監禁致死事件犯が政治家秘書になる
“社会復帰”の是非
DIAMOND online 2015年8月8日 新聞・週刊誌 三面記事を読み解く
降旗 学 [ノンフィクションライター]
過日の朝日新聞がとてもお茶目な『天声人語』を書いたので紹介したい。自民党・武藤貴也衆議院議員のツイートについてである。だが、それがあまりにも朝日的というか「利己的」な内容だったので、アレンジしてみた。
〈未熟な若手議員の放言に過ぎないのだろうか。そうは思えない。自民党の武藤貴也衆議院議員が、安保関連法案に反対する学生グループ「SEALDs」の主張について、「『だって戦争に行きたくないじゃん』という極端な利己的考え」と批判した。ツイッターへの投稿だ〉
↓
〈未熟な新聞記者の放言に過ぎないのだろうか。そうなのだろう。朝日新聞社の冨永格(ただし)特別編集委員が、ナチス・ドイツの旗を持った人たちのデモ写真をアップし、「東京での日本人の国家主義者によるデモ。彼らは安倍首相と彼の保守的な政権を支持している」と書き込んだ。ツイッターへの投稿は英語とフランス語によるものだった〉
〈武藤氏は続けて「利己的個人主義がここまで蔓延したのは戦後教育のせいだろう」と述べる。戦争を起こすな、憲法九条を守れという訴えが利己的とは、いかなる理屈なのか〉
↓
〈ツイッターが炎上するやいなや、冨永氏は「きょうのヘイトデモに関する英仏ツイート(削除ずみ)について。嫌韓デモに参加する人たちには安倍首相の支持者が多いという趣旨でしたが、英語ツイートに「一般的に」の言葉が抜けていたので、彼らがこぞって首相を支持しているかの印象を与えるツイートになってしまいました。失礼しました」とツイート上で謝罪した。記事は捏造しろ、バレたらテケトーにお詫びしておけという社是とは、いかなる新聞社なのか〉
〈武藤氏ほど露骨ではないにしても、類似した志向性が自民党にはあることを忘れるわけにはいかない。そのような政権による安保法案であることも〉
↓
〈冨永氏だけが特別というわけではないにしても、慰安婦報道捏造・ねじ曲げ吉田調書・自作自演サンゴKY事件・取材対象者に対しひどい目に遭わせてやる発言にあるように記事をでっちあげる体質が朝日新聞社にはあることを忘れるわけにはいかない。そのような新聞社の隠れ本社が中南海に、隠れ支社が青瓦台にあることも〉
この冨永特別編集員は、どうやらずっと以前、ハーケンクロイツ旗を掲げた愚か者たちのデモを写した写真を「ヘ~イ、世界の諸君、これが安倍政権を支持する人たちなんだぜ」と偽って発信したようです。しかも、ご丁寧に英語とフランス語の両方で。でっちあげをさも事実の如く報じるやり方は朝日新聞社が伝統的にお得意とする報道方針みたいなので、きっとこれからもやります。やり続けます。
自分たちのお仲間がまたでっちあげ発信をし、それがバレて袋だたきにあっているそのころ、政治家のツイートを槍玉に挙げるあたり、朝日って実はお茶目な新聞社なのかも、なんて思ってしまった。
『朝日新聞社の冨永格特別編集委員が二日、ツイッターに不適切な投稿をし、削除しました。本社は、報道姿勢に疑念を抱かせる行為だったと重く受け止め、社名などを名乗ってツイッターを利用できる「公認記者」から外すとともに、コラム「日曜に想う」の執筆者からも外す措置をとります(中略)
冨永記者は投稿について、事実関係の裏付けをしておらず、写真も撮影者の許可をとらずに転載していました(中略)
本社の記者ツイッターは記者個人の責任で発信していますが、このような事態を招いたことについて、みなさまにおわびいたします。記者に対する研修の強化などを通じ、ソーシャルメディアの適切な利用を進めます』(朝日新聞社のお詫びより)
裏もとらず「強制連行はあった」と嘘を報道し続けた朝日新聞が『報道姿勢に疑念を抱かせる』だなんて言ってます。実に白犬だ。尾も白い。わん。
というわけで、経営再建中のシャープは約三五〇〇人の希望退職者を募ったが、応募者数は三〇〇〇人強で計画数には届かなかったとあった。対象者が中高年だったこともあり、再就職への不安が計画数を下まわった理由と見られている。
この時代の転職に不安を抱えるのはわかるが、こんな転職はアリか、ナシかだ。
その男のことは、仮にPとしよう。Pは、衆議院議員・中根一幸氏(埼玉六区)の公設秘書を務めていた(二〇一二年に私設秘書。その後、前任者に変わり公設秘書に)。
