ました

終演は午後1時5分でした 一旦家に引き上げ、夕方再びサントリーホールに向かい、東京交響楽団の定期演奏会を聴くことにしました

 

     

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吉野直子&池松宏でフランセ「バロック風二重奏曲」、ドビュッシー「夢想」他を聴く ~ 「プレシャス1pm」 サントリーホール「ブルーローズ」 / 名画座「早稲田松竹」のこだわり~朝日の記事から

2019年06月15日 07時20分03秒 | 日記

15日(土)。わが家に来てから今日で1716日目を迎え、トランプ米大統領は12日のABCニュースのインタビューで、2020年の大統領選に関し「どこかの国の人が電話してきてライバル候補の情報があるというならば聞きたいと思うだろう」と語ったことについて与野党から批判の声が上がっている というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

     そういう発言がロシア疑惑を生んだということをまったく理解していないようだ

    

         

 

昨日、夕食に「豚もやし炒めのおろしポン酢かけ」「生野菜とサーモンのサラダ」「まぐろの山掛け」「冷奴」を作りました 「豚~」はコスパ抜群で栄養満点です

 

     

 

         

 

13日付の朝日新聞朝刊・第2東京面「ぶらりふらり」コーナーの「高田馬場2」で早稲田松竹が取り上げられていました 超訳すると

「名画座『早稲田松竹』は旧作映画上映にこだわっている。JR高田馬場駅から早稲田通りを東に500メートル。153席の小さな映画館だ 1951年に開館し、地元の早稲田大学をはじめ、多くの若者に愛され続けてきた。今は数少なくなった名画座の一つだ。かつての常連客で後に世界的な映画監督になる人物もいる。『万引き家族』でカンヌ国際映画祭の最高賞『パルムドール』を受賞した是枝裕和監督は足しげく早稲田松竹に通った一人だ 館に『青春の場所』だったとコメントを寄せている。開館当時から、2本立てが基本。監督特集や作品テーマの関連性、封切された映画に関連のある旧作などを上映する 2本立て大人1300円(※学生1100円、シニア900円)。同じ施設に複数のスクリーンがあるシネマコンプレックスの新作映画1本1900円に比べると割安だ 作品によっては平日でも立ち見が出る。休館の憂き目も一度見ている。90年代に入ると、シネコンが各地に進出。苦戦を強いられ、早稲田松竹も2002年3月で幕を下ろした スタッフの退職など人的問題が直接の要因だが、客足も落ちていた。しかし、早大生を中心に『復活プロジェクト』が発足し、その年の暮れには再開にこぎつける スタッフも一新され、邦画やアジア映画の上映も始め、作品の幅を広げた。早稲田松竹の魅力とは。菊田眞弓支配人は理由を『新たな作品との出会い』と説明する。観客のほとんどが2本立てのどちらかの作品を目当てに訪れる。『劇場を訪れると、思いがけない作品を発見し、世界が広がる』。早大基幹理工学部教授も務める是枝さんから映画制作などを学んだ学生の作品と、参考となる一般映画を一緒に上映する企画などを2年前から行っている

私が目標に掲げている年間160本の映画鑑賞のうち9割は「早稲田松竹」、「新文芸坐」(池袋)、「ギンレイホール」(神楽坂)の3館で観ています いずれも2本立てですが、早稲田松竹は最近、館内のリニューアルを済ませたばかりで綺麗です 6月の上映予定は下のチラシの通りですが、カトリーヌ・ドヌーヴ主演の「昼顔」と「哀しみのトリスターナ」は是非 観に行きたいと思っています

 

     

 

     

 

ところで、大好きな小説家・佐藤正午の第157回直木賞受賞作「月の満ち欠け」に早稲田松竹が出てきます アルバイト学生の三角がある女性との再会を期待して早稲田松竹に行くという設定です 興味のある向きは2017年9月15日付toraブログをご参照ください

 

     

 

         

 

昨日、サントリーホール「ブルーローズ」で「プレシャス1pm  第一人者の華麗な交歓」を聴きました これは「サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン2019」の一環として開かれたコンサートです プログラムは①クープラン(バズレール編曲)「コンセールのための5つの小品」、②フランセ「バロック風二重奏曲」、③ドビュッシー「夢想」、④サン=サーンス「ファゴット・ソナタ  ト長調作品168」(コントラバス版)です 演奏はハープ=吉野直子、コントラバス=池松宏です

 

     

 

