“少数与党”で政治はどこへ〜「年収の壁」協議の行方は〜
衆議院で与党が過半数を割り込み、“少数与党”として新たなスタートを切った石破政権。野党との連携が重要となる中、政策協議を呼びかけているのが国民民主党です。最初の試金石となる「103万円の壁」の見直しに向け、議論が始まっています。他の政党間でも協議が活発化し、新しい政治状況が生まれつつある永田町。“少数与党”による政治は今後どう動いていくのか?そして、政策協議の行方は?専門家と共に、今後の日本政治を展望しました。
出演者
- 牧原 出さん (東京大学 教授)
- 熊野 英生さん (第一生命経済研究所 首席エコノミスト)
- 桑子 真帆 (キャスター)
※放送から1週間はNHKプラスで「見逃し配信」がご覧になれます。
“少数与党”の衝撃 一変した政治風景
11月11日、召集された特別国会。
経済産業大臣などを歴任した齋藤健衆議院議員は、これから始まる国会について。
「これからは丁寧に、野党との関係を築いていかなくちゃいけないと思いますけど、一方で、国のために何がベストかということも忘れてはならないと思っています」
一方、議席を大きく伸ばした立憲民主党。
「これが代議士会をやる部屋。いすが増えて、149になったのかな。前は98だったから」
笠浩史国会対策委員長は、野党が多数を握る中での国会運営について。
「与野党が逆転。この伯仲する状況を国民の皆さんに選択をしていただきました。それに対する、私たちの結果をひとつひとつ出していく国会にしたいし、そのためのリーダーシップを発揮していきたい」
少数与党の現実が突きつけられたのは、国会召集の4日前。
自民党と立憲民主党との間で、“異例”の合意がなされました。
これまで自民党が守ってきた国会の重要ポスト、“予算委員長”を野党に明け渡すことになったのです。
「野党の皆さま方のご意見というものを誠実に謙虚に承りながら、国民の皆さま方に見えるかたちで、あらゆることの決定をしていきたい」
この決定の直後、立憲民主党の控え室では。
笠さんは国会対策委員会の幹部を集め、早速、委員長ポストの割りふりなどを検討していました。
「予算(委員会)は委員長もこれからきちんと決めないといけないし、ある意味では、いちばん主戦場になる委員会だから、委員会運営と同時に、やっぱりここでの鋭い追及と、建設的な提案、その両方をやるようなシフトで組んでいかないといけない」
予算委員長のポストを得ると、国民生活に密接な予算案の採決など、委員会運営の主導権を握ることができます。
笠さんは、これまで与党に数で押し切られることもあったとして、野党の主張を実現する国会にしていきたいと考えています。
「議席も真ん中にきているんだね。ど真ん中に。議場の景色が変わるよな」
「単に我々が反対反対とか、そういうような姿勢ではなくて、むしろ、よりよい政策を実現していくための数だと思っています。我々野党が建設的な、国民の皆さんが、そのとおりだとおっしゃってくれるような提案や対案、あるいは修正案、そういうものを出せば、それを飲まざるを得ないんですよね。そのことを私たちは、最大限、いかしていかないといけない」
一方、自民党では。
衆議院選挙のあと、初めて開かれた両院議員懇談会。
執行部の責任を問う声に加え、野党との向き合い方についても指摘があったといいます。
「今までは、どっちにしろ最後は過半数を持っていれば政策を通すことができますから、これからは、むしろ政策の内容そのものを、自民党もどうやって納得感のある着地点を探るのか」
「私は野党に転落したときのことは、よく分かっておりますし、ポピュリズムに流されず、謙虚に堂々と政策を進めていった。その自民党に立ち戻るべきだ」
大臣として国政を預かってきた齋藤さん。
与党の務めを、どう果たしていくか悩んでいました。
「少数与党では、いかんともしがたいですよね。責任ある政党としては、そこで悩むわけですよ。」
こうした中、自民党と政策協議を始めているのが、国民民主党です。
党のナンバーツー、榛葉賀津也幹事長。
「与党対野党じゃなくて、同じ方向を向いて、何とかこの国をもう1回元気にしたい」
「これミケランジェロっていうの、三毛だから」
衆議院選挙で議席を伸ばしてからは、地元で飼っている動物の世話をする時間も、なかなか取れなくなったといいます。
「帰れない日が多くなったんで」
「我々の言っていることに、与党も、それから役所も、真剣に耳を傾けてくださるようになったのは大変ありがたいし、逆に言うと、傾けざるを得ない、今、政治状況なので」
党を取り巻く状況が大きく変わる中、初当選した議員を対象にした研修会で呼びかけたのは、気を引き締めて国会に臨むことでした。
「我が党がキャスティングボートを握ったかの報道がありますが、すべての野党がキャスティングボートを握っています。国民民主党だけが政治を動かせる立ち位置にいる訳ではないということを肝に銘じてほしいと思います。立憲さんは(約)150人、うちはたった28人です。謙虚さを忘れずに、しっかりとたたかってほしいと思います」
衆議院選挙の影響は他の党にも。
議席を減らした日本維新の会と公明党は、党の体制の見直しを迫られる事態となっています。
政治はどう変わる
<スタジオトーク>
桑子 真帆キャスター:
ここからは、日本政治がご専門の牧原出さん、そして、政治部の小口記者とお伝えしていきます。よろしくお願いします。
まず、牧原さんに伺いますけれども、この少数与党となった現在の政治状況をどういうふうに見ていらっしゃいますか。
牧原 出さん(東京大学 教授)
日本政治が専門
牧原さん:
やはり、われわれが見慣れた、2012年に自民党に政権が戻って以降の、あの一強時代が終わったという大きな転換にいると思うんですよね。
ただし、参議院は、やはり自公多数ですから、少数与党といっても衆議院であると。
そこでどうするかということになるわけですけれども、一強多弱と言われた時代の野党から、例えば立憲民主党が約150議席を取って大きくなって。
そうなると、それぞれの立ち位置が変わってくるわけですよね。この立ち位置が変わっているけれども、しかし、もともとの立ち位置は、やはり綱領とか選挙公約であると。
じゃあ、どう今度、与野党協議でにじり寄っていくかが試されていく。双方ともこらえる政治、これをやりながら、合意をどう作っていくかが試されていると思います。
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