「昨年の衆院選のころから議員の公設秘書のなかに監禁殺人事件の犯人として懲役刑を受けた者がいると噂になっていました。当人が人を殺した過去を自慢気に語り、複数の同僚秘書が怯えて退職していったと聞きました」
この噂の人物が、中根一幸議員の公設秘書Pだった。アンビリーバボー。
Pが犯した事件は、二〇〇四年、都内商社に勤める四一歳男性(当時)を集団で拉致し、殺害した悲惨なものだった。当時の事件を社会部記者が説明した。
「主犯は被害者の元上司。不正を働き、会社から訴訟を起こされたことで訴訟担当の被害者を逆恨みした身勝手な事件でした、カネで五人の実行犯を雇って拉致させ、暴行を加えたうえで身体と顔をテープでグルグル巻きにして放置し、殺害したのです」
Pは、カネで雇われた“実行犯”のひとりだった。報酬は一〇万円だったそうだ。当時二二歳だったPは、一〇万円の報酬で人ひとりの命を奪う事件に加わり、逮捕監禁致死罪で懲役六年の実刑判決を受けた(五年で仮出所)。
「公判でPは『恩ある先輩に誘われ断れなかった』などと話していましたが、犯行時には被害者に馬乗りになって誰よりもひどく殴りつけていたことが明らかになっています。法廷でのPは無表情で最後まで遺族に対して頭を下げることはありませんでした」
出所後、保護観察にあったPには、「更生の証し」として被害者の月命日に一万円ずつ賠償を行なってほしいという遺族の意向が伝えられていたが、Pは月五〇〇〇円を五ヵ月振り込んだきりだったそうだ。おそらく、彼は五年のムショ暮らしと五ヵ月の支払いで「更生」したと思い込んでいたのだろう。
そんな男が、気がつけば中根一幸衆議院議員の公設秘書に収まっていた。どんな経緯やからくりがあったのかは定かではないものの、事情を知る関係者が言う。
「彼の採用については元豊島区議など複数の政界関係者が関わっています。当初から中根氏はPを特別扱いしており、彼の刑務所仲間にも仕事を斡旋してあげていました。増長したPは前任の公設秘書だった二〇代の男性に対して、『俺は人を殺したことがある』などと威圧し、退職に追い込んでいったのです」
中根一幸議員がPを特別扱いし可愛がったのは、中根議員にも飲食店の女性店員に暴力をふるい訴えられたことがあったからかもしれない。Pにはシンパシーを感じていたのかも(その後、示談が成立し、中根一幸議員は起訴猶予処分 ← 本人のHPには記載されてません。女性に手をあげたくせに『女性が元気で頑張れる社会と環境づくり』などということがHPにはイケシャアシャアと書かれていたりする。厚顔無恥の極み)。
「Pの雇用は道義的に問題があると指摘した女性秘書もいましたが、中根氏はPをかばったそうです(後略)」
一説によると、中根一幸議員の有力支援者の娘とPが交際しているともある。支援者の機嫌を損ねないようPを特別扱いしているのだとしたら、中根一幸という男は、実に××の穴の小さい男だ(伏せ字には思いついた単語を入れてください)。
元少年Aと同じように、Pは家庭裁判所で改名の手続きをとり、現在は新しい名前に変わっている。その名前で中根一幸衆議院議員の公設秘書になっていたのだが、公設秘書の身分は特別職の国家公務員になり、給与は「国庫」から支出される。Pの年収は約五〇〇万円超だ。これなら遺族への支払いだって十分にできたはずなのに、支払いは止まったままだった。有力支援者の娘とはデートしてたのだろうけど。
週刊文春の記者さんが、Pを直撃した。
「今日は私にもアポがありますし、埼玉県知事選挙でバタバタしていますので、午後にきちんと時間をつくります」
その夜、編集部に一枚のファックスが送信された。
〈そのこと(過去の事件)については中根先生には話をしておりません。議員会館の女性職員が事件の噂を聞いてきたときにも中根先生から事実確認をされましたが、解雇されるのではないかと思い本当のことを説明できませんでした〉
他の秘書への「威圧」は否定したとのことだ。そして、驚いたことに、週刊文春が取材した七月一四日付けで、Pは公設秘書を辞職したのである。とても信じられない。直撃取材のその日のうちに辞めているなんて――。
逃げたか? それとも、事情を知った中根一幸衆議院議員がトカゲの尻尾を切って「自己保身」に走ったか……?