自席はC6列1番、センターブロック左通路側です

1曲目はクープラン(バズレール編曲)「コンセールのための5つの小品」です この曲はパリ音楽・演劇学校のチェロ科教授を務めていたポール・バズレールが、フランソワ・クープラン(1668-1733)が作曲したヴィオラ・ダ・ガンバのための作品から5つの曲を選び出し、チェロをメインとした組曲として再構成したものです 「前奏曲」「シシリエンヌ」「トランペット」「嘆き」「悪魔の歌」から成ります

池松氏と吉野さんが登場し演奏に入ります。曲想としてはいかにもフランス・バロックです コントラバスとハープの組み合わせが絶妙で、宮殿の大広間で演奏するのを聴いているような優雅な気分でした

ここで二人がマイクを持ってトークに入ります 吉野さんから、コントラバスを2挺持参した理由を尋ねられると、池松氏は「リサイタルなどの時はソロ用の楽器を使うのですが、これはオーケストラで弾く時より一音高く調弦されています 1曲目はそれで演奏しました。次に演奏するフランセの曲は、この楽器より低い音(普通の音程)による楽器を使います。これは360年前のイタリアの楽器です」と説明しました つまりストラディバリウスかそれと同等の楽器ということです

そして、2曲目のフランセ「バロック風二重奏曲」の演奏に入りました この曲はジャン・フランセ(1912-1997)が1980年に、ベルリン・フィルのコントラバス奏者も務めたギュンター・クラウスと、ハープ奏者のギゼル・ヘルベルトのために作曲した作品です 第1楽章「アレグロ・ヴィヴァーチェ」、第2楽章「アンダンテ」、第3楽章「アレグロ」、第4楽章「ヴィヴァーチェ」の4楽章から成ります

の楽章もフランセらしいユーモアとエスプリに満ちた音楽で、コントラバスとハープの掛け合いが楽しく聴けました

ここで再び、二人がマイクを持ってトークに入ります 吉野さんが「いまのフランセの曲は、演奏が簡単そうに見えたでしょう? でもハープは手と足が大変なんです」と言って池松氏に振ると、「ハープも難しいようですが、コントラバスには超難しい曲です 第一、この曲の録音はありません。それほど誰も演奏する人がいないのです 演奏するのは確か10年前に吉野さんからこの曲を一緒に演奏したいと言われてイヤイヤ演奏して以来です」と答えたので、吉野さんが「イヤイヤなんて・・・」と苦笑していました

そして、3曲目のドビュッシー「夢想」の演奏に入りました この曲はクロード・ドビュッシー(1862-1918)が1890年に作曲した作品で、原曲はピアノ・ソロの曲です この曲はメロディーが美しいので、やっとコントラバスの本来の低音の魅力が発揮できました

最後の曲はサン=サーンス「ファゴット・ソナタ  ト長調作品168」(コントラバス版)です この曲はカミーユ・サン=サーンス(1835-1921)が1921年に作曲した作品です 第1楽章「アレグレット・モデラート」、第2楽章「アレグロ・スケルツァンド」、第3楽章「モルト・アダージョ~アレグロ・モデラート」の3楽章から成ります

この曲について、吉野さんが「これならコントラバスで弾いても いけるんじゃないかと思って池松さんに提案したのです」と話されました 第2楽章の舞曲調の音楽は、高音部がコントラバスにとっては厳しそうでしたが、それ以外は、バッチリの音程で軽快に演奏しました 吉野さんのハープが美しいのは言うまでもありません


     


ここで池松氏がマイクを持って「今日はありがとうございました。実は、今日は私の55歳の誕生日なんです(会場)。オケの定期演奏会(都響)などではメンバーがお祝いしてくれるんですが、今回のような小規模のコンサートで誕生日を迎えるのは初めてです 誰も祝ってくれないので、佐野素晴さんにお願いして、誕生日の曲をラヴェル風に作曲してもらうことにしました 題して『誕生日のパヴァーヌ』です」と爆弾発言し、吉野さんと演奏に入りました

コントラバスの側面を手の甲で小太鼓のように叩いて「ボレロ」のメロディーを奏でることから始まり、ラヴェルの名曲を織り交ぜながら、いかにもラヴェル風なハッピーバースデー・ミュージックが奏でられました 途中、池松氏が大声で「皆さん、ご一緒に」と叫んで「ハッピーバースデー・ツゥー・ユー」の合唱を要請、聴衆は「視聴者参加番組かい」と思いながらも同盟国への協力を惜しみませんでした 何と心優しい人たちなんでしょう 涙がチョチョ切れます 今度は吉野さんの時に協力したいと思います

     

