2018年9月3日 読売新聞
オンラインゲームやSNS(ソーシャル・ネットワーキング・サービス)をやり過ぎるなど、インターネット依存が疑われる中高生は全国に約93万人いるとする推計を、厚生労働省の研究班(代表=尾崎米厚・鳥取大教授)が31日、発表した。スマートフォンが急速に普及したことなどを受け、前回調査した5年前に比べ約40万人増加した。
研究班は2017年12月~18年2月、無作為に抽出した中学と高校の計184校に調査票を配り、103校の約6万4000人の生徒から有効回答を得た。
画像の拡大 一般に、人間関係や健康に問題が生じても自力でやめられない状態に陥ると、「依存」と判断される。調査では、ネット使用に関して「夢中と感じる」「制限してイライラしたことがある」「ネットのために人間関係や学校の活動を台無しにしたことがある」など、8項目のうち、5項目以上が当てはまる人を「依存が疑われる」とした。
該当したのは、中学1年で10・0%(前回調査4・0%)、高校1年で16・1%(同9・8%)と、この5年間で急増していた。
背景には、スマホの急速な普及があるとみられる。総務省の調査では、世帯あたりのスマホ所有率は12年の49・5%から17年には75・1%に増えている。
今回の調査でも、1か月以内にネットを利用した中高生のうち、中学生の7割強、高校生の9割強がスマホを使用。主な使途は、動画サイトの視聴、オンラインゲーム、SNSなどだった。
また、ネットの使いすぎによる問題として、「成績低下」は中1の53%、高1の57%、「居眠り」は中1の20%、高1の47%が経験していた。
研究班の樋口進・国立病院機構久里浜医療センター院長は「5年間で非常に増えており、正直びっくりしている。ネット依存はもはや世界的な問題で、日本でも状況が深刻化しているのは明らか」と話している。
オンラインゲーム深刻
インターネット依存が疑われる中高生が急増するなか、オンラインゲームへの依存が深刻さを増している。
国立病院機構久里浜医療センターのネット依存外来には昨年、家族の相談のみのケースも含め256人が初診で訪れ、その9割はオンラインゲーム依存だった。世界保健機関(WHO)は6月、「ゲーム障害」(ゲーム依存症)を病気に位置付けると発表した。
ゲーム依存が深刻化すると、食事もとらずに熱中して健康を害したり、スマホを取り上げようとした親に暴力をふるったりするなどの問題行動につながることがある。不登校や引きこもりなどと重なることが多く、外部の目が入りにくい。相談できる機関は少なく、治療法も限られている。
ネットやゲームの使用が日常化した現在、依存を防ぐためには、教育を含む社会の幅広い対策が急務だ。(医療部 森井雄一)