Pの雇用は、秘書のあり方について大きな問題をはらんでいる。ひとつは、殺人事件の前科がある人間を、政治家が「公設秘書」に雇っていいものか、だ。
私は断言してもいい。中根一幸議員がPの「過去」を知らなかったはずがないことを。女性秘書だって建言しているし、Pのムショ仲間に仕事を斡旋していたとも言われているのだし。
だが仮に、Pの前科を本当に知らなかったとすれば、それは中根一幸議員がワキの甘い政治家であることの証左になってしまう。何故なら、公設秘書にする人間の「身体検査」がずさんだからだ。私設秘書でも問題になっただろうが、Pは公設秘書なのだ。
また、殺人事件の実行犯で懲役刑を食らった人間を公設秘書にしていれば、後々にどんな問題が生じるか、政治家なら判断できなければおかしい。おそらくは、支援者に勧められるまま、唯々諾々と従ってPを公設秘書にしたのだろう。
〈すでに退職している元秘書のプライバシーに関する質問には回答しておりません〉
週刊文春の取材に、中根一幸議員は書面でこう返答した。前科ある人間を公設秘書として雇っていたことへの説明も釈明も、いっっさいなしだ。やっぱり逃げたか。何ごともなかったかのような顔で応えるところに、中根一幸という政治家の本質と責任能力とが表れているようにも見える。こいつは、女性を殴った政治家だ。弱者にしか強く出られないのかもね。
私は、前科のある人間の社会復帰は、是非とも進めるべきだと思っている。そこには、本当に「更生」したかどうかの判断が求められるが、前科者だから職に就けない、就けても厳しい仕事ばかりの社会はおかしいと思っている。
では、Pの場合はどうか――?
条件付きでは、アリだ。ひとつは、Pが遺族への振り込みを続けること。また、『俺は人を殺したことがある』などと自慢気に言い、他の秘書を威圧するような愚劣な行為に出ないこと。もうひとつは、前科者でも私は雇い入れる――、と政治家が公言することだ。
だが、Pには、罪を犯した自分を省みる謙虚な心持ちもなければ、被害者遺族に詫びる態度も見られなかった。振り込みは滞ったままで、Pという男には何ひとつ「更生の証し」が見られなかったのである。更生したふりをしていただけなのだろう。
また、Pを雇い入れた中根一幸衆議院議員からも、何故、Pを雇い入れたのかの説明もなかった。中根一幸議員は「Pはもう辞めたんだから知りませ~ん」と逃げただけだ。少なくとも、Pには前科がある。だが、前科者にも社会復帰と雇用の機会を与えるべきと思うから私はPを雇い入れた――、とでも言っていれば、今回の問題は印象が変わったはずだ。
犯罪者は、罪を犯したことへの深い後悔と強い反省があって、初めて社会復帰が許されるのだ。そのとき、忘れてはならないのが、彼らを受け入れる社会の準備だ。
ということで、問題です。
お隣に、懲役経験のある人が引っ越してきました。犯した罪は殺人だそうです。あなたはそれを知ってしまった。でも、何も知らないふりをしてお隣さんと接するか、近所づきあいを避けるか、ご近所に噂を振りまくか、罪を償ったのだから理解を示すか、また何か事件を起こすかもと怯えながら暮らすか。
お隣には人殺しが住んでいます。あなたはどうしますか――?