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クス・クァルテット「ベートーヴェン・サイクルⅤ」を聴く~弦楽四重奏曲第14番嬰ハ短調作品131、同第16番ヘ長調作品135:サントリーホール・チェンバーミュージック・ガーデン

2019年06月14日 08時10分11秒 | 日記

14日(金)その2.よい子は「その1」も見てね。モコタロはそちらに出演しています

 

          

 

昨夕、サントリーホール「ブルーローズ」でクス・クァルテット「ベートーヴェン・サイクルⅤ」を聴きました プログラムはベートーヴェンの①弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調 作品131、②同第16番 ヘ長調 作品135です 

「ベートーヴェン・サイクル」もこの日が最終回、セット券で購入したC2列8番の席もこれが最後です 通路から一番奥まったど真ん中の席は何かと窮屈です。来年はセット券の指定席の取り方を間違えないようにしたいと思います

 

     

 

1曲目は「弦楽四重奏曲 第14番 嬰ハ短調 作品131」です この曲はルートヴィヒ・ヴァン・ベートーヴェン(1770-1826)が1826年3月頃から7月にかけて作曲、甥のカールを士官に任命したヨーゼフ・フォン・シュトゥッターハイム男爵(当時陸軍の元帥副官の中尉)に献呈されました 初演はベートーヴェンの死後の1828年10月でした 第1楽章「アダージョ・マ・ノン・トロッポ・エ・モルト・エスプレッシーヴォ」、第2楽章「アレグロ・モルト・ヴィヴァーチェ」、第3楽章「アレグロ・モデラート」、第4楽章「アンダンテ・マ・ノン・トロッポ・エ・モルト・カンタービレ」、第5楽章「プレスト」、第6楽章「アダージョ・クアジ・ウン・ポコ・アンダンテ」、第7楽章「アれグロ」の7楽章から成ります

ただし、各楽章の長短は極端に異なり、アルバン・ベルク四重奏団のCDによると、第1楽章:6分51秒、第2楽章:3分7秒、第3楽章:52秒、第4楽章:13分23秒、第5楽章:5分36秒、第6楽章:1分33秒、第7楽章:6分26秒となっており、第3楽章と第6楽章が極端に短く、それぞれ次の楽章(第4楽章、第7楽章)への序奏と考える見方もあるようです なおこの作品は全楽章が休みなく続けて演奏されます

4人が登場し、さっそく第1楽章に入ります 冒頭、第1ヴァイオリンから第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロへと荘重なフーガが演奏されますが、この出だしは良かったと思います この日は4人とも楽器が良く鳴っていました。ただ、第4楽章あたりにくると、若干中だるみのような傾向が見られ、アンサンブルがしっくりこない場面もありました この曲は楽章間の切れ目がないので、それだけにうまく流れを作っていくのに神経を使うところがあるかもしれませんね


     


休憩後の1曲目は「弦楽四重奏曲 第16番 ヘ長調 作品135」です この曲は1826年10月に完成された最後の弦楽四重奏曲で、ベートーヴェンの死後の1928年3月23日にシュパンツィク四重奏団により初演されました 第1楽章「アレグレット」、第2楽章「ヴィヴァーチェ」、第3楽章「レント・アッサイ、カンタンテ・エ・トランクィッロ」、第4楽章「グラーヴェ、マ・ノン・トロッポ」の4楽章から成ります

ベートーヴェンは第12番以降、作曲順に楽章構成を4楽章から、第15番=5楽章、第13番=6楽章、第14番=7楽章と拡大させてきましたが、最後の第16番では”古典的な”4楽章構成に戻しています

この作品でいつも問題になるのは、第4楽章です ベートーヴェンの自筆のパート譜には、4つのパートすべてに「ようやくついた決心」というタイトルと、グラーヴェとアレグロのモティーフの譜例、そしてそれぞれに「そうでなくてはならないか?」と「そうでなくてはならない!」という言葉が書き込まれているのです。これが何を意味しているのか、いくつかの説が提起されてきました 前出のアルバン・ベルク四重奏団のCDの解説を音楽評論家の故・門馬直美氏が書いていますが、この楽章については次のように書いています