参考記事:朝日新聞8月5日付
週刊文春7月30日号他
“社会復帰”の是非
DIAMOND online 2015年8月8日 新聞・週刊誌 三面記事を読み解く
降旗 学 [ノンフィクションライター]
過日の朝日新聞がとてもお茶目な『天声人語』を書いたので紹介したい。自民党・武藤貴也衆議院議員のツイートについてである。だが、それがあまりにも朝日的というか「利己的」な内容だったので、アレンジしてみた。
〈未熟な若手議員の放言に過ぎないのだろうか。そうは思えない。自民党の武藤貴也衆議院議員が、安保関連法案に反対する学生グループ「SEALDs」の主張について、「『だって戦争に行きたくないじゃん』という極端な利己的考え」と批判した。ツイッターへの投稿だ〉
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〈未熟な新聞記者の放言に過ぎないのだろうか。そうなのだろう。朝日新聞社の冨永格(ただし)特別編集委員が、ナチス・ドイツの旗を持った人たちのデモ写真をアップし、「東京での日本人の国家主義者によるデモ。彼らは安倍首相と彼の保守的な政権を支持している」と書き込んだ。ツイッターへの投稿は英語とフランス語によるものだった〉
〈武藤氏は続けて「利己的個人主義がここまで蔓延したのは戦後教育のせいだろう」と述べる。戦争を起こすな、憲法九条を守れという訴えが利己的とは、いかなる理屈なのか〉
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〈ツイッターが炎上するやいなや、冨永氏は「きょうのヘイトデモに関する英仏ツイート(削除ずみ)について。嫌韓デモに参加する人たちには安倍首相の支持者が多いという趣旨でしたが、英語ツイートに「一般的に」の言葉が抜けていたので、彼らがこぞって首相を支持しているかの印象を与えるツイートになってしまいました。失礼しました」とツイート上で謝罪した。記事は捏造しろ、バレたらテケトーにお詫びしておけという社是とは、いかなる新聞社なのか〉
〈武藤氏ほど露骨ではないにしても、類似した志向性が自民党にはあることを忘れるわけにはいかない。そのような政権による安保法案であることも〉
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〈冨永氏だけが特別というわけではないにしても、慰安婦報道捏造・ねじ曲げ吉田調書・自作自演サンゴKY事件・取材対象者に対しひどい目に遭わせてやる発言にあるように記事をでっちあげる体質が朝日新聞社にはあることを忘れるわけにはいかない。そのような新聞社の隠れ本社が中南海に、隠れ支社が青瓦台にあることも〉
この冨永特別編集員は、どうやらずっと以前、ハーケンクロイツ旗を掲げた愚か者たちのデモを写した写真を「ヘ~イ、世界の諸君、これが安倍政権を支持する人たちなんだぜ」と偽って発信したようです。しかも、ご丁寧に英語とフランス語の両方で。でっちあげをさも事実の如く報じるやり方は朝日新聞社が伝統的にお得意とする報道方針みたいなので、きっとこれからもやります。やり続けます。
自分たちのお仲間がまたでっちあげ発信をし、それがバレて袋だたきにあっているそのころ、政治家のツイートを槍玉に挙げるあたり、朝日って実はお茶目な新聞社なのかも、なんて思ってしまった。
『朝日新聞社の冨永格特別編集委員が二日、ツイッターに不適切な投稿をし、削除しました。本社は、報道姿勢に疑念を抱かせる行為だったと重く受け止め、社名などを名乗ってツイッターを利用できる「公認記者」から外すとともに、コラム「日曜に想う」の執筆者からも外す措置をとります(中略)
冨永記者は投稿について、事実関係の裏付けをしておらず、写真も撮影者の許可をとらずに転載していました(中略)
本社の記者ツイッターは記者個人の責任で発信していますが、このような事態を招いたことについて、みなさまにおわびいたします。記者に対する研修の強化などを通じ、ソーシャルメディアの適切な利用を進めます』(朝日新聞社のお詫びより)
裏もとらず「強制連行はあった」と嘘を報道し続けた朝日新聞が『報道姿勢に疑念を抱かせる』だなんて言ってます。実に白犬だ。尾も白い。わん。
というわけで、経営再建中のシャープは約三五〇〇人の希望退職者を募ったが、応募者数は三〇〇〇人強で計画数には届かなかったとあった。対象者が中高年だったこともあり、再就職への不安が計画数を下まわった理由と見られている。
この時代の転職に不安を抱えるのはわかるが、こんな転職はアリか、ナシかだ。
その男のことは、仮にPとしよう。Pは、衆議院議員・中根一幸氏(埼玉六区)の公設秘書を務めていた(二〇一二年に私設秘書。その後、前任者に変わり公設秘書に)。
「昨年の衆院選のころから議員の公設秘書のなかに監禁殺人事件の犯人として懲役刑を受けた者がいると噂になっていました。当人が人を殺した過去を自慢気に語り、複数の同僚秘書が怯えて退職していったと聞きました」
この噂の人物が、中根一幸議員の公設秘書Pだった。アンビリーバボー。
Pが犯した事件は、二〇〇四年、都内商社に勤める四一歳男性(当時)を集団で拉致し、殺害した悲惨なものだった。当時の事件を社会部記者が説明した。
「主犯は被害者の元上司。不正を働き、会社から訴訟を起こされたことで訴訟担当の被害者を逆恨みした身勝手な事件でした、カネで五人の実行犯を雇って拉致させ、暴行を加えたうえで身体と顔をテープでグルグル巻きにして放置し、殺害したのです」
Pは、カネで雇われた“実行犯”のひとりだった。報酬は一〇万円だったそうだ。当時二二歳だったPは、一〇万円の報酬で人ひとりの命を奪う事件に加わり、逮捕監禁致死罪で懲役六年の実刑判決を受けた(五年で仮出所)。
「公判でPは『恩ある先輩に誘われ断れなかった』などと話していましたが、犯行時には被害者に馬乗りになって誰よりもひどく殴りつけていたことが明らかになっています。法廷でのPは無表情で最後まで遺族に対して頭を下げることはありませんでした」
出所後、保護観察にあったPには、「更生の証し」として被害者の月命日に一万円ずつ賠償を行なってほしいという遺族の意向が伝えられていたが、Pは月五〇〇〇円を五ヵ月振り込んだきりだったそうだ。おそらく、彼は五年のムショ暮らしと五ヵ月の支払いで「更生」したと思い込んでいたのだろう。
そんな男が、気がつけば中根一幸衆議院議員の公設秘書に収まっていた。どんな経緯やからくりがあったのかは定かではないものの、事情を知る関係者が言う。
「彼の採用については元豊島区議など複数の政界関係者が関わっています。当初から中根氏はPを特別扱いしており、彼の刑務所仲間にも仕事を斡旋してあげていました。増長したPは前任の公設秘書だった二〇代の男性に対して、『俺は人を殺したことがある』などと威圧し、退職に追い込んでいったのです」
中根一幸議員がPを特別扱いし可愛がったのは、中根議員にも飲食店の女性店員に暴力をふるい訴えられたことがあったからかもしれない。Pにはシンパシーを感じていたのかも(その後、示談が成立し、中根一幸議員は起訴猶予処分 ← 本人のHPには記載されてません。女性に手をあげたくせに『女性が元気で頑張れる社会と環境づくり』などということがHPにはイケシャアシャアと書かれていたりする。厚顔無恥の極み)。
「Pの雇用は道義的に問題があると指摘した女性秘書もいましたが、中根氏はPをかばったそうです(後略)」
一説によると、中根一幸議員の有力支援者の娘とPが交際しているともある。支援者の機嫌を損ねないようPを特別扱いしているのだとしたら、中根一幸という男は、実に××の穴の小さい男だ(伏せ字には思いついた単語を入れてください)。
元少年Aと同じように、Pは家庭裁判所で改名の手続きをとり、現在は新しい名前に変わっている。その名前で中根一幸衆議院議員の公設秘書になっていたのだが、公設秘書の身分は特別職の国家公務員になり、給与は「国庫」から支出される。Pの年収は約五〇〇万円超だ。これなら遺族への支払いだって十分にできたはずなのに、支払いは止まったままだった。有力支援者の娘とはデートしてたのだろうけど。
週刊文春の記者さんが、Pを直撃した。
「今日は私にもアポがありますし、埼玉県知事選挙でバタバタしていますので、午後にきちんと時間をつくります」
その夜、編集部に一枚のファックスが送信された。
〈そのこと(過去の事件)については中根先生には話をしておりません。議員会館の女性職員が事件の噂を聞いてきたときにも中根先生から事実確認をされましたが、解雇されるのではないかと思い本当のことを説明できませんでした〉
他の秘書への「威圧」は否定したとのことだ。そして、驚いたことに、週刊文春が取材した七月一四日付けで、Pは公設秘書を辞職したのである。とても信じられない。直撃取材のその日のうちに辞めているなんて――。
逃げたか? それとも、事情を知った中根一幸衆議院議員がトカゲの尻尾を切って「自己保身」に走ったか……?