「家政婦との給料の問答だという説もある また、ベートーヴェンは1826年4月にこの『そうでなければならない!』のアレグロの動機を用いて、カノンを作曲しているという事実がある このカノンは、作品130(第13番)の四重奏のパート譜の写しを貸すことに対して、シュパンツィヒに50グルデンを支払うように、音楽愛好者のデンプシャーに要求したことから生まれたものである。デンプシャーは、シュパンツィヒとの予約演奏会を無視して、自宅でこの曲を演奏させようと考え、ベートーヴェンからこの自宅の演奏会のために楽譜を借りられると思ったのである。この50グルデンのことを聞いたデンプシャーは、笑いながら、『そうでなければならないか?』と言った。人からこのことを伝え聞いたベートーヴェンも声高に笑って、テンポの速いカノンを書き、『そうでなければならない。そうだ、そうだ、犠牲を払え』という歌詞を付けた。このやり取りをベートーヴェンは大変気に入っていたようである。この四重奏曲の最初のスケッチとカノンの作曲の時期は大体に同じころと推定されるが、カノンの動機に使う目的であったのが、デンプシャーの『そうでなければならないか?』という発言で霊感がわいて、言葉を付けたカノンが書かれたのだろうという説が行われている

さて、実際はどうなのか?「ベートーヴェンのみぞ知る」です。この曲を聴いていつも思うのは、「そうでなくてはならないか?」という問いと「そうでなくてはならない!」という答えは、すでに第1楽章の冒頭のメロディーに現われているのではないかということです。そんな風に聴こえませんか

それはともかく、4人のこの曲の演奏は最初から最後まで安定していたように思います。

最後の曲はマントヴァーニ「弦楽四重奏曲第6番”ベートーヴェ二アーナ」の世界初演です この曲は1974年フランス生まれ、2010年にパリ国立高等音楽院長に最年少で就任したブルーノ・マントヴァーニが作曲した作品で、本人の言葉によると「ベートーヴェンの全弦楽四重奏曲に由来する主題素材を11分に凝縮したもの」です 第2ヴァイオリンのオリヴァー・ヴィレが、サントリーホールでの世界初演に至るまでの経緯を英語で話してから演奏に入りました

作品を聴く限り、ベートーヴェンの弦楽四重奏曲全17曲の全楽章を切り刻んで、パッチワークのようにつなぎ合わせたような曲想で、ラズモフスキーあり、セリオーソあり、大フーガあり、後期の作品あり、そしてアレグロあり、アダージョあり、プレストありといった「ベートーヴェン弦楽四重奏曲ごった煮コンピレーション」の如しでした

これをもって今年の「ベートーヴェン・サイクル」も終了したわけですが、今回のクス・クァルテットの4人は、日本音楽財団から貸与されたストラディバリウス「パガニーニ・クァルテット」で演奏したわけですが、誰かが突出して優れているということはなく、それぞれの動きを探り合いながら個々の実力を発揮していたように思います

来年の「ベートーヴェン・サイクル」はどこのクァルテットが演奏するのだろうか? 個人的には第1回目に演奏した「パシフィカ・クァルテット」の再登場を希望します


     

 

コンサートが終わりホールの外に出たら、杖を突いたカーネル・サンダース人形が出入口の方を向いて立っていたのでビックリしました ケンタッキーおじさんがこんな所にいるわけないよな、と思ってよく見ると、白髪で白い顎鬚を生やしたサスペンダー爺さんでした 「ブルーローズ」にはいなかったので、「大ホール」で開催の読響定期演奏会に出没していたようです 今年のチェンバーミュージック・ガーデンでは一度も見かけなかったので、「ブルーローズ」は平和な状態が維持されていましたが、その分「大ホール」の方に不愉快な思いをする人が多数発生していることが予想されます。お気の毒です それにしても、何をしていたんだろう どこのコンサートホールに行っても、白いシャツに吊りズボン(サスペンダー)、大きな荷物をしょって開演ギリギリにやってきて最前列ど真ん中の席に堂々と座る自己顕示欲旺盛なサスペンダー爺さん 今や知らない人以外はすべての人が知っている有名人(famousではなくnotoriousの方だけど)。はっきり言って、コンサート終了後まで”顔見世興行”することはないのに、と思います

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藝大モーニングコンサートでエイワゼン「バストロンボーンのための協奏曲」(B.tb:久保田和弥)、ショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番」(Vn:齋藤碧)を聴く

2019年06月14日 07時13分35秒 | 日記

14日(金)その1.わが家に来てから今日で1715日目を迎え、国連児童基金(ユニセフ)は13日付で日本など41カ国の政府による2016年時点の子育て支援策に関する報告書を発表したが、給付金などの支給制度を持つ出産休暇・育児休業期間の長さは日本の制度で1位の評価を得たが、「実際に取得する父親は非常に少ない」と特異性が指摘された というニュースを見て感想を述べるモコタロです

 

     