Pの雇用は、秘書のあり方について大きな問題をはらんでいる。ひとつは、殺人事件の前科がある人間を、政治家が「公設秘書」に雇っていいものか、だ。
私は断言してもいい。中根一幸議員がPの「過去」を知らなかったはずがないことを。女性秘書だって建言しているし、Pのムショ仲間に仕事を斡旋していたとも言われているのだし。
だが仮に、Pの前科を本当に知らなかったとすれば、それは中根一幸議員がワキの甘い政治家であることの証左になってしまう。何故なら、公設秘書にする人間の「身体検査」がずさんだからだ。私設秘書でも問題になっただろうが、Pは公設秘書なのだ。
また、殺人事件の実行犯で懲役刑を食らった人間を公設秘書にしていれば、後々にどんな問題が生じるか、政治家なら判断できなければおかしい。おそらくは、支援者に勧められるまま、唯々諾々と従ってPを公設秘書にしたのだろう。
〈すでに退職している元秘書のプライバシーに関する質問には回答しておりません〉
週刊文春の取材に、中根一幸議員は書面でこう返答した。前科ある人間を公設秘書として雇っていたことへの説明も釈明も、いっっさいなしだ。やっぱり逃げたか。何ごともなかったかのような顔で応えるところに、中根一幸という政治家の本質と責任能力とが表れているようにも見える。こいつは、女性を殴った政治家だ。弱者にしか強く出られないのかもね。
私は、前科のある人間の社会復帰は、是非とも進めるべきだと思っている。そこには、本当に「更生」したかどうかの判断が求められるが、前科者だから職に就けない、就けても厳しい仕事ばかりの社会はおかしいと思っている。
では、Pの場合はどうか――?
条件付きでは、アリだ。ひとつは、Pが遺族への振り込みを続けること。また、『俺は人を殺したことがある』などと自慢気に言い、他の秘書を威圧するような愚劣な行為に出ないこと。もうひとつは、前科者でも私は雇い入れる――、と政治家が公言することだ。
だが、Pには、罪を犯した自分を省みる謙虚な心持ちもなければ、被害者遺族に詫びる態度も見られなかった。振り込みは滞ったままで、Pという男には何ひとつ「更生の証し」が見られなかったのである。更生したふりをしていただけなのだろう。
また、Pを雇い入れた中根一幸衆議院議員からも、何故、Pを雇い入れたのかの説明もなかった。中根一幸議員は「Pはもう辞めたんだから知りませ~ん」と逃げただけだ。少なくとも、Pには前科がある。だが、前科者にも社会復帰と雇用の機会を与えるべきと思うから私はPを雇い入れた――、とでも言っていれば、今回の問題は印象が変わったはずだ。
犯罪者は、罪を犯したことへの深い後悔と強い反省があって、初めて社会復帰が許されるのだ。そのとき、忘れてはならないのが、彼らを受け入れる社会の準備だ。
ということで、問題です。
お隣に、懲役経験のある人が引っ越してきました。犯した罪は殺人だそうです。あなたはそれを知ってしまった。でも、何も知らないふりをしてお隣さんと接するか、近所づきあいを避けるか、ご近所に噂を振りまくか、罪を償ったのだから理解を示すか、また何か事件を起こすかもと怯えながら暮らすか。
お隣には人殺しが住んでいます。あなたはどうしますか――?
参考記事:朝日新聞8月5日付
週刊文春7月30日号他