      「働き方改革」を言うなら形式だけでなく実態が伴うようにしなければだめじゃね

 

         

 

昨日、夕食に「鶏のトマト煮」「生野菜サラダ」「冷奴」を作りました 「鶏~」は久しぶりに作りましたが簡単で美味しいです

 

     

 

         

 

昨日、午前11時から東京藝大奏楽堂で第5回藝大モーニングコンサートを、午後7時からサントリーホール「ブルーローズ」でクス・クァルテット「ベートーヴェン・サイクルⅤ」を聴きました   ここでは藝大モーニングコンサートについて書きます

プログラムと演奏者は①エイワゼン「バストロンボーンのための協奏曲」(B.tb:久保田和弥)、②ショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番」(Vn:齋藤碧)です   管弦楽=藝大フィルハーモニア管弦楽団、指揮=藝大卓越教授 ジョルト・ナジです

 

     

 

全席自由です。1階10列24番センターブロック右通路側を押さえました

オケは左から第1ヴァイオリン、第2ヴァイオリン、ヴィオラ、チェロ、その後ろにコントラバスという並び。コンマスは戸原直です

1曲目はエイワゼン「バストロンボーンのための協奏曲」です バストロンボーンを独奏する藝大4年生・久保田和弥君のプログラム・ノートによると、この曲はオハイオ州生まれのエリック・エイワゼン(1954年~)が、当初「チューバのためのソナタ」として出版した作品を、後にバストロンボーン協奏曲に作り直したものです 一般には馴染みのない作曲家ですが、金管楽器奏者の間では有名な人のようです 第1楽章「アンダンテ・コン・モート」、第2楽章「アンダンテ・エスプレッシーヴォ」、第3楽章「アレグロ・リトミコ」の3楽章から成ります

ナジの指揮で第1楽章が開始されますが、冒頭からバストロンボーンの重低音の魅力が溢れた曲想です 次第にテンポアップしてメリハリの付いた軽快なリズムが演奏されると、バストロンボーンでもこれ程のスピードがこなせるのか、とちょっとした驚きを感じます 第2楽章では、この楽器特有の優しく温かみのある音色が会場に響き渡ります 第3楽章に入ると一転、リズム感に満ちた激しい音楽が展開します 久保田君は確かな技巧に裏づけられた素晴らしいカデンツァを経て、フィナーレに向けて疾走します

一般のコンサートではほとんど聴く機会のない「バストロンボーン協奏曲」を取り上げ、素晴らしい演奏で紹介してくれた久保田君に感謝します この楽器の魅力が伝わってきました

 

     


2曲目はショスタコーヴィチ「ヴァイオリン協奏曲第1番 イ短調 作品77」です この曲はドミトリー・ショスタコーヴィチ(1906‐1975)が1947年夏から1948年3月にかけて作曲しましたが、作曲中の1948年1月にソ連共産党のいわゆる”ジダーノフ批判”によってショスタコーヴィチらの作曲家が「社会主義リアリズムに反した形式主義者」として批判の対象になったため、発表を見送りました そのため、この曲の初演はスターリンの死後の1955年10月29日、ダヴィッド・オイストラフのヴァイオリン独奏、エフゲニー・ムラヴィンスキー指揮レニングラード・フィルの演奏により行われました 「政治が芸術に介入する」というのは現代社会では考えられないことですが、当時のソ連共産党中央委員会書記のジダーノフはどれほど芸術を理解していたのでしょうか

この曲は第1楽章「ノクターン:モデラート」、第2楽章「スケルツォ:アレグロ」、第3楽章「パッサカリア:アンダンテ」、第4楽章「ブルレスケ:アレグロ・コン・ブリオ」の4楽章から成ります

ヴァイオリンを独奏する藝大4年生・齋藤碧さんがシルバーの衣装に身を包まれて登場、配置に着きます ナジの指揮で第1楽章が開始されます。冒頭から瞑想的な音楽が展開しますが、齊藤さんはかなり意識して指揮者を見ながら演奏します 音楽のペースはナジ氏に任せたように思われます。齋藤さんはかなりのテクニックの持ち主で、とくに第3楽章における長大なカデンツァでは、極めてスローテンポの出だしから高速テンポの第4楽章への橋渡しまで、作曲者の苦悩を表出するかのような演奏を展開し、説得力を持たせました 第4楽章の高速演奏によるブルレスケは鮮やかでした

久保田君にしても齋藤さんにしても、まだ大学4年生です 今がピークと言われないように、これからはそれぞれの個性を磨いて頑張ってほしいと思います

 

